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五島 朋幸(ごとう・ともゆき)

食支援と街づくり

私たちが健康なときは、意外と意識されない「食」だが、いざ食べることに支障や問題が生じると、きちんとした意味での支援を行うことはなかなか難しくなる。

多くの専門職が連携し合ってその人を支援するのがのぞましいのだが、実際にそういった社会資源が充実しているところは少ないのが現状だ。筆者が主宰する新宿食支援研究会では、住民ができる「見つける」「つなぐ」の部分にスポットを当て、「食べられる街づくり」に取り組んでいる。

本文最後に紹介されている食支援サポーターリング

食支援とは何?

「食」は大切。そんなことは誰もが思っています。単なる栄養補給だけではありません。グルメ番組の多さを見れば食は楽しみであることがわかるし、コミュニケーションツールであるとも言えます。人間が生きていくうえで必要不可欠な「食」ですが、意外と健康なときは意識されていません。極端な偏食をしたり、体に無理を強いるダイエットをしたり…。しかし、いざ「食」に問題が起こったときに、支援することは本当に大変なのです。

 

食支援とは何でしょう。

「食」は生活ですからありとあらゆることに関わってきます。その中で、私たちのグループ(新宿食支援研究会)は食支援を次のように定義しました。

「本人・家族の口から食べたいと言う希望がある、もしくは身体的に栄養ケアの必要がある人に対して①適切な栄養摂取 ②経口摂取の維持 ③食を楽しむことを目的としてリスクマネジメントの視点を持ち、適切な支援を行っていくこと」

 

具体的な食支援を考えると、全身の管理、栄養管理、口腔環境整備(義歯製作、調整)、口腔ケア、摂食、嚥下リハビリ、食事形態の調整 、食事づくり、食事姿勢の調整 、食事介助、食事環境調整などが挙げられます。このような支援のために関わる専門職種は、医師、看護師、薬剤師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)、ケアマネジャー、ホームヘルパー、福祉用具専門相談員など。食支援のためには、いかに多くの専門職が関わるかがわかります。

 

では、食支援の対象者はいったいどのぐらいいるのでしょうか。

厚労省は「65歳以上の2~3割」が低栄養であるといっています。また、高齢者の摂食嚥下障害の発症率は在宅で16%というデータもあります。これがどういう人数なのか。

私が活動する東京都新宿区の人口は約34万人、高齢者数は6万7千人。この人数から考えると、食支援の対象者は1~2万人以上いることになります。どんなに医療、介護が充実していたとしても、このサイズの人数を専門職だけでケアをすることは不可能なのです。これはどの街でも言えることです。

食支援は専門職だけではできないのです。

 

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五島朋幸
五島 朋幸(ごとう・ともゆき)
1965年広島生まれ。1991年日本歯科大学歯学部卒。1997年より訪問歯科診療に取り組み始める。2003年からふれあい歯科ごとう代表。現在に至る。

博士(歯学)。日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授、日本歯科大学東京短期大学歯科衛生士科講師、東京医科歯科大学非常勤講師ほか。新宿食支援研究会代表。

1997年よりラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」(全国15局で放送)パーソナリティーを務める。著書に、「口腔ケア○と×」(中央法規)、「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」「訪問歯科ドクターごとう① 歯医者が家にやって来る!」(大隅書店)、「食べること生きること ~介護予防と口腔ケア~」(北隆館)(監修・著)、「誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアと腸管免疫の重要性」(オーラルケア)など。
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