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宮島 俊彦(みやじま・としひこ)

地域医療構想の実現方策(宮島俊彦)#5

平成28年度末に全都道府県で出そろった地域医療構想だが、次の段階である2次医療圏ごとの病床の再編成が足踏み状態になっている。それはなぜか? 打開策は何か? 筆者は分析・提案する。

2次医療圏ごとに病床の再編成がなかなか進まない現状

地域医療構想は28年度末には全都道府県で出そろった。次の段階は、地域医療構想に基づく関係者の協議によって、2次医療圏ごとに病床の再編成を進めていくことになる。
首都圏などを除いて多くの地域では、基本的に病床は過剰であり削減が求められる。また、急性期病床から回復期病床への転換、介護療養病床等の介護医療院や施設あるいは在宅ケアへの転換が必要になる。では、どの医療機関が病床を削減し、転換するのか。

早くも、民間病院の団体からは、「公立病院や公的病院などの急性期病床は削減せざるを得ない。それなのに、削減分を病院内で回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟へ転換して、病床数を維持しようとしている。これでは、病院内で医療が完結し、地域医療構想の本来の目的である地域における病床機能の分化・連携の大きな障害になりかねない」と強い懸念が表明されている。
確かに、公立病院、公的病院は高度急性期と急性期、そのほかの地域包括ケアや回復リハは中小民間病院が担うという基本が崩れてしまうと地域医療構想は前に進まなくなってしまう惧れがある。

地域医療連携推進法人制度は創設されたが
動きはまだまだ鈍い

平成28年10月時点で日本の病院の総数は8,441で、開設者別にみると、国327、公的医療機関1,213、社会保険関係団体53、医療法人5,753、個人240、その他855である。ただし、ひと口に国といっても、その開設者は独立行政法人国立病院機構や独立行政法人地域医療推進機構などに分かれている。また、公的医療機関の開設者は、公立病院(都道府県、市町村など)と公的病院(日赤、済生会、厚生連など)に分かれている。

従って、ひとつの2次医療圏に、開設者の違う病院が混在していることが多い。
そこで地域医療構想を促進するために、地域医療連携推進法人制度が創設された。この連携法人制度は、主として2次医療圏ごとに複数の開設主体の違う病院を統括し、診療科や病床の再編成、人事の一元化、医薬品等の共同購入を行えるようにし、地域医療構想の実現を図ろうというものである。

現在40余りが全国で検討されているといわれているが、実際に実現したのは、数ヵ所であり、いまのところ動きは鈍い。連携法人設立の目的や連携範囲も融通無碍であり、ある程度の連携であればわざわざ連携法人を設立しなくても、事実上の連携は可能だという意見がある。その一方では、連携法人の議決権の在り方や参加法人の加入脱退についての意見が食い違ってしまい進まないなど、まだまだ試行錯誤の段階に見える。
むしろ現在の動きは、目先のきいた医療法人はいち早く地域包括ケア病棟に転換したり、全国法人の場合には、中央の指令による体制強化により、再編に備えるといった具合だ。

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宮島 俊彦(みやじま・としひこ)
岡山大学客員教授(元内閣官房社会保障改革担当室長)

昭和52年3月 東京大学教養学部教養学科卒業
昭和52年4月 厚生省入省
平成元年4月 山形県生活福祉部社会課長
平成17年9月 厚生労働省大臣官房審議官(保険・医政担当)
平成18年9月 厚生労働省大臣官房総括審議官
平成20年7月 厚生労働省老健局長
平成24年9月 厚生労働省退職
平成26年3月 内閣官房社会保障改革担当室長
平成28年7月 同退任

現在、岡山大学客員教授
介護経営学会理事
三井住友海上火災顧問

著書に『地域包括ケアの展望』社会保険研究所(2013年刊行)がある。
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