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初診の新たな評価やオンライン診療料新設/働き方改革にも対応 平成30年度診療報酬改定のポイント(下)

平成30年度診療報酬改定について、前号で概観した入院基本料に続いて、今回は主要な個別事項をみていく。30年度改定では、地域包括ケアシステムの構築に向け、外来医療や在宅医療、医療・介護連携などで様々な対応を行ったほか、働き方改革の推進も背景に、医療従事者の負担軽減策や人員配置基準の要件緩和などを行った。ICTの活用では、オンライン診療料を新設している。

調剤報酬では大型門前薬局の報酬が適正化された。

機能強化加算(80点)で初診を評価

 (外来医療)

外来医療については、役割分担を明確にする方向で改革を進めている。日本の医療保険制度の特徴に、保険証があればどの医療機関でもかかることができる「フリーアクセス」があるが、医療資源が有限である以上、医療資源を有効に使う必要があり、社会保障・税一体改革の議論などでは「緩やかなゲートキーパー機能」の導入は不可避とされた。つまり、大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来は「かかりつけ医」に相談する体制を基本とすることである(図表1)。

▲図表1 外来医療の今後の方向性(イメージ)

その方向で前回改定では、紹介状なしの大病院受診時に定額負担を導入した。対象となったのは、「特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院」である。今回は経済財政諮問会議や財務省での議論も踏まえ、それを拡大する方向で議論が行われた。その中で、支払側の委員は「200床以上」に拡大することを主張した。これに対し診療側は医療現場の混乱を懸念し、難色を示した。

結果として、「特定機能病院と許可病床400床以上の地域医療支援病院」になった。許可病床になったことで、病床範囲が広がるが、当初の議論を踏まえると激変は避けた格好だ。病院数としては400強に広がる見込みとなっている。ただ今回注目されるのは、「病床数500床以上を要件とする診療報酬の基準が、400床に変更される」ことである。大病院の基準が500床以上から400床以上に変わったともいえる。

具体的には、初診料や外来診療料、在宅患者緊急入院診療加算・在宅患者共同診療料、地域包括ケア病棟入院料などに影響がある(図表2)。

▲図表2 病床規模に関する要件(大病院)の見直し

一方、かかりつけ医機能の評価では、初診の加算として、機能強化加算(80点)が創設された。これは、地域包括診療料や小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料等を届け出ていれば、加算できる(届出が不必要な地域包括診療加算等も含まれる)(図表3)。

▲図表3 かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価等

かかりつけ医機能を、①日常的な医学管理と重症化予防、②専門医療機関等との連携、③在宅療養支援、介護との連携─に整理すると、算定要件となる診療報酬項目は①、③に関連する。地域包括診療料などは、今後の超高齢社会に求められているかかりつけ医機能を体現するものだが、算定は伸び悩んでいる。このため、機能強化加算により届出医療機関を増やす狙いがある。一方、機能強化加算の、②に関する機能は不明確だが、厚労省は、「専門医療機関への受診の要否の判断等を含めた評価」と説明している。

かかりつけ医機能を備える医療機関を増やす観点から、地域包括診療料等も見直した。現状の地域包括診療料(1503点)の常勤医師配置の要件を緩和するとともに、1560点の別の点数を新設し、そちらは外来中心の医療機関であることの要件を設けている(図表4)。

▲図表4 地域包括診療料等の見直し

認知症地域包括診療料も同様に見直す。地域包括診療加算(20点)は「加算1」(25点)と加算2(18点)に分ける。考え方としては同じで、常勤医師配置の要件を緩和するとともに、点数の高い「加算1」は外来中心の医療機関であることを求めている(図表5)。

▲図表5 地域包括診療加算等の見直し

(入退院支援)

▲参考資料 入退院支援の評価(イメージ)

退院支援加算は、入院早期から退院後までの切れ目のない支援を評価するという意味を明確化するため、「入退院支援加算」に名称を変更した。算定患者の「退院困難な要因」に、虐待や生活困窮など入院早期から福祉関係者との連携が必要な状態や小児を加えた。「加算2」でも入退院支援加算の加算である地域連携診療計画加算を算定できるようにした。「加算1」でないと算定できないため、地域連携パスの推進に逆効果になっているとの意見を踏まえた(図表6)。

▲図表6 入退院支援の推進

さらに、入退院支援加算を届け出ている医療機関に対して、外来で、入院予定の患者に入院中の治療過程がイメージできるよう支援する取り組みを行った場合の評価を新設した(入院時支援加算・退院時1回200点)(図表7)。

▲図表7 入院前からの支援を行った場合の評価の新設

退院後の在宅療養などを担う医療機関による共同指導や情報提供を評価する退院時共同指導料は、薬剤師やOT・PT・STなど医師や看護職員以外の医療従事者が行った場合も評価の対象とする(図表8)。

▲図表8 入退院時の関係機関の連携強化に資する見直し

(在宅医療)

診療側が以前から要請してきた複数の医療機関による在宅患者訪問診療料の算定が今回、認められた。耳鼻咽喉科や眼科などを念頭に、複数の疾病を抱える患者に対応するもので、在宅時医学総合管理料等の算定要件を満たす医療機関の依頼を受ける形で算定できる(図表9)。

▲図表9 多様な在宅医療のニーズへの対応

在宅医療を担う医療機関として、在宅療養支援診療所・病院を想定し、診療報酬で評価を位置づけてきたが、主に24時間の体制確保の困難を理由に、地域によっては十分に増えていない。一方、中医協の調査では、在宅療養支援診療所でなくても、訪問診療や看取りにおいて地域で重要な役割を担っている医療機関があることがわかっている。

このような状況を踏まえ、単独では24時間体制を作れなくても、複数医療機関で確保すれば算定できる、在宅時医学総合管理料・施設入居時医学総合管理料の加算として、「継続診療加算」(216点・1月1回)を新設する。算定患者ごとに連携する医療機関との協力で、24時間の往診体制と連絡体制を構築することを求める(図表10)。

▲図表10 在宅療養支援診療所以外の診療所の訪問診療に対する評価

在宅医療において訪問看護ステーションが担う役割も大きい。

今回改定では、訪問看護ステーションに人材育成の機能を求め、それを担う訪問看護ステーションの評価として、機能強化型訪問看護管理療養費3(8400円)を新設した。具体的には、地域の医療機関の勤務実績がある看護職員がいることや、研修の実績、地域の訪問看護ステーションや住民に対する情報提供や相談の実施を施設基準に設けている(図表11)。

▲図表11 質の高い訪問看護の確保

維持期リハは1年延長し介護保険に移行

(医療・介護連携)

30年度改定は診療報酬・介護報酬の同時改定である。それだけでなく、2025年に向け地域包括ケアシステムの構築を目指すとすると、次回の同時改定は2024年になるので、実質的には今回が2025年に備えるための最後の同時改定となる。同時改定という機会を活用するため、これまで以上に医療・介護双方に目を配った改定が求められた。

特別養護老人ホームなどの入所者(末期のがん患者等)への看取りの充実では、施設の体制に応じて、外部からの訪問診療・訪問看護を柔軟に活用できる報酬設定を行う。現状では、特養の入所者が介護保険の「看取り介護加算」を算定している場合には、診療報酬の在宅ターミナルケア加算や看取り加算は算定できない。それを今回改定では、算定できるようにする(図表12)。

▲図表12 特別養護老人ホームにおける医療サービスに係る見直し(改定後)

ただし介護報酬改定で新設した「看取り介護加算」より手厚い「看取り介護加算Ⅱ」を算定する場合は、ターミナルケア加算は算定できるが、看取り加算は算定できない。また、訪問看護では「看取り介護加算」を算定していない利用者に向け、訪問看護ターミナルケア療養費1(2万5千円)を新設した。

診療報酬と介護報酬の両方を算定できることについては、中医協の支払側から慎重な対応を求める意見が出ていたが、ターミナルケアが受けられないために、急性期の病院に搬送されて亡くなるような事態を減らすため、対応が図られた。

訪問診療の主治医とケアマネジャーの連携強化では、主治医から居宅介護支援事業者への情報提供を在宅時医学総合管理料や在宅がん医療総合管理料の要件に追加する(図表13・14)。

▲図表13 訪問診療の主治医とケアマネジャーの連携強化

▲図表14 訪問診療の主治医とケアマネジャーの連携強化(イメージ)

維持期・生活期のリハビリテーションについては、これまで継続的に、医療保険から介護保険に移行させる対応が図られてきた。廃止期限も度々延長されてきたが、今回は「1年間に限り延長」とした上で、新たな移行策を設けた(図表15・16)。

▲図表15 維持期・生活期のリハビリテーションへの対応①

▲図表16 維持期・生活期のリハビリテーションへの対応②

また、外傷性の肩関節腱板損傷など長期間のリハビリを必要とする患者と回復期リハビリテーション病棟退棟後3カ月以内の患者については、疾患別リハビリの算定日数の上限を緩和することにした。

新たな移行策では、リハビリを受ける場所は変わらずに、医療保険から介護保険に移行することを想定したものと、場所が変わることを想定したものがある(図表17)。

▲図表17 リハビリテーションにおける医療と介護の連携の推進①

場所が同じであるとの想定では、一定の条件の下で、疾患別リハビリの専従職員が介護保険のリハビリを兼任しても構わないことや同一スペースで両者のリハビリを行う場合の面積要件を緩和する。

場所が変わるとの想定では、様式を共通化して新しく設けた計画書を、医療機関が介護保険のリハビリテーション事業所に提供した場合の評価として、「リハビリテーション計画提供料1」(275点)を新設する。介護保険のリハビリテーション事業所の医師が判断した上で、その様式を根拠に通所リハビリテーション費の算定の開始を可能とする(図表18)。

▲図表18 リハビリテーションにおける医療と介護の連携の推進②

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