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障害福祉サービス事業所の経営に必要な2つの基準と【新刊】『障害福祉サービス 報酬の解釈』

平成30(2018)年4月、障害福祉サービス報酬が改定されました。

障害福祉サービス報酬は、障害者や障害児に対して障害福祉サービスや障害児支援を提供した事業所が、市町村から受ける報酬です。
具体的には介護給付費や訓練等給付費、障害児通所給付費といったものですが、障害者や障害児の生活をささえるサービス事業所の経営のために欠かせないものとなっています。

障害福祉サービス報酬は、障害者総合支援法もしくは児童福祉法にもとづく給付であり、法の委任によって厚生労働大臣が定めるさまざまな基準(省令や告示)にもとづいて制度が運用されています。

厚生労働大臣が定める基準の中でも、サービス事業所に大きくかかわる基準が「指定基準」と「費用算定基準」です。

この記事では、この2つの基準がどのようなものか、当社(社会保険研究所)発行の書籍『障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版』(平成30年6月30日発行)の内容とあわせて確認していきます。

指定基準

指定基準とは、公的資金を投入するサービスの質や公平性を担保するために、サービス事業所の人員や設備、運営について定めている基準です。厚生労働大臣が定める国の指定基準省令に従い(もしくは参考とし)、都道府県(指定都市・中核市を含む)が条例として定めます。

サービス事業所は所在地の指定基準を満たし、届け出ることで、サービスの種類および事業所ごとに、指定を受けることができます。
指定事業所にかかる報酬を受けられないといったことを防ぐため、またサービスの質の確保のために、事業の立ち上げ時からふだんの事業運営においてまで順守すべき最低限の基準といえるでしょう。

指定基準には下表の種類があり、それぞれに省令・通知が公布・発出されています。

指定基準(◎省令と○通知)
計画相談支援 ◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)
○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について(平成24年障発0330第22号)
地域相談支援 ◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定地域相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第27号)
○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定地域相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について(平成24年障発0330第21号)
障害福祉サービス ◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)
○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年障発第1206001号)
障害者支援施設等 ◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第172号)
○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成19年障発第0126001号)
障害児相談支援 ◎児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)
○児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について(平成24年障発0330第23号)
障害児通所支援 ◎児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)
○児童福祉法に基づく指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(平成24年障発0330第12号)
障害児入所施設等 ◎児童福祉法に基づく指定障害児入所施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第16号)
○児童福祉法に基づく指定障害児入所施設等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成24年障発0330第13号)

書籍『障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版』の「第Ⅲ編 指定基準」では、上記の指定基準を網羅しています。

上図本文中、灰色の網かけがなされている箇所は、指定基準の省令です。
サービスごとに、指定に必要な人員や設備、運営等の基準が記載されています。

また、上図本文中、網かけがなく、明朝体になっている箇所は、指定基準の通知です(「基準解釈通知」などと呼ばれます)。
基準解釈通知は、国(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)から都道府県等に発出される文書で、指定基準省令をどのように解釈すべきかといったことがサービスごとに記載されているものです。

書籍『障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版』では、告示と通知の対応をわかりやすくするために、これらを条文ごとに並びかえています。

なお、下線は平成30年4月施行の改正部分です。

費用算定基準

一方、費用算定基準は、障害福祉サービス等にかかる費用を厚生労働大臣が定めたものです。サービスの種類や時間・量、人員体制、実績等に応じて単位数が細かく定められています。

医療でいえば診療報酬点数表、介護保険でいえば介護報酬単位数表にあたり、介護保険と同じく3年に一回大幅に改定されます。単位数表や算定告示、報酬告示などとも呼ばれます。

費用算定基準には下表の種類があります。

費用算定基準(◎告示と○通知)
計画相談支援
地域相談支援
障害福祉サービス
◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第125号)
◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定地域相談支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第124号)
◎障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)
○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年障発第1031001号)
障害児相談支援
障害児通所支援
障害児入所支援
◎児童福祉法に基づく指定障害児相談支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第126号)
◎児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第122号)
◎児童福祉法に基づく指定入所支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第123号)
○児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成24年障発0330第16号)

書籍『障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版』の「第Ⅱ編 費用算定基準(単位数表)」では、上記の費用算定基準を網羅しています。

上図本文中、左側の罫線で囲まれているゴシック体の箇所は費用算定基準(告示)です。
たとえば、「障害福祉サービスの体験利用加算」の「障害福祉サービスの体験利用加算(Ⅰ)」が「500単位」であることがわかります(下線は平成30年4月施行の改正部分です)。

費用算定基準(告示)の中には、何らかの規定について、他の告示に委任することがあります。「別に厚生労働大臣が定める○○○」といったような文言がそれです。
これを「関係告示」などと呼びますが、上図本文中の左側、灰色の網かけ部分がこの告示です。

関係告示は費用算定基準と別に告示されるため、両者の関連付けを行い、かつ随時の改正をメンテナンスすることは、多くの人にとってたいへん手間のかかる作業です。本書では対応する項目の近くに関係告示を置くことで、関連付けをわかりやすくしています。

さらに、上図本文中の右側、明朝体の箇所は、費用算定基準の「留意事項通知」です。
留意事項通知は、国が都道府県等宛てに発出する文書です。費用算定基準の内容について、より具体的に記載しています。

これらに沿って算定した単位数に、地域の物価やサービスの人件費割合を考慮して決められている「一単位の単価」を掛けたものが算定額となります。一単位の単価は10円~11.6円の範囲で設定されています(平成30年4月以降)。

サービス事業所は、費用算定基準に沿った請求情報をひと月ごとに作成し、国保連合会に提出することで市町村に請求を行います。
なお、この請求に対して、国保連合会および市町村が一次審査および二次審査を行っています。そこで何らかの不備がある請求は「エラー」(返戻)となり、報酬が支払われません。

算定構造と実績記録票

実務では、費用算定基準は「算定構造」に加工されたものが用いられることがあります。
算定構造は、サービスごとの基準報酬や各種加算・減算を、見やすい図にしたものです(下図の見開き左側)。

また、上図の見開き右側は「サービス提供実績記録票」の記載例(厚生労働省が示したもの)です。

サービス提供実績記録票とは、提供したサービスの内容の詳細を明らかにすることができる資料として添付する請求情報の一部です。

記載例といっても、請求情報の国保連合会への提出は原則としてインターネットにより行われますので、この記録票を手書きで記載して提出することはまずありません。しかし、csv形式のようにまったく見た目が異なるデータ形式であっても、この様式を再現できるかたちで請求情報を作成することが必要です。よって、記載の注意点を押さえておくことはやはり重要です。

書籍『障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版』の「第Ⅰ編第4章 平成30年度報酬改定の概要」では、上図のように障害福祉サービス・障害児支援の算定構造およびサービス提供実績記録票を掲載しています。

本書第Ⅰ編には上記のほか、この記事で紹介しているような請求の流れなど、サービスのしくみをより詳しく解説しています。

基準を押さえることが指定事業所運営の基本

以上、本記事では2つの「基準」を紹介しましたが、サービス事業所のふだんの業務ではこれを意識せずとも、パソコンのシステムにサービス内容等を入力すれば必要な請求が行えるようになっています。

ただし、国保連合会・市町村の審査はあくまでこの基準等に沿って(作成されたシステム)によって行われています。
システムでは判断(入力)できない部分については、これらの基準に立ち返って請求する内容を判断する必要が出てくることもあることでしょう。
たとえば、サービス計画に位置付けられていない居宅介護サービスを緊急に短時間だけ行った場合、「30分未満」の所定単位数を算定してよいかといったように、請求に迷う場合があります。このケースは費用算定基準の留意事項通知に解釈が記載されています(算定可能です)。

正確な請求を行うためには、少なくとも自事業所が提供しているサービスについては、基準を把握しておき、必要に応じて参照することが必要だと考えられます。

障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版 障害福祉サービス 報酬の解釈 平成30年4月版
版:平成30年4月版
規格:B5・1152頁
発行:平成30年6月
ISBN:ISBN978-4-7894-1732-7 C3036 \4500E
商品No.:16421
定価:本体4,500円+税
 

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