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前田 亮一(まえだ・りょういち)

認知症の人にやさしい交通 ~外出支援のあり方を当事者とともに考える~

連載「認知症の課題を地域で考える」3回目は、徳田雄人氏に続くリレー連載の形で、前田亮一氏にバトンタッチ。
認知症の当事者は、自由に安心して外出できる生活環境に恵まれていない。しかし新オレンジプランでは、認知症フレンドリー・コミュニティづくりの重要性について言及され、G7保健相会合でも認知症患者の生活環境の改善を目ざした神戸宣言が採択されるなど、安全な外出に向けた取り組みは、着実に動き出している。認知症になっても安心して外出できるようにするために、何が必要か。
すでに生活環境の改善が進んでいる英国の状況、そして京都で始まった取り組みも併せて紹介しながら、考えたい。

認知症をもつ人が、公共交通機関を利用することを想定したSOSネットワーク訓練。
京都市左京区で行なわれている。

認知症当事者は、当たり前に外出する権利を持っていなかった

認知症フレンドリー・コミュニティづくりの重要性が、新オレンジプランで言及されました。認知症当事者になっても、安心して当たり前に外出できる社会をつくることは重要です。逆に考えると、これまで当事者は、当たり前に外出をする権利を持っていなかったことに他なりません。

 

2016年のG7保健相会合では、認知症患者の「生活環境の改善」を目ざした対策に乗り出すとした神戸宣言を採択しました。
安心できる外出に向けての配慮に関しては、数多く検討すべきことがあります。取り組みを検討する評価指標としては、本人が行きたいところに行ける生活環境になっているのかを振り返り、考えることが重要です。

認知症フレンドリー社会への2つのアプローチ

東京に住む軽度認知症高齢者への調査では、9割の方が近所の散歩や買い物など出かけられていました。
しかし、1人で公共交通機関を利用して外出をしている人は、2割にとどまっています。つまり、まずは習い事や友人との時間が持てなくなり、制限されてしまうようです。

 

2015年に認知症高齢者の外出に関する調査が行われました。その中で外出時の妨げになっているものとして、道に迷う、券売機などの機械操作が難しいといった認知機能に関する内容が挙げられています。
また歩行が不安定、トイレが心配、転倒が怖いといった身体機能の問題も書かれています。周囲に迷惑をかけてしまう、認知症であることを知られたくないといった心理的影響が妨げになっているのです。

 

実際に外出をした際に、困っている場面に具体的に遭遇している方がいる一方で、不安やスティグマ(謂れのない差別や偏見)により外出できない潜在的な利用者もおり、この方たちのサポートも併せて行うことが大切です。

 

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前田 亮一(まえだ・りょういち)
ビーンズ地域総合ケアセンター 作業療法士
法政大学大学院 政策創造研究科修士課程、CSR研究所 特任研究員
一般社団法人認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ

作業療法士として、地域連携型認知症疾患医療センターで初期生活支援を行う通所サービスを開設。
現在は茨城県つくば市にて地域リハビリテーションを担う。

DFJI交通プロジェクトを2015年にスタート。
交通エコロジーモビリティ財団「認知症者の交通機関利用に関する対応マニュアル作成ワーキング」メンバー。研究テーマは「社会参加」「外出・情報のアクセシビリティ」。
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