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五島 朋幸(ごとう・ともゆき)

「最期まで口から食べる」を支える

「最期までは口から食べられない国、日本」。これだけ医療が進歩し、いわゆる先進国であるにもかかわらず、日本では最期まで口から食べることが難しい。よく、テレビ番組などで「人生最後に何を食べたいですか?」などというアンケートが出たりしているが、自分の希望どおりのものを食べて亡くなる人は、ほとんどいないのが現状だ。ある日突然、「今日から、口から食べてはいけません」と断言される人も多くいる。
なぜ最期まで口から食べることができないのか?

患者さんの変化を観察することのできる歯科医院にて

口から食べられない3つのタイプ

口から食べられなくなる状態には3つのタイプがあります。

1つは、機能的に食べられなくなってしまうケース。噛む機能、飲み込む機能が低下してしまい、本人は食べたいと思っても食べられないというケース。

2つめは食べたくなくなってしまうケース。がんの末期などで体調が不良となり、食べる意欲も損なわれ、食べなくなってしまうケース。

そして3つめは食べる権利を奪われるケース。信じられないことに、その人の機能のこともわかっていない医療者が、食べることを禁止し、本人、家族の「食べたい」「食べさせたい」という思いを断っているケースがあるのです。残念ながら極めて多いケースです。

前2つのケースは避けられないかもしれませんが、3番目のケースの方たちが食べられるようになれば、もっと多くの方たちが人生の最期まで、食べられるのではないでしょうか。

高齢者の誤嚥性肺炎

ほんの数年前まで日本人の3大死因といえばがん、心疾患、脳血管疾患でした。
しかし、現在死因の第3位は肺炎です。皆さんの周りで肺炎が多くなったと感じる方はいますか? おそらくいないと思います。実は、肺炎で亡くなる方はほとんど高齢者なのです。

肺炎で亡くなる高齢者のほとんどは誤嚥性肺炎と言われています。つまり、現代日本で起きている現象は、誤嚥性肺炎で亡くなる高齢者が増えているということなのです。

誤嚥性肺炎を発症してしまうリスクは3つあります。
1つは口腔内が不潔となり、細菌数が増加してしまうこと。
もう1つは誤嚥(食べ物、飲み物、唾液など本来消化器官に入らなければならないものが気管に入ってしまうこと)すること。
3つめは体力が低下してしまうことです。

高齢になると筋力低下などが原因で運動量が減り、食欲低下を起こしてしまいます。また、しっかり噛んで食べないことで唾液が少なくなり、口腔乾燥気味になっていきます。唾液には細菌浄化作用があるので、唾液が少なくなると口腔内の細菌が多くなっていきます。このような状態で体力低下を起こし、慢性的な誤嚥を繰り返していると、誤嚥性肺炎を発症してしまいます。

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五島朋幸
五島 朋幸(ごとう・ともゆき)
1965年広島生まれ。1991年日本歯科大学歯学部卒。1997年より訪問歯科診療に取り組み始める。2003年からふれあい歯科ごとう代表。現在に至る。

博士(歯学)。日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授、日本歯科大学東京短期大学歯科衛生士科講師、東京医科歯科大学非常勤講師ほか。新宿食支援研究会代表。

1997年よりラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」(全国15局で放送)パーソナリティーを務める。著書に、「口腔ケア○と×」(中央法規)、「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」「訪問歯科ドクターごとう① 歯医者が家にやって来る!」(大隅書店)、「食べること生きること ~介護予防と口腔ケア~」(北隆館)(監修・著)、「誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアと腸管免疫の重要性」(オーラルケア)など。
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