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角野 孝一(かくの こういち)

自治体における認知症の人にやさしいまちづくり―2.

2015年に策定された新オレンジプランに基づき、川崎市がスタートさせた新たな4つの取り組みのうち2つについて前回紹介したが、今回は残り2つの取り組みについて紹介していく。

ブランディングムービー:川崎市内における撮影風景

認知症の人を主人公にしたブランディングムービーと
当事者目線にこだわった認知症ケアパス

前回の記事では、川崎市における認知症の人にやさしいまちづくりを推進するために「認知症の人にやさしい図書館」と、「学生による認知症の人の課題解決プロジェクト」2点について、ご紹介しました。
今回は引き続き、前回ご紹介できなかった2つの取り組み、「認知症の人を主人公にした市のブランディングムービー」と「当事者目線にこだわった認知症ケアパス」についてご紹介し、川崎市が今後目ざすべき方向性について考えます。

 

3) 認知症の人を主人公にした市のブランディングムービー

認知症の人を「病気の人」ではなく「生活者」と捉えると、認知症のある人とない人が「支えられる」「支える」という双方向の関係性だけではなく、同じ方向を向いて「共に歩む」という視点も必要です。

たとえば、NPO法人認知症フレンドシップクラブが2011年から毎年開催している「RUN伴」というイベントでは、認知症の人や家族、支援者、一般の人がリレーをしながら、ひとつのタスキをつなぎゴールを目ざします。2016年には初めて北海道から沖縄まで日本を縦断しましたが、この年、川崎市でも初めて本格的にRUN伴に参加しました。
川崎市では、このRUN伴をモチーフにして、2017年に市のブランディングムービー「COLORS」を制作しました。

 

この映像の主人公役は、実際に若年性認知症の当事者に演じていただきました。その他にも、障害のある方、外国人、子ども、高齢者など多様な人々が登場しますが、すべて役者ではなく実際に川崎市内に在住・在勤の一般市民の方々です。出演者からは、「撮影で笑顔がつくれなくて大変だった」、「日常生活ではなかなかふれあう機会のない方たちと会話をし、ひとつの物をつくり上げる時間を共有できたことは、貴重な経験だった」といった感想をいただきました。

主人公役の方の演技が素晴らしいこともあり、映像を初めて観た方からは、「主人公が認知症だとわからなかった」という声も多くいただいています。しかし、それで構わないのです。この映像で表現したかったのは、認知症や障害があっても、あるいは人種や世代が違っても、当たり前のように混ざり合い、支え合い、誰もが活躍して主人公になれる社会です。この映像で主人公を演じてくださった方は、次のように語っています。
「病気を持っていると周囲の皆さんに助けていただくことが多いですが、認知症があっても誰かの役に立てる社会になってほしいですし、自分もそうありたいと思います」

この映像は、そのような社会をつくっていくという川崎市の決意表明でもあり、一緒につくっていきましょうという市民への呼びかけでもあります。
現在この映像は、一日平均約20万人が乗降するJR川崎駅の大型ビジョンで放映されているほか、市内各地のイベントや認知症サポーター養成講座などで活用されています。

 

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角野 孝一(かくの こういち)
川崎市健康福祉局地域包括ケア推進室地域リハビリテーション担当係長

2006年、川崎市役所に入庁。障害者福祉分野で相談援助業務や障害福祉計画、障害者相談支援事業などを担当。
2013年から4年間、認知症施策を担当。認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)の協力も得ながら、「認知症の人にやさしい図書館プロジェクト」「『認知症の人の社会共生と課題解決』のための学生による国際交流・共同研究プロジェクト」、川崎市ブランディングムービー「COLORS」制作、川崎市版認知症ケアパス「認知症アクションガイドブック」制作などに携わる。
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