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宮島 俊彦(みやじま・としひこ)

認知症の人にやさしいまちづくり条例(宮島俊彦)#6

認知症施策は、2012年のオレンジプラン策定から2015年新オレンジプランに改訂され、厚生労働省の取り組みから、省庁を横断した国家戦略に位置付けられた。当初は医療・介護サービスの提供に重点が置かれていたが、新オレンジプランに改訂されると、認知症の人を医療や介護の受け手と捉えるのではなく、認知症の人と共に生きられるまちづくりに重点が移り、市町村にも「認知症の人にやさしいまちづくり条例」制定が求められている。

 

今年7月に数値目標が更新された新オレンジプラン

厚生労働省は、今年の7月に認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の数値目標を更新した。平成29年度末の目標を32年度末までの数値目標に更新するもので、例えば、認知症サポーター養成を800万人から1200万人に、認知症サポート医は5千人から1万人に、認知症介護実践リーダーは4万人から5万人に引き上げることにした。また、28年度から開始された歯科医師、薬剤師、看護職員向けの研修は、32年度末までに、それぞれ2.2万人、4万人、2.2万人にすることとされた。

国の目標としてはこれでいいのだろうが、これからは、このような認知症に関する地域資源を活用して、認知症の人でも地域で暮らせるやさしいまちづくりをどう進めていくかという、まさに市町村レベルでの地域づくりのあり方が問われてくる。

数年間に急ピッチで展開されてきた認知症施策の流れ

認知症施策は、ここ数年、急ピッチで展開されてきた。
まず、2012年には、厚生労働省において、医療・介護サービスの整備を中心とする「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が策定された。
2015年になってから、オレンジプランは早くも改訂され、「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)が策定された。新オレンジプランは、厚生労働省が、内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省と共同して策定しており、いわば「国家戦略」という位置づけになった。(下表参照)

表 関連省庁の認知症に関する施策分野
関係省庁 施策分野
厚生労働省 予防 医療 介護
文部科学省 研究 学校教育
農林水産省 食品安全 農村振興
国土交通省 住宅 街づくり 交通安全
法務省 成年後見 医療同意
総務省 消防 緊急搬送
経済産業省 介護商品開発
消費者庁 経済被害
金融庁 銀行手続き
警察庁 犯罪被害 免許更新 行方不明

新オレンジプランの7本の柱は以下のとおりである。

  1. 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
  2. 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
  3. 若年認知症施策の強化
  4. 認知症の人の介護者への支援
  5. 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
  6. 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
  7. 認知症の人やその家族の視点の重視

求められるのは認知症の人と共生できる地域づくり
「認知症の人にやさしいまちづくり条例」第1号はどの市町村に?

2012年のオレンジプランでは、医療・介護サービスの提供に重点が置かれていた。これに対し新オレンジプランでは、国民の認知症に対する理解を深めるための普及・啓発、やさしい地域づくりなどの社会的な広がりを持った施策に重点が移された。さらに、認知症の人やその家族の視点の重視ということで、認知症の人を医療や介護のサービスの対象である受け手としてとらえるのではなく、認知症の人の意思を尊重し、認知症の人とともに共生できる社会づくりが目ざされることになった。

これを市町村レベルで考えれば、厚生労働省関係の医療・介護サービスの整備だけでなく、関係省庁の関連施策分野も含めた総合対策が求められるということである。単に市町村が頑張ればいいというのではなく、民間団体や事業者が認知症の人に対応できるような地域づくりが求められている。例えば、銀行での手続き、買い物、バス・電車の利用などが認知症の人でもできるようにしていくということである。
そうなると、「認知症の人にやさしいまちづくり条例」が必要になってくるのだが、さて、第1号はどこの市町村になるのだろうか?

(次回に続きます。10月20日掲載予定)

宮島 俊彦(みやじま・としひこ)
岡山大学客員教授(元内閣官房社会保障改革担当室長)

昭和52年3月 東京大学教養学部教養学科卒業
昭和52年4月 厚生省入省
平成元年4月 山形県生活福祉部社会課長
平成17年9月 厚生労働省大臣官房審議官(保険・医政担当)
平成18年9月 厚生労働省大臣官房総括審議官
平成20年7月 厚生労働省老健局長
平成24年9月 厚生労働省退職
平成26年3月 内閣官房社会保障改革担当室長
平成28年7月 同退任

現在、岡山大学客員教授
介護経営学会理事
三井住友海上火災顧問

著書に『地域包括ケアの展望』社会保険研究所(2013年刊行)がある。
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