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奥村 圭子(おくむら・けいこ)

食と栄養支援を通じて実現する「地域包括ケア」と「地域共生社会」(奥村圭子)#1

社会保障制度は、多くの人たちを包み込み支援してきたが、どうしても制度の隙間からこぼれる人たちもいる。その人たちを支援するには、縦割り行政ではない横断的アプローチが必要だ。長年、食と栄養の支援を通じて、それを体感し、地域の人々の幸せを見つめ続けてきた著者が、現在、可能性を見出しているのが地域包括ケアと、その「深化形」でもある地域共生社会だ。

社会保障制度のつくる隙間は縦割り行政では埋まらない
横断的に顔の見える関係をつくりたい

これからの日本は「地域包括ケアシステム」の時代と言われています。
管理栄養士として、またケアマネジャーとして、日々活動していますと、「望む暮らしのなかで、最期までどう生きるか」を自分で考え、自分が選び実践する時代なのだな、と実感されます。ところが一方で、“自分らしく”とは簡単な話ではないな、と思うこともあります。

年齢を重ねていけば足腰が痛くなる、自由に動くこともできない、だから収入も限られてくる・・そんな不安を抱えて暮らす人を、社会保障制度は支えています。

社会保障には、人間の尊厳を守るための保健、医療、介護、福祉など、さまざまな制度がありますが、いざ使う側に立ってみると、その狭間に置かれた場合、どうも使い勝手の悪いこともあるようです。それを改善すべく、従来からの縦割り行政ではない、横断的に顔の見える関係をつくるのが、「地域包括ケアシステム」ではないでしょうか?

今後、介護保険法、障害者総合支援法、子ども・子育て支援新制度など、各制度の成熟化が進むと言われています。
少子高齢化による人口減少に伴い、家族や地域社会の世帯間の在り方などが変わってくるなかで、制度や地域の繋がり、そして自分の力だけでは、本人の「望む暮らし」ができないケースも増えてくると予測されます。多様な暮らしの課題を抱える世帯への対応が、困難になるであろうことも、浮き彫りにされるでしょう。

地域性を考慮しながら既成の壁や枠を取り払う
地域包括ケアシステムの“深化形”「地域共生社会」へのアプローチ

生活困窮者に対する包括的な支援を謳った「生活困窮者支援法」もその一例です。
昨今、こどもの貧困がクローズアップされていますが、生活困窮者に対する支援の内容も、新たな縦割り行政の隙間に陥っていないか、十分に検証が必要となってくるでしょう。 また、地方圏・中山間地域を中心に高齢者人口が減少しているので、行政やサービス提供側の人材確保の面から、従来どおりの縦割り行政でサービスすべてを用意するのは、困難になることが予想されます。

そのため、高齢者の医療や介護の連携を主眼とした「地域包括ケアシステム」をさらに進展させた、「地域共生社会」を目ざす動きも出始めています。

第1回「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部資料によると、「地域共生社会」を、今後の福祉改革を貫く基本コンセプトに位置づけ、まずは平成 29 年の介護保険法の法改正、30 年度・33 年度の介護・障害福祉の報酬改定、さらには 30 年度にも予定されている生活困窮者支援制度の見直しに向けて、部局横断的に幅広く検討を行おうしています。
今までは、トップダウン的な社会制度改革が行われており、このような地域性を考慮しながら既存の壁や枠を取り払い、顔の見える関係づくりをしようという動きはなかったように記憶します。

 

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著者近影
奥村 圭子(おくむら・けいこ)
杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」(栄養ケアステーション)室長
管理栄養士
ケアマネジャー

短大で栄養学を修め、食品会社の研究所に10年勤務。患者の血液分析などに携わった後「人と直接会って健康づくりのために役立ちたい」と、管理栄養士に。
病院、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、歯科クリニック、在宅医療、訪問介護の現場を経験し、「将来自分たちが高齢になったときに自分が暮らしたいと思う環境を自分たちでつくり、居場所をしたい」と思うようになり、医療や介護が届きにくい在宅での栄養支援に力を注ぐことを決意。ケアマネジャーの資格を取得する。
2012年より「在宅栄養支援の和・あいち」(現:在宅栄養支援の和)に参加。
2013年4月から名古屋学芸大学大学院(栄養学修士)。
2015年から三重大学大学院医学系研究科にて博士課程で研究。
2016年より杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」を拠点に在宅栄養支援や訪問栄養士の育成に取り組む。
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