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奥村 圭子(おくむら・けいこ)

食と栄養支援を通じて実現する「地域包括ケア」と「地域共生社会」(奥村圭子)#1

保健・医療・福祉・介護の仕事は縦割りが多い
制度の垣根を壊したいと思うことも

そして私は、こんな時代がくるのをずっと待っていました。
私は、保健・医療・福祉・介護・研究分野などさまざまな職場で、食と栄養にまつわる仕事を27年間経験し、それぞれにおいて、「生きること」「望む暮らし」のための食を支援し、人々の幸せに貢献できることを願って活動してきました。

その結果、意に反し、職歴がかなり増えました。ざっと数えても、所属した組織の数は15ヵ所以上あるかと思います。現在も、6ヵ所と同時契約をしていますが、その理由はやむを得ないもの。「組織完結型」の縦割りの仕事が多く、横断的にかかわろうとすると結果として、転職に繋がってしまったためです。

会社員のときは、研究所で食や栄養の代謝に関わる仕事をしていましたが、同じ会社であるにもかかわらず、部署が違えば交流がなく、自分が何をしているかわからなくなることもありました。

病院やクリニック、高齢者介護施設では、目の前に困っている人がいて、何をすればよいのかわかっているのに、制度のルールや狭間で支援ができない悔しい思いもしてきました。何とか抜け穴を探そうと必死に対抗するのですが、「ルール」はときに冷徹で、「いつか、制度と現場の垣根を壊したい、制度と現場の乖離をなくしたい」と、ずっと、そんなことを思い続けてきました。
そのため、ここでダメなら次に行くというふうに、何度も転職を重ねてしまったのです。

「望むくらし」はあくまでも本人が中心につくり上げるもの
そのために支援するのが専門職

当然ですが、私が求めているような、一つの組織ですべてが解決できる完璧なところはありませんでした。そして、多くの方にご迷惑をおかけしました。ただ、皮肉なことに、今の私の活動の基礎になる学びが3つできました。

1つ目は、本人の「望む暮らし」は、専門職ではなく本人が選び得るものであること。

2つ目は、目の前で困っている人の「望む暮らし」が何かを知るまでは、「限界」や「不足」と感じるのは、本人の価値観ではなく私の固定観念かもしれず、対話が重要であるということ。

そして、3つ目は、顔の見える交流は楽しくて、本人も交えて、その人の必要なものをみんなで作ることは、ワクワクする感覚をもたらしてくれることでした。

もしこれら3つを実現できる仕組みが「地域包括ケアシステム」とか「地域共生社会」であるとするならば、私はこんな時代が来るのをずっと待っていました。

「栄養パトロール」に臨む

これから、この連載では、私の経験してきたさまざまな職場での「我が事」を通じ、地域包括ケア・地域共生社会を、読者の皆さまと共に考えてみたいと思います。

(次回に続きます。11月下旬掲載予定)

 

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著者近影
奥村 圭子(おくむら・けいこ)
杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」(栄養ケアステーション)室長
管理栄養士
ケアマネジャー

短大で栄養学を修め、食品会社の研究所に10年勤務。患者の血液分析などに携わった後「人と直接会って健康づくりのために役立ちたい」と、管理栄養士に。
病院、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、歯科クリニック、在宅医療、訪問介護の現場を経験し、「将来自分たちが高齢になったときに自分が暮らしたいと思う環境を自分たちでつくり、居場所をしたい」と思うようになり、医療や介護が届きにくい在宅での栄養支援に力を注ぐことを決意。ケアマネジャーの資格を取得する。
2012年より「在宅栄養支援の和・あいち」(現:在宅栄養支援の和)に参加。
2013年4月から名古屋学芸大学大学院(栄養学修士)。
2015年から三重大学大学院医学系研究科にて博士課程で研究。
2016年より杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」を拠点に在宅栄養支援や訪問栄養士の育成に取り組む。
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