Web医療と介護

宮島 俊彦(みやじま・としひこ)

まずは自立支援型ケアから(宮島俊彦)#7

地域包括ケアシステムづくりの構成要素は多々あるが、もりだくさんすぎて、市町村では消化不良に陥っているケースもしばしば見受けられる。自治体によって地域性が異なり、取り組むべき優先課題はそれぞれだが、共通して取り組むべきは、「自立支援型ケア」の普及であると、著者は考える。

 

地域包括ケアシステム構築で市町村に求められるものとは?

地域包括ケアシステムづくりで、市町村に求められているのは、「介護予防事業」「自立支援型ケア」「医療と介護の連携」「生活支援・福祉」「認知症施策」など、多々ある。

確かにこれらすべてが地域包括ケアシステムの構成要素ではあるが、あまりにも盛りだくさんのため、多くの市町村では消化不良になっている。
重点分野としてどこから取り組むかが課題である。

以下、各事業を端的に要約すると・・

介護予防事業
要介護認定前の元気老人も含めた不特定多数に対する施策である。
要は、後期高齢期になっても要介護状態とならないために、運動、社会参加、栄養の保持などを適切に確保しようとするもので、高齢者の自主的な参加と保健師などの専門職のアドバイスが中心となる。
長期的には、要介護者の逓減につながるだろうが、短期的に目に見える効果が出てくるものではない。

自立支援型ケア
和光市が開発し、大分県でも導入された。主として、要支援、要介護1、2のいわゆる軽度者に対し、リハビリ、口腔ケア、栄養管理など自立支援型のケアを提供し、要介護度の改善を図ろうとするものである。
そのために、個別ケースについて専門職からなる地域ケア会議を開き、そこでケアプランが自立支援型になるようにアドバイスする。このような取り組みによって、和光市では要介護認定を受ける高齢者数が抑えられているし、大分県でも成果が出始めている。

医療と介護の連携事業
主として要介護3~5の重度要介護者の在宅生活を目ざすもの。郡市区医師会を中心に、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、リハビリ職など医療系の訪問サービスの整備が欠かせない。
これに、訪問介護や通所介護など介護系のサービスが組み合わされ、在宅での看取りに至るまで、ケアの提供が可能になる。したがって連携事業以前に、医療系訪問サービスの提供は欠かせない。連携事業の目ざすところは、在宅重度者の医療、看護、リハビリ、介護までを含めたトータルなサービスの提供であり、当然そのために個別のケアプランが必要となる。
単に「顔の見える関係者会議」を開いて、地域の事業者が集まり、お互いに顔見知りになればいいというものではない。また、特養ホームや老健施設が十二分に整備されていれば、必ずしも地域における需要は、多くはない。

生活支援・福祉
掃除、洗濯、調理から、ゴミ出し、買い物、見守り、移動、行政手続き、虐待防止、成年後見まで、サービス範囲は茫漠としている。ホームセキュリティや配食サービスのように企業が市場で提供するものもあるし、ワーカーズコレクティブのように非営利団体が買い物や移動支援を行う形態もある。
また、介護保険でも洗濯、料理、掃除などは給付の対象になっているが、軽度者については地域支援事業に移してはどうかとか、混合介護の議論にもあるように、利用者負担と保険の適用範囲についてもさまざまな意見がある。
虐待防止や成年後見になると公的な色彩が強く、市町村が本格的に取り組まなければなかなか進まない。
このように、まだ理論的な整理ができておらず、地域事情に応じて対応も大きく異なってくる。

認知症施策
新オレンジプランが更新されたが、単にその数値目標である、認知症サポーター数やサポート医の数が確保されればいいということではない。
認知症の人について、介護予防から自立支援型ケア、医療と介護の連携、生活支援・福祉まで、地域包括ケアをどう提供するかということであって、認知症に関する別個の独立したケアシステムがあるわけではない。

次ページ » 全市町村が保険者機能を発揮し自立支援・重度化予防を図るべき

  • 1
  • 2
宮島 俊彦(みやじま・としひこ)
岡山大学客員教授(元内閣官房社会保障改革担当室長)

昭和52年3月 東京大学教養学部教養学科卒業
昭和52年4月 厚生省入省
平成元年4月 山形県生活福祉部社会課長
平成17年9月 厚生労働省大臣官房審議官(保険・医政担当)
平成18年9月 厚生労働省大臣官房総括審議官
平成20年7月 厚生労働省老健局長
平成24年9月 厚生労働省退職
平成26年3月 内閣官房社会保障改革担当室長
平成28年7月 同退任

現在、岡山大学客員教授
介護経営学会理事
三井住友海上火災顧問

著書に『地域包括ケアの展望』社会保険研究所(2013年刊行)がある。
Web医療と介護