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宮島 俊彦(みやじま・としひこ)

地域ごとの医療・介護サービスの展開(宮島俊彦)#9

地方の時代と言われて久しいが、超高齢社会の医療・介護への対応は地方分権の試金石とも言われ、各自治体の取り組みに任せられている。そんな状況下で、地域医療構想と地域包括ケア実現への政策はどうあるべきか?
連載最終回では、東京・地方中核都市・過疎地の3つのケースに分けて、これを考えてみたい。

 

超高齢社会の医療・介護への対応は地方分権の試金石に

地域医療構想と地域包括ケアはこれからの医療・介護政策の基本であるが、いずれも自治体の取り組みに任せられている。地方の時代といわれて久しいが、超高齢社会の医療・介護への対応は、まさに地方分権の試金石と言えるだろう。

人口増加時代には、テクノポリス法やリゾート法などの開発法が盛んで、これについてはどの自治体でも、国の指針に従っていればよかった。また、ふるさと創生や地方創生も中央からお金が降ってきたので、それをどう使うかということで済んでいた。
しかし、医療・介護サービスについては、地方によって事情が違うから、国からの一律の指針は出てこない。自らの選択で取り組むしかない。

話を単純化するために、東京、地方中核都市、過疎地の三つに分けて考えてみよう。

東京では今後、在宅医療と在宅介護を中心とした
新しいケアモデルを組み立てていく必要がある

東京で高齢者が要介護状態になって退院するとなると、大変な実情に直面する。特別養護老人ホームの整備率は全国で一番低いから、おそらく利用できない。
在宅といっても、家族介護には限界があるから、結局、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を探すことになる。

しかし、一時に比べれば、有料老人ホームの料金は下がってきたとはいえ、23区内では、入居一時金は1,000万円強、月々の利用料25万円ぐらいというのが相場になっている。月々25万円というと、一般的には厚生年金の月額相当になる。老夫婦で暮らしていて、例えば、夫が要介護状態になり有料老人ホームに入るということになると、在宅に残る妻の生活費はなくなってしまう。

そこで、月額17万円くらいのところがないかと探すことになる。そうなると23区を離れて、神奈川県、埼玉県、千葉県などの周辺の県で、ということになる。では、月額17万円も払えないという家庭はどうなるか? 基礎年金しかない世帯は夫婦二人でも満額で月々13万円程度であり、このような家庭も多い。

選択肢としては在宅で介護サービスなどを利用しながら、やむを得ず家族が介護するということになる。しかし、在宅では介護できないとなると、無届の有料老人ホームのようなところで、サービスの質は低いがあずかってもらわざるを得なくなる。いわゆる介護ハウスである。
このようにみてくると、東京では在宅医療と在宅介護を中心とした新しいケアモデルを組み立てていくしか方法がない。

 
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宮島 俊彦(みやじま・としひこ)
岡山大学客員教授(元内閣官房社会保障改革担当室長)

昭和52年3月 東京大学教養学部教養学科卒業
昭和52年4月 厚生省入省
平成元年4月 山形県生活福祉部社会課長
平成17年9月 厚生労働省大臣官房審議官(保険・医政担当)
平成18年9月 厚生労働省大臣官房総括審議官
平成20年7月 厚生労働省老健局長
平成24年9月 厚生労働省退職
平成26年3月 内閣官房社会保障改革担当室長
平成28年7月 同退任

現在、岡山大学客員教授
介護経営学会理事
三井住友海上火災顧問

著書に『地域包括ケアの展望』社会保険研究所(2013年刊行)がある。
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