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奥村 圭子(おくむら・けいこ)

栄養パトロールで、健診や受診につながらない高齢者の低栄養改善を(奥村圭子)#4

82歳独居のチヨさんの望む暮らしにどう添うか? 介入を試みるも……

82歳のチヨさんの将来の夢や希望は、「足腰の痛みが取れること。そして、いつまでも誰の世話にもならず、朝起きたらぽっくり死んでいること」です。施設には死んでも行きたくない、自分で家のことはやるしかないという強い意志をもって生活しています。

急な坂の上にある広い一軒家で一人暮らし。周囲に家はほとんどありません。
雪でも降ったら滑ってしまって、外出はできません。
子どもはいないので、頼れる人はチヨさんのお姉さんなのですが、老人ホームに入っているので、なかなか会えません。
日ごろ訪ねる人もなく、買い物は、馴染みの店から配達してもらうか、庭先の畑で採れた野菜を料理し食べています。
チヨさんが、1週間殆どしゃべらないことも珍しくありません。それがチヨさんにとっての平穏な日常です。

病気がちで腎臓が悪く、足腰も痛み浮腫んでいるのですが、病院は親戚が連れて行ってくれるまで行けず、痛みも我慢して暮らしています。
体重や生活リズム、皮膚の状態や排せつ回数など、栄養状態は保たれているようでしたが、痛みのために寝ることが出来ずに不安をずっと募らせている毎日でした。私たちは訪問時に、「栄養パトロールの日でなくとも、何かあったら電話してね」と伝えましたが、チヨさんが電話をしてこないのはわかっていました。

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著者近影
奥村 圭子(おくむら・けいこ)
杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」(栄養ケアステーション)室長
管理栄養士
ケアマネジャー

短大で栄養学を修め、食品会社の研究所に10年勤務。患者の血液分析などに携わった後「人と直接会って健康づくりのために役立ちたい」と、管理栄養士に。
病院、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、歯科クリニック、在宅医療、訪問介護の現場を経験し、「将来自分たちが高齢になったときに自分が暮らしたいと思う環境を自分たちでつくり、居場所をしたい」と思うようになり、医療や介護が届きにくい在宅での栄養支援に力を注ぐことを決意。ケアマネジャーの資格を取得する。
2012年より「在宅栄養支援の和・あいち」(現:在宅栄養支援の和)に参加。
2013年4月から名古屋学芸大学大学院(栄養学修士)。
2015年から三重大学大学院医学系研究科にて博士課程で研究。
2016年より杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」を拠点に在宅栄養支援や訪問栄養士の育成に取り組む。
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