Web医療と介護

奥村 圭子(おくむら・けいこ)

医療的ケアの必要な子どもたちへの栄養支援(奥村圭子)#6

管理栄養士は地域の高齢者の支援に入るケースは多いが、医療的ケアの必要な子どもたちの家に行って、支援を行う機会はまだまだ少ない。
最終回では、医療的ケアが必要な子どもの親から依頼されて訪問栄養士として入った筆者の経験を中心に、支援の課題やその内容について触れていく。

※文中の写真はイメージです。

医療的ケアが必要な子どもには、ケアマネに相当する調整役がいないのが現状

平成30年度診療報酬改定では、小児在宅医療に関する入退院支援加算や、必要に応じて患者が通学する学校と情報共有したり連携した訪問看護ステーションへの加算、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料など歯科への加算などが新設されています。

高橋ら小児在宅医療を実践している在宅医からの報告1)によると、救命医療の発展によって助かった在宅重症心身障がい児(者)が増加するなかで、養育しているの家族を支える仕組みが、地域の中で整備できているとはまだまだ言い難く、多くの課題が山積していると言います。
その一つとして、障害者総合支援法に基づくサービスの多くは、医療的ケア(経管栄養や人工呼吸器、たんの吸引など)が必要である場合、断られることもあるという点が挙げられています。
また、社会資源があったとしても、複雑な行政手続きや制度の枠組みを調整する必要があり、この分野においては、介護保険のケアマネジャーに相当する調整役の整備も整っていないため、ほとんどが母親の役割になっているのも問題です。
教育についても、授業や修学旅行などの校外学習の際も、吸引の必要な場合は親の付き添いや待機を求められることが多くありますし、学校を卒業した後も、就業や就労支援施設につながらなかった重度の子どもが日中過ごす場所がないなど、親にとっては将来の不安材料であり、子どもにとっては社会性を育む機会の減少につながっているのです。

そのため、小児在宅医療に関わる主介護者である親が、ほっとひと息つける「レスパイトケア」の重要性が指摘されています。こういった厳しい現状が少しでも改善する診療報酬の改定を願っています。

従来、小児在宅医療の現場に、訪問栄養士の関わりはほとんどありませんでした。医療的ケアが必要な子どもたちは胃ろうを使っているケースが多く、章に医療関係者から、たんの吸引や人工呼吸器の対応ができない管理栄養士の必要性がわからないと、言われたりもしていたので、ニーズが感じられていなかったのだと思います。
実際のところ、私自身も今まで、医療的ケアが必要な子どもたちと触れ合う機会はほとんどなかったため、何ができるのかわからないままでした。

退院後の生活が見えにくい現状のなか
親は単独に手探りでサービスを探し手続きをしなければならない

そんな私に、小児在宅医療への管理栄養士の役割について気づかせてくれた、かなちゃん(仮名)。
今回はかなちゃんについて書いてみたいと思います。
かなちゃんは、目がクリっとしたとても可愛い10歳の女の子です。かなちゃんとは、支援学級で初めてお会いし、訪問看護師さんを通じて母親が訪問栄養を希望していると教えていただきました。
主治医に相談したところ、訪問栄養士を雇うのは初めてですが母親が希望しているとのこと。非常勤契約をしてくださいました。そのおかげで、ご自宅にお邪魔するようになりました。

かなちゃんは、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)Ⅰ型のため、寝返りや飲み込み、呼吸も難しく、1歳に満たないころは病院に入院していました。
当時、退院後にかなちゃんが在宅で暮らすイメージは、だれにも想像できず、たとえば、在宅医療、福祉、障がいのサービスは、どのように利用できるのか、助成を得るための手帳の取得方法など、まったくわからない状態だったといいます。

相談員や在宅療養生活を調整するケアマネジャーのような専門職も周囲にはおらず、母親は、ゼロから胃ろうや吸引器、人工呼吸器の取り扱い方、着替えやオムツ交換の仕方など在宅療養に必要な手技、そして緊急時の対応方法を看護師さんから学んだそうです。
地域のサービスを利用するために、行政担当者と使えるサービスの手配、病院の医師や看護師、在宅医と訪問看護師の連携方法など退院後の生活環境を手探りで一つずつ必死に整えてきました。そのような大変な時期を医師や看護師さん、行政の方々が一緒に悩み考え支援してくれたおかげで、今はこうして自宅で生活できているのだ、と感謝の言葉をしきりに口に出されていました。
そして、かなちゃんが支援学校に通えることが決まり、とてもうれしかったし、学校に行っている間に、美容院や買い物や夫とランチに行ける時間まで持てるなんて夢のようだったといいます。

次ページ » 訪問栄養士として、かなちゃん本人の栄養状態と栄養補給量が適正かどうかアセスメントしアドバイスした体験

著者近影
奥村 圭子(おくむら・けいこ)
杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」(栄養ケアステーション)室長
管理栄養士
ケアマネジャー

短大で栄養学を修め、食品会社の研究所に10年勤務。患者の血液分析などに携わった後「人と直接会って健康づくりのために役立ちたい」と、管理栄養士に。
病院、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、歯科クリニック、在宅医療、訪問介護の現場を経験し、「将来自分たちが高齢になったときに自分が暮らしたいと思う環境を自分たちでつくり、居場所をしたい」と思うようになり、医療や介護が届きにくい在宅での栄養支援に力を注ぐことを決意。ケアマネジャーの資格を取得する。
2012年より「在宅栄養支援の和・あいち」(現:在宅栄養支援の和)に参加。
2013年4月から名古屋学芸大学大学院(栄養学修士)。
2015年から三重大学大学院医学系研究科にて博士課程で研究。
2016年より杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」を拠点に在宅栄養支援や訪問栄養士の育成に取り組む。
Web医療と介護