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奥村 圭子(おくむら・けいこ)

医療的ケアの必要な子どもたちへの栄養支援(奥村圭子)#6

訪問栄養士として、かなちゃん本人の栄養状態と栄養補給量が適正かどうか
アセスメントしアドアバイスした経験

母親からの訪問栄養士への要望は、かなちゃんの栄養状態を知りたいこと、栄養補給量は今のままでよいのかを確認したいことの2点でした。
訪問する前に主治医から、アレルギーの状態、採血データ、栄養補給量をあらかじめ確認させてもらいました。
自宅では栄養剤の滴下スピードや排便や皮膚の状態からの消化吸収の状態、栄養剤以外の摂取栄養内容、生活様式や身体測定から基礎代謝量の算定など、ひと通りの栄養評価を行いました。その結果、エネルギー量やたんぱく質量はある程度確保されていることを確認しましたが、微量元素がやや心配でした。
そこで、成長に必要な微量元素が得やすくてアレルギー物質の入っていない好みそうな食材を母親と一緒に考えていきました。

食材の選択のポイントとして、本人だけではなく両親のアレルギーも確認し、そのうえで両親が昔から好きで食べているチョコレートや昆布茶など微量元素の豊富な食材を一緒に選択していきました。そしてそれらを調理をする際には、微量元素や栄養密度を考慮し、水や豆乳などに溶解する分量を母親と一緒に考えていきました。さらにご両親が食べるときに、かなちゃんも一緒に食卓を囲むという視点を、提案させていただきました。

この内容を主治医や訪問看護師さんに伝え、主治医には微量元素の検査をお願いし、訪問看護師さんにはふだんの活動量やバイタルなどを確認し、エネルギーやたんぱく質の消費量の予測をさせていただきました。そして、先生方と栄養課題を随時検討できる体制も整えながら、定期的に支援に入っていくこととなりました。

 

かなちゃんへの食支援を通じ
医療的ケアの必要な子どもたちへの栄養士のアプローチの可能性を知る

医療的ケアを取り巻く社会環境や小児在宅医療の現実は、かなちゃんの母親に聞いただけでも、けして甘いものではないことがわかります。私には、管理栄養士が小児在宅医療の現場で何ができるのか、本当のところは今でも理解できていません。ただ、かなちゃんへの食の支援を通じ、かなちゃんが親子で食卓を囲む環境づくりや食に関する経験を一つでも多く増やす機会づくりに関われるなら、うれしいなと思います。

平成29年から始まった連載も今回で終わりです。今までおつき合いいただきましてありがとうございました。これからも多くの人と対話を通じ、食を切り口に望む暮らしの支援をさせていただけると幸せです。それではまた、逢う日までさようなら。

 

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著者近影
奥村 圭子(おくむら・けいこ)
杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」(栄養ケアステーション)室長
管理栄養士
ケアマネジャー

短大で栄養学を修め、食品会社の研究所に10年勤務。患者の血液分析などに携わった後「人と直接会って健康づくりのために役立ちたい」と、管理栄養士に。
病院、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、歯科クリニック、在宅医療、訪問介護の現場を経験し、「将来自分たちが高齢になったときに自分が暮らしたいと思う環境を自分たちでつくり、居場所をしたい」と思うようになり、医療や介護が届きにくい在宅での栄養支援に力を注ぐことを決意。ケアマネジャーの資格を取得する。
2012年より「在宅栄養支援の和・あいち」(現:在宅栄養支援の和)に参加。
2013年4月から名古屋学芸大学大学院(栄養学修士)。
2015年から三重大学大学院医学系研究科にて博士課程で研究。
2016年より杉浦医院地域ケアステーション「はらぺこスパイス」を拠点に在宅栄養支援や訪問栄養士の育成に取り組む。
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