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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第1回 地域医療構想と診療報酬改定による医療機能の分化・連携

団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて医療提供体制の改革が進められています。急速に進む少子高齢化と人口減少に対応できる体制の構築が課題です。4月から始まる連載では、昨年7月まで厚生労働省で医政局長を務めた神田裕二さんに「医療政策の本質と本音」のテーマで執筆していただきます。
第1回は、地域医療構想と診療報酬改定について。地域医療構想に「寄り添う」改定といわれる今回の診療報酬改定と地域医療構想の関連について論じています。

地域医療構想は「実現」という新たなステージへ

平成30年の診療報酬・介護報酬の同時改定の内容が確定した。「医療機能の分化・連携」は、ここ10年来一貫して改定の視点や重点課題に掲げられており、診療報酬改定の1丁目1番地といってよいであろう。

医療機能の分化・連携の青写真である地域医療構想は、平成28年度中に、全都道府県で策定が終わり、昨年、骨太の方針で「個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進する」とされ、実現という新たなステージに入っている。

その進め方としては、まず、公立病院や公的医療機関等に、地域で担う役割や病床機能ごとの数値目標等を「新公立病院改革プラン」や「公的医療機関等2025プラン」の形で明らかにしてもらい、地域医療構想調整会議(以下「調整会議」と省略)の議論に付し、平成29年度中に、具体的な対応方針を協議することとされている。
公的医療機関等は、調整会議で協議が調わないとき等には都道府県知事の命令・指示を受けることとされており、また、多くは政策医療等を担っているからである。

厚労省では、3ケ月ごとに、調整会議の開催状況や、公立病院・公的医療機関等に関する協議の状況をフォローしているが、平成29年末段階では、公的医療機関等についても約8割はプランの策定は終わり、策定済のプランの約4割が調整会議の議論に付されている。その他の医療機関についても、遅くとも平成30年度末までに協議をすることとなる。
参照→【地域医療構想調整会議における議論の状況(平30.3.2  地域医療構想WG)】

地域医療構想実現に「寄り添った」今回の報酬改定

今回の改定では、各地域の医療ニーズに応じて弾力的な資源投入ができるよう、入院医療の評価体系について、看護職員配置等をベースとする基本部分と医療ニーズの変化に対応した診療実績に基づく段階的な評価の部分との組み合わせに大きく再編されることになった。

急性期一般入院基本料について、従来、7対1入院料から10対1入院料(以下単に7:1、10:1と省略)に移行すると報酬が大きく下がるという問題について、重症度、医療・看護必要度に応じて、中間的な評価である入院料2・3を導入したことや、地域包括ケア病棟について、自宅等からの入棟患者の割合や緊急患者の受入れ、在宅医療に対する取組み等、地域包括ケアに関する実績に応じた評価を導入したことなど、地域のニーズに応じて、資源投入をすれば、それに見合った報酬が裏打ちされるという意味では、地域医療構想に「寄り添う」改定と評価されるであろう。

急性期から回復期への機能転換が構想実現への課題

地域医療構想の目的は医療機能に応じた病床数の数合わせではないし、病床機能の推計の前提となっている出来高点数が妥当かどうか等様々な議論があることも確かであるが、足元の病床機能報告では76万床の高度急性期・急性期が、地域医療構想の2025年の必要量では53万床となっており、急性期から回復期への機能転換が構想を実現する上での課題であることは異論のないところであろう。
代表的な回復期機能と位置づけられる地域包括ケア病棟は平成28年改定以降大きく増加傾向にあり、今後も一定の増加が見込まれようが、回復期リハビリテーション病棟は、既に約8万床に達しており、今回の改定でも、量から質への転換を狙いとする改定が行われている。
参照→【回復期リハビリテーション病棟入院料の見直し】

したがって、今後、調整会議で求められるのは、回復期リハビリテーション病棟等の新設又は転換を大幅に増やすことより、急性期と報告している病棟について、幅広い手術、がん・脳卒中・心筋梗塞等の治療、救急医療等、急性期に関する病床機能報告の項目によって、本当に急性期医療が行われているかどうかを確認し、急性期機能を果たしてないものは正しく回復期としての報告を促していくことであろう。
参照→【地域医療構想・病床機能報告における回復期機能について】

 

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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
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昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
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