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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第2回 『新たな』施設、介護医療院に期待する

「医療政策の本質と本音」を語るシリーズの2回目は、4月から創設された介護医療院がテーマ。療養病床をめぐる10年間の議論を総括し、平成18年に介護療養型医療施設の廃止が唐突に打ち出されたことは、「多くの医療関係者の信頼を損ね、混乱を惹起した」と述べるとともに、介護医療院が地域包括ケアを担う施設に育つことを期待しています。

介護保険施行から介護医療院創設までの療養病床をめぐる経緯

介護医療院が4月から施行された。まずは、制度の滑り出しを歓迎したい。

介護医療院のイメージ【厚生労働省HP:介護医療院について】

 

 保険料への影響から「全てを介護保険で受け止める」方針を転換

最初に、平成18年の介護療養型医療施設の廃止という政策の背景として介護保険施行当時の介護療養型医療施設の扱いについて、述べておきたい。

当初は、療養病床と介護力強化病院(高齢者が多く入院している病院であって、医師・看護師の配置を減らし、介護職員を多く配置したもの)の全てを介護療養型医療施設として介護保険で受け止める方針であった。

しかし、そうすると、高知県では保険料が平均月3800円(当時全国平均2500円)になる等、療養病床が多い地域での保険料の高騰が問題となった。
例えば、沖縄の離島では在宅介護サービスがほとんどないにも関わらず、保険料が4千数百円という試算になった。島に住所を残したまま、介護が必要になった高齢者の多くが沖縄本島の浦添等の老人病院に入院していたからである。

介護・医療の仕分けを通して実現した「長期療養にふさわしい施設」

現実的な判断として、全てを介護保険で受け止める方針を転換し、介護保険と医療保険とで適用の仕分けを行うこととした。
すなわち、介護保険適用(以後「介護療養病床」という)では、要介護者で長期に療養が必要な者を受け止め、医療保険適用(以後「医療療養病床」という)では、介護保険給付を受けられない40歳未満の者や密度の高い医学的管理や治療を必要とする者等を受け止めることとし、全国各地の医師会、病院団体等を行脚して理解を求めた。

その結果、介護保険施行当初の介護療養型医療施設は11.5万床にとどまった。

当時は「急性期の治療が終わって長期に療養する必要がある患者は、療養病床なら、一般病床と比べ、居室も広く、食堂で食事ができ、風呂もあるので、要介護認定を受けて、介護療養病床に入るのが適している」と説明しており、療養病床は長期療養にふさわしい施設であり、それを「社会的入院」として批判されることはほとんどなかった。

医療関係者も趣旨を理解していただき、療養環境を改善し、身体拘束禁止等の運営基準にも対応し、多くの志のある医療関係者が率先して介護療養型医療施設に参入していただいたと感じている。

平成18年「介護療養廃止政策」と療養病床の「押しつけ合い」

ところが、平成18年に、唐突に、介護療養型医療施設を平成23年度末で廃止する政策が打ち出された。
→参照1:療養病床に関する経緯①

当時はマクロ経済指標による医療費の抑制を主張する経済財政諮問会議に対抗して、医療費の伸びの構造的要因に着目して、生活習慣病の予防対策と並んで、平均在院日数の削減を打ち出さざるを得なかったという事情はあろうが、創設当初の経緯からすると、唐突な政策転換は大きな批判を呼んだ。

その後の経緯については、周知のとおり、医療療養病床では、平成18年の診療報酬改定で、医療区分・ADL区分により、医療の必要性の高い患者を評価し、介護保険では、平成20年に主たる転換先と目された老人保健施設にいわゆる転換型が設けられ、看護職員の夜間配置等が評価された。
→参照2:療養病床から転換した介護老人保健施設について

しかし、介護療養病床から転換型老健施設への転換は進まず、平成23年度末の廃止期限は6年間延長されることとなった。
→参照3:療養病床に関する経緯②

この間、改定の都度、診療報酬でも、介護報酬でも、療養病床に厳しい評価が繰り返され、あたかも療養病床を他の保険に押し付けあうかのような状況が見られた。

療養機能強化型としての評価から介護医療院の創設へ

こうした流れを変える契機となったのは、平成27年の介護報酬改定であろう。
介護療養病床の存続が経過措置であるにもかかわらず、看取り・ターミナル、喀痰吸引・経管栄養等の医療処置というその機能に着目し、こうした患者が一定割合以上入院している施設を「療養機能強化型」として評価した。
これにより、療養病床が引き続き介護保険で受け入れられるという方向感が生まれた。
→参照4:介護療養病床の「療養機能型A・B」について

そして、介護療養病床の廃止期限を平成29年度末に控え、療養病床の在り方等に関する検討会、社会保障審議会の特別部会での議論を経て、昨年の介護保険法改正により、介護医療院が新たな介護保険施設として位置づけられ、転換までの間、介護療養病床は6年間の存続が認められることなった。
→参照5:療養病床に関する経緯⑤ 介護医療院の創設

 

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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
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昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
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