Web医療と介護

神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第2回 『新たな』施設、介護医療院に期待する

『新たな』施設として地域包括ケアを担い、10年間の混乱に終止符を

10年で進んだ医療・介護機能分化を通して介護保険創設時の原点へ

この間の10年余にわたる療養病床をめぐる問題を総括してみたい。

平成18年当時、医療療養病床と介護療養病床で、患者の医療区分に大きな差が見られなかったが、今回の見直し議論の際には、医療療養病床では医療区分2・3の患者割合が7割以上、介護療養病床では要介護度4以上が9割弱と、それぞれで機能分化が進んだことは、今回の介護医療院誕生の地ならしとして評価されてよいだろう。
→参照6:医療療養病床(20対1・25対1)と介護療養病床との比較【第2回療養病床の在り方等に関する検討会(平27.9.9)資料】

一方で、次のような点では、多くの混乱を惹起した政策であったとの評価は免れないだろう。

唐突に介護療養病床の廃止を打ち出し、介護保険創設当初志をもって介護保険に参入した多くの医療関係者の信頼を損ねたこと
その後、診療報酬・介護報酬の改定の都度、療養病床の押し付け合いともいうべき状況を現出したこと
医療機能が十分でないこと等から転換型老健施設への転換は進まず、かえって、医療療養病床への逆流を招き、医療費適正化にはつながらなかったこと
結局のところ、今回の制度改正により、介護医療院という長期療養施設を介護保険で受け止めるという介護保険創設当初の原点に戻ったこと

既存施設の焼き直しではなく、『新たな』施設としてもとめられるソフトの重要性

今回の介護医療院については、こうした経緯を知る関係者からは、「既存施設の焼き直し」あるいは「療養病床からの転換先」という穿った見方もあろう。

確かに、Ⅰ型は介護療養病床の療養機能強化型相当、Ⅱ型は転換型老人保健施設相当であり、人員基準は従前の介護報酬の評価を踏襲、施設基準も居室面積8㎡を除けばカーテンがパーテーションに代わった程度で従前と大差はない。
報酬水準も、居室面積の評価と移行定着支援加算を除けば、従前の報酬と同水準である。

しかし、一方で、次のような点から、『新たな』施設であることが強調されている。

介護医療院は、Ⅰ型として介護療養病床の療養機能強化型が恒久化され、また、従来の老人保健施設相当のⅡ型でも長期療養できることになったこと
診療報酬上、在宅復帰・在宅移行の評価(急性期一般入院料の「在宅復帰・医療連携加算」や地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟の「在宅復帰率」)では介護系居住施設等として評価され、また、入院料の在宅からの受入れの評価(地域包括ケア病棟や療養病棟の「救急・在宅支援病床初期加算」等)についても自宅と同様に評価されること

→参照7:療養病床等の概要
→参照8:医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設

確かに、外形的に人員や設備だけで見れば従来の施設と大きく違わない。しかし、だからこそ、より一層ソフトの重要さが増すのではないだろうか。

診療報酬上、自宅扱いになり、在宅復帰や在宅からの受入れとして評価されるようになったからと言って専ら報酬を稼ぐために介護医療院を活用するという発想では、従来の入院と何ら違わず、『新たな』施設は患者・家族の信頼を失うことになろう。

「生活施設」にふさわしいサービスを提供し、地域包括ケアを担う有力な施設に

このほど、日本介護医療院協会が発足したが、江澤和彦会長は、介護医療院は「生活施設」であることがポイントだとし、その役割として、①プライバシーの尊重、②居場所づくり(愛着ある物の持ち込み、音楽)、③生活環境、④年中行事・レクレーション開催、⑤地域交流(イベント・カフェ等)を掲げた。

また、介護医療院の理念として、「利用者の尊厳の保障」、「自立支援を念頭に置いたサービス」、「必要かつ良質な施設及び在宅の療養の提供」、「潤いある生活感溢れるサービス」、「地域に開かれた交流施設としての地域貢献」を強調された。

「生活施設というだけあって従来の入院とは違うな」と利用者・家族に実感してもらえるようなサービスを提供し、他の医療施設等との柔軟な組み合わせにより、地域包括ケアを担う有力な施設として育っていくことを期待したい。

そして、この『新たな』施設が、平成18年の介護療養型医療施設の廃止を打ち出して以来の混乱に終止符を打つことを心から願っている。

 

  • 1
  • 2
神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
---
昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
Web医療と介護