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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第3回 本人の意思を尊重した人生最終段階の医療・ケア

4月実施の診療報酬・介護報酬の同時改定で、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえた対応が施設や在宅の算定要件に取り入れられました。人生の最終段階で、どんな医療・ケアを受けるか、意思決定支援の取組みが期待されます。そのほかにも医療・介護連携の観点から見直しが行われ、特別養護老人ホームでは看取り介護加算を改め、外部から在宅医療が入りやすくなりました。神田さんは、「特養における医療提供のあり方はそろそろ見直す時期にきている」と述べ、特養の看取り機能を高めることを提案しています。

今回改定で加速されたアドバンスド・ケア・プランニングの流れ

患者本人の意思決定支援を診療報酬・介護報酬で評価

今回、診療報酬・介護報酬が同時に改定された成果の一つは、人生最終段階の医療・ケアのおける患者本人の意思決定支援であろう。

在宅医療では、訪問診療や訪問看護のターミナルケア加算の要件として、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)等を踏まえた対応が位置付けられるとともに、療養病棟や地域包括ケア病棟では、ガイドライン等を踏まえ看取りの指針を定めておくことが入院料の施設要件とされ、地域包括ケア病棟では診療実績の一つとして評価された。

→参考1:国民の希望に応じた看取りの推進【上図PDF版】

また、これらの病棟の救急・在宅等支援病床初期加算のうち、より高く評価される在宅等からの受入れに当たっては、治療方針に関する患者・家族等の意思決定に対する支援を行うことが要件とされた。

→参考2:救急・在宅等支援病床初期加算等の見直し【上図PDF版】

 

ACPの考え方を踏まえたガイドラインの改正

診療報酬の改定内容が明らかになった後、3月下旬には、ガイドライン自体が約10年ぶりに改正された。
そのポイントは、次のとおりである。

①アドバンス・ケア・プラニング(ACP)の考え方を踏まえ、本人が、家族等の信頼できる者や医療・ケアチームと事前に「繰り返し」話し合うことが重要とされたこと

②医療関係者だけでなく介護職員も含めた「医療・ケアチーム」で話し合いを行うこととされたこと

③患者が意思を伝えられない場合に備えて、患者本人と同時に患者が「信頼できる家族等を含めて」話し合いを行うこと、また、患者がこうした者を自らの意思を推定する者として予め定めておくことが望ましいとされたこと

→参考3:「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」見直し【上図PDF版】

 

繰り返しの話し合いを通じて患者の考えや価値観を共有

ACPは、字義どおり「前もって医療・ケアについて計画すること」だが、人生最終段階の医療・ケアについて、患者の価値観、何を大事にしているのか、患者にとっての医療・ケアの目標が何か等について、患者本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合い、それを文書にまとめておくプロセスである。

リビングウィルやアドバンス・ディレクティブが「して欲しい・して欲しくない治療・ケア」という話し合いの結果に焦点があるのと対照的である。
ACPは、繰り返しの話し合いを通じて、患者の考えや価値観を共有することにより、患者や家族の満足度も高まり、患者の意思が確認できない場合においても、患者の意思を推定する重要な道しるべになり、複雑なケースにも対応できると評価されている。

→参考4:歴史的変遷(ADからACPへ)【上図PDF版】

厚生労働省も、平成28年度から、ブロック単位で人生の最終段階の医療に関する意思決定に携わる医師を含む多職種チームに対する研修を行っているが、その中でもACPの手法を基本にした取組を実施している。

神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
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昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
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