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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第3回 本人の意思を尊重した人生最終段階の医療・ケア

特養における医療提供の在り方を見直す時期

末期の悪性腫瘍患者や特養での看取りの努力を改定で後押し

今回の改定では、人生最終段階の医療・ケアに関する意思決定の支援の他にも、例えば、末期の悪性腫瘍の患者について、診療報酬で、訪問診療をする主治医からケアマネジャーへの情報提供を義務化するとともに、介護報酬で、著しい状態の変化がある場合、主治医の助言を得て2回目以降のケアプランはサービス担当者会議の招集を不要としたことや、頻回に訪問して状態変化やサービス変更の必要性を把握し主治医等に提供した場合、ターミナルケアマネジメント加算を創設している。

→参考6:訪問診療の主治医とケアマネジャーの連携強化【上図PDF版】

また、特養では、従来、特養で看取り介護加算を算定している場合、訪問診療や訪問看護ではターミナルケア加算が算定できなかったが、今回の改定で、特養で看取り加算を算定していてもターミナル加算が算定できるようになり、外部から在宅医療が入りやすくなった。

さらに、特養で、複数医師の配置、又は協力医療機関の医師との連携等の体制を整備し、実際に施設内で看取った場合の加算(看取り加算(Ⅱ))が設けられた。
今や、特養でも、8割弱は希望があれば施設内で看取るとしており、こうした努力を後押しする改定として評価される。

→参考7:特別養護老人ホームにおける医療サービスに係る見直し(改定後)【上図PDF版】

 

患者への配置医「押し付け」、配置医の診療「限定」は合理的か

ただ、特養における看取りや医師の業務の効率化等を考えれば、特養における医療提供の在り方自体、そろそろ見直す時期に来ているのではないだろうか。

入所者に対する過剰診療等を抑制する観点からか、特養の医務室は保険医療機関の指定は受けらず、また、外部の医師が特養に入ることができる場合は、報酬の二重取りを防ぐため、末期の悪性腫瘍や看取り、緊急時、専門外等に極めて限定されている。

→参考8:基本的な取扱い-介護老人福祉施設(特養)における介護保険と医療保険との調整(イメージ)【上図PDF版】

サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームについては、過剰な訪問診療を防ぐため、特定の医師・医療機関を押し付けず、患者の選択を尊重しろといいながら、医療提供施設ではない特養に入所すると、長年つきあってきたかかりつけ医に診てもらいたいという患者の選択を奪い、配置医を押し付けるのは果たして合理的であろうか。

施設内での看取りに積極的に取り組んでおられる芦花ホームの石飛医師は「自分は常勤医だが、処方も検査もできない。2週間に一度、協力医療機関の医師に来てもらっている」と言われていた。

 

配置医とかかりつけ医の選択、医務室の保険医療機関指定が課題に

特養の医療の在り方として、次のようなことを検討してはどうだろうか。

一つ目は、自らの主治医を、特養の配置医にするか、かかりつけ医にするかは、患者の選択に委ねることである。配置医を選べば、介護報酬は現状どおりでよいが、外部のかかりつけ医を選択すれば、介護報酬はその分減額される。

二つ目は、特養に医師を常勤配置しているような場合、医務室を保険医療機関として認め、当該医師による検査・投薬等、実質的な治療ができるようにし、看取り機能を高めることである。

ただし、いずれの場合も、過剰な診療にならないよう、報酬上の歯止めを合わせて講ずるべきことは当然の前提である。

神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
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昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
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