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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第6回 医師の働き方改革の検討で押さえておくべき点

働き方改革関連法の成立により、時間外労働の上限規制が導入されることになったが、医師については、5年間の猶予期間を設けるとともに、医療界の参加の下で検討の場を設け、具体的な規制のあり方を検討することになっている。このため、厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」を設置し、年度末のとりまとめを目指して検討を本格化させた。働き方改革実行計画のとりまとめに関わった立場から、医師の働き方改革について、押さえておくべき点を指摘していただいた。

働き方改革法案が成立、時間外労働の上限規制導入が医療界に大きな影響

先の通常国会で最重要法案と言われていた働き方改革法案が6月29日に成立した。
法案提出にあたって、厚生労働省の調査データの不備や異常値が多数見つかった問題で裁量労働制の適用範囲の拡大部分が削除されたことや、多くの野党が反対した特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設に注目が集まったが、医療界にとって影響が大きいのは、言うまでもなく時間外労働の上限規制の導入である。

医師については2年後を目処に具体的な在り方を検討、5年後を目途に適用

昨年3月28日の働き方改革実現会議(総理を議長とする関係閣僚と有識者からなる会議)において、「働き方改革実行計画」(以下単に「実行計画」という)が決定されたが、その中で時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度とするとされた。

しかし、応召義務や一人前になるのに10年以上の研鑽を必要とする特殊性に鑑み、「医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。
具体的には、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る。」とされた。

→参考①:労働基準法改正など長時間労働等の是正について【PDF】

→参考②:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案【PDF】

今年2月に検討会で「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」とりまとめ

これを受け、昨年8月に、医療関係者、有識者、労働界等からなる「医師の働き方改革に関する検討会」(以下単に「検討会」という)が設置され、時間外労働規制の具体的な在り方や医師の勤務環境改善策が検討されることとなった。
検討会では、今年2月に、中間的な論点整理を行うとともに「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」がとりまとめられた。

→参考③:「医師の働き方改革に関する検討会」中間論点整理等について【PDF】

→参考④:医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組の概要【PDF】

法案成立を受け、検討会も再開され、年度末の取りまとめに向けて、いよいよ本丸の時間外労働の上限時間を含むそれを実現するための施策・制度のあり方について検討が始まっている。

 

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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
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昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
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