2018/10/19掲載
第1回 西東京市版地域包括ケアシステムの構築と「にしのわ」の実践にみるケアマネの力
西東京市における地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みを踏まえ、同市の在宅療養連携支援センター「にしのわ」の実践から、ケアマネジャーに求められる役割と課題について、6回にわたり報告してもらいます。多職種連携におけるケアマネ力についても触れていきます。第1回は、「にしのわ」センター長の高岡里佳さんが、「西東京市版地域包括ケアシステム」について紹介。地域包括ケアは、高齢者の問題にとどまらず、地域で暮らすすべての人の問題であると述べています。
地域包括ケアシステムの実現が目ざすもの
「地域包括ケア」「地域包括ケアシステムの構築」、ここ10年の間に、この言葉を何度耳にしてきたことでしょう。今や医療分野でも介護分野でも、病院でも在宅でも、ある種ブームのように言われ続けていますが、真の意味を理解している人はいったいどのくらいいるでしょうか。少なくとも私自身について言えば、いまだ65%の理解度・・・といったところに留まっている感じがします。皆さんはいかがですか?
どうすれば「地域包括ケアシステムの実現」ができるのでしょうか。
各地域で試行錯誤をしながら、さまざまな取り組みが行われていますが、まだまだ暗中模索が続いているように思います。前例も正解もないなかで、「地域(を)」「包括(する)」「ケア(の)」「システム」って、いったいどのように創り上げていけばよいのでしょうか。
その答えを、自分たちの「地域」から探すために、あらゆる職種が今ようやく本気で繋がり始めようとしています。
筆者の勤務先があり、活動エリアでもある西東京市は、人口20万人を超えました。
少子高齢化の波にはあらがえませんが、都心から約20分、新しい住民や若い世代が少しずつ増えている地域といえます。一方で、高齢者も確実に増え続けていて、高齢独居世帯、老老世帯、認認世帯などが、ごく普通に存在し、決して特別な世帯構成ではないのが現状です。ちなみに最近の「老老」とは、必ずしも「人間同士」を意味しないようで、「高齢者と高齢犬・猫」などについても、いわゆる「老老世帯」と言えるかもしれません。
高齢者問題は若年者問題であり、地域で暮らすすべての人々の問題でもある
高齢者支援に関わっていると、高齢者以外の問題が浮き彫りになってくることがあります。
引きこもりの40代、親の年金で暮らす50代など、何らかの障害や精神疾患を抱えながら、社会資源にもいっさい繋がらずにひっそりと暮らし続けてきた若年層の方たちが直面している現実を、目の当たりにすることも多くなってきました。そういう方たちの親が高齢になって子どもを守りきれなくなり、初めて「地域」に表出してくるのです。「生きにくさ」を抱えた若年層の問題が、これからの地域には溢れ出てくる予感がしています。きっと多くの現任ケアマネジャーの皆さんは、こういった現実をすでに実感していることと思います。
このような若年層を、これからは誰が地域で支えていくのでしょうか。
もう高齢の親には頼れません。親は確実に先に「逝く」のですから。
だからこそ、「地域包括ケアシステムの構築」が急がれ、手法として「多職種協働・チームアプローチ」が推進されているのです。しかし、これはそうとう難しいことで、医療職と介護職、病院と在宅の関係は、まだまだ「異文化コミュニケーション」であると実感しています。
どの地域においても、本気で「地域包括ケアシステムの実現」を目ざすのであれば、これまで積み上げてきた各分野の常識や価値観、ローカルルールを一度壊してみる勇気が必要です。「市民の暮らし」を軸にした新しい価値観やルールを再構築することが、医療、介護、保健、福祉、行政側に求められているように思います。
高齢者問題は若年者問題であり、地域で暮らすすべての人々の問題でもあることを実感せずにはいられません。地域包括ケアシステムの実現を目ざすには、「地域」を構成しているすべての人々が、現実から目をそむけない「覚悟」も必要になります。まずは「覚悟を共通認識すること」がスタートラインのように思います。そして共通認識に留まることなく、具体的に、誰がどう動くのか、自らがアクションを起こす勇気も必要になる、そのことを自分に言い聞かせている毎日です。
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