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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)

第9回 医療機関の控除対象外消費税問題の抜本的な解決を考える

来年10月の消費税率引上げに向けて、医業税制の最大の課題は医療機関における控除対象外消費税問題だ。
30年前の消費税導入時に医療を非課税とする措置にかかわった筆者は、平成26年の税率引上げ時(5%→8%)に抜本的な解決を目指して、診療報酬と別建ての高額投資対応を提案した。当時、関係者の理解が得られず、検討は頓挫したが、医療の課税化の可能性がないことを考えれば、別建ての高額投資対応が唯一可能性のある案として検討する価値があると問いかけている。

来年10月の消費税率引上げに向け、コンビニで食品を買った後イートインで食べたらどうなるか、キャッシュレスカードで決済すると5%ポイント還元されるなど、消費税率引上げをめぐるニュースが連日報道されている。平成31年度税制改正の議論も佳境に入る時期だが、医業税制の最大の課題が医療機関の控除対象外消費税問題であることに誰も異論はないだろう。今回は、この問題の「抜本的な解決」について、私見を述べたい。

これまでの診療報酬による対応

今年3月以降、中医協の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(以下、分科会という)において、来年10月の消費税率引上げに向けた診療報酬による対応について議論が行われてきた。

平成26年度の診療報酬改定では、消費税率8%への引上げ時の対応として、平成元年の消費税導入時、平成9年の税率5%への引上げ時の診療報酬による補填が不十分であったとの批判を踏まえ、課税仕入れに対する満額の予算が確保され(図1)、医科・歯科・調剤、病院・診療所、各入院料の間での財源配分も、それぞれの医療費シェアと課税経費率に応じて、透明性高く配分された(図2)。

また、点数配分では、平成元年、9年の診療報酬改定では、消費税の影響を特に大きく受ける個別項目に補填した結果、その後の改定で点数が変わりどこに補填されたかわからなくなってしまったとの批判を踏まえ、最終的には中医協で公益裁定までして、初再診料や入院基本料といった基本診療料への上乗せを中心に手当がされた。

例えば医科では

  • 診療所については、初・再診料及び有床診療所入院基本料に上乗せする。
  • 病院については、診療所に乗せた点数と同じ点数を初・再診料に上乗せし、余った財源を入院料等に上乗せする。

とされた。この結果、上乗せした点数の算定回数により、その後の補填の状況も検証できるようになった。

図1◆過去3回の消費税対応分の計算方法

 

図2◆診療報酬改定率(消費税引上げに伴う改定分)について

 

図3◆消費税8%への引上げに伴う対応①

 
しかし、平成26年度分の補填状況調査において、DPC病院の包括部分の補填について複数月にまたがる入院の日数を重複してNDBデータから抽出したことを見逃すというミスを犯し「補填状況にばらつきは見られたものの、マクロでは概ね補填されていることが確認された」という誤った検証結果が流布され、関係者間に混乱を惹起したことは極めて残念である。
その後、平成28年度分の補填状況調査の過程で誤りが判明し、厚労省は関係者から厳しく批判され、謝罪するに至っている(図4・5)。

図4◆平成26年度補てん状況調査結果

 

図5◆平成27年および平成30年の経緯

 

平成28年度の補填状況調査では、全体の補填不足及び医療機関種別ごとの補填率のばらつきが見られたため(図6・7)、分科会では、その要因分析を行い、その解消のための配点方法の見直しについて議論を行い、11月21日には10%引き上げ時の対応の方針を「議論の整理」としてとりまとめている。

図6◆平成28年度補てん状況把握結果①【全体】

 

図7◆平成28年度補てん状況把握結果②-1【病院】

 
具体的には、

  1. 一般病棟入院基本料・療養病棟入院基本料について、療養病床の割合(一般病棟は6割未満、療養病棟は6割以上)で病院を分類して課税経費率をみる、精神病棟入院基本料について、精神科病院の課税経費率をみる
  2. 平成26年改定では、病院種別や入院料別ごとに異なる入院料シェア(総収入に対する入院料の収入額の割合)を考慮せず課税経費率のみを考慮して補填点数を決めたため、入院料シェアが高い病院種別は補填超過に、低い病院種別は補填不足になったことから、今回は、病院種別や入院料別ごとの入院料シェアも考慮して補填点数を決定する
  3. 使用するデータは、課税経費率について、直近の医療経済実態調査の結果を、補填点数項目に係る算定回数について、直近のNDBデータの通年の実績データを用いる

等の方針が示された。また、こうした見直しを行った場合の補填のシミュレーションも行い(図8)、医療機関種別、病院種別ごとのばらつきが相当程度是正されることが確認され、了承されている。

図8◆シミュレーション結果

 

 

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神田 裕二(かんだ・ゆうじ)
県立広島大学大学院経営管理研究科特任教授
兵庫県立大学経営研究科客員教授
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昭和57年厚生省入省。老人福祉課、広島市高齢者福祉課長・社会課長、保険局医療課を経て、平成8年の法案提出から平成12年の施行まで介護保険制度の立ち上げに携わる。
平成18年から保険局国民健康保険課長と高齢者医療制度施行準備室長を兼務し、平成20年の高齢者医療制度の施行に携わる。
その後、保険局総務課長、内閣官房審議官(経済財政運営担当)、大臣官房審議官(医政、医療・介護連携担当)、医薬食品局長を経て、平成27年10月医政局長。平成29年7月厚生労働省退職。
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