2018/12/13掲載
第2回 ケアマネジャーにしかできない「チームマネジメント」とは
ケアチームをマネジメントするのがケアマネの仕事です。
ケアマネは多職種の専門性をつなぎ、利用者1人ひとりのオリジナルなケアチームを創って、利用者の望む暮らしの実現を目指すためのチームマネジメントを担い、それが仕事の醍醐味に結びついています。しかし、介護保険制度が複雑化するに伴い、サービス調整や給付管理に追われ、仕事を辞めたいともらす人も増えています。
連載初回に続き、高岡里佳さんが、ケアマネの仕事の本来もつ意味と目的、そしてやりがいについて述べます。
「介護支援専門員」と「ケアマネジャー」
私は、自分のことを「ケアマネジャー」と呼んでいます。介護保険法上の正式名称は「介護支援専門員」ですが、ケアプランの作成や給付管理業務をこなすことだけが仕事ではありません。「ケア(チーム)」を「マネジメントする専門職」という広い意味で、意識して「ケアマネジャー」と言うようにしています。
ケアマネジャーは、「ケアマネジメント」というソーシャルワークの関連技法を用いて利用者の暮らしを支える「対人援助職」です。ケアマネジャーとして仕事をするためには、介護保険法に位置付けられた介護支援専門員であると同時に、「ソーシャルワーカー」でなければならないと思っています。今までも、そしてこれからも、決して介護保険制度の枠の中だけにとどまっている仕事ではないと考えていますが、皆さんはどのように考えますか?
介護を社会全体で支える仕組み
筆者は平成12年1月に、東京都介護支援専門員実務研修を修了しました。当時の都知事は石原慎太郎氏。石原都知事名が入った修了証書と介護支援専門員証を初めて手にしたときは、何だかワクワクしたのを覚えています。
介護保険制度が始まる前の平成10年ごろ、当時老人保健施設の相談員だった筆者は、入所してくる利用者の家族から、「頑張ってきたけどもう在宅介護は限界です・・・」という言葉をよく耳にしていました。
ある離島から入所してきた利用者がいらしたのですが、同居していた長男の妻からは、「島には施設は1ヵ所しかなくて、とてもそこに義理の親を預けることなんてできません。『〇〇さんとこの嫁は親を施設に預けたらしいよ。まだあんなにお元気なのにねえ。かわいそうに』と言われてしまうのです。認知症の症状が進行していることは近所の人にはわからないようにしてきました。ちょうど子どもが受験生なので私もパートに出ないといけないし、その間だけでも、と思って島内の施設でショートステイをお願いしたかったのですが、周囲の目がなかなか厳しくて・・・」という話を聞きました。
都心の生活しか知らない筆者にとって、地域性が違うとこんなにも介護に対する感覚が違うのかと思いました。在宅介護では、困ったときにすぐに助けてもらえるサービスや社会資源が身近にない、あっても必要なときに利用できない、それがどれほど大変なことかと悩ましく思っていました。
そして平成12年に発足した介護保険制度は、終わりの見えない介護問題を地域社会で支える仕組みとして誕生しました。これからは、介護を家族だけで抱え込まなくていい、1人で頑張らなくていい、助けてと言っていい、そんな社会になったのだと嬉しく思ったものでした。
ケアマネジャー? 何それ?と言われた時代
平成14年からは、居宅介護支援事業所の管理者兼介護支援専門員として働くようになりました。「介護の社会化」「介護は地域で支え合う」という介護保険制度の理念に期待と夢を抱いて、ケアマネジャーの仕事に夢中になっていきました。目の前にいる利用者やその家族が、自宅での暮らしを続けるためにケアマネジャーの自分にできることは何だろうと、一生懸命考えて動きました。
それでも時には、利用者の家族に大変なお叱りを受けることもありました。また、夜中に利用者から呼ばれて様子を見に行ったことも幾度となくありました。何より悔しかったのは、医師から言われた言葉です。1人暮らしの利用者の受診に付き添い、主治医に「〇〇さんの担当ケアマネジャーです」と挨拶をしても、「は? ケアマネ? 何それ? 介護保険? よくわからないけど、あなた家族じゃないなら外に出て」と、診察室から追い出され名刺を突き返された光景は、今でも鮮明に覚えています。
さすがに今の時代は、「ケアマネ? 何それ?」と言う医師はいないと思いますが、医療との連携が推進される中で、ケアマネジャーの役割や業務について正しく理解している医療職がどれくらいいるだろうかと疑問に感じることはまだまだあります。
振り返ってみれば、本来のケアマネジャーの業務範囲を越えた動きをしていたことが、当時はあったかもしれません。でも、どんなに悔しい思いをしてもケアマネジャーの仕事が嫌になることはありませんでした。福祉出身の筆者にとってケアマネジャーの仕事は、自ら望んだ「福祉の仕事」だと信じていたのだと思います。
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