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第5回 ケアマネジャーに求められる『意思決定支援』とは? —日常的な多職種連携があるからこそ活きるACP(アドバンス・ケア・プランニング)について—

「超高齢社会」を迎えた日本は、同時に「多死社会」を迎えることになる。人生の最終段階を迎える高齢者が尊厳を持ち、「最期まで自分らしく生きること」を地域で支えるために、体制の整備や国民への啓発が進められている。
そんななか、『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』が大幅に改訂され、医療職だけでなく、介護・福祉職もケアチームの一員として医療・ケアの決定に関わることが明記された。同時に、ACPの重要性も盛り込まれた。なぜそのような改訂が行われたのであろうか。「意思決定支援」や「ACP」の必要性から、ケアマネジャーとしてどのように関わることができるのか、考えたい。

病院における「意思決定支援」の現状

私は地域病院の看護師として、高齢者の医療を病院の中から支えてきました。さまざまな疾患を抱えた高齢者の看護をさせていただくなかで、一番考えさせられたのが、「意思決定支援」です。
退院後に自宅から遠く離れた施設に行くことになった方、病院のベッドで1人最期を迎えられた方、家族の意向ですべてが決まっていく方…このような方の看護をするときに感じていたのは、「本人の望む生き方を支えることができたのであろうか?」ということでした。

病院は病状が悪化した方が、治療のために入院をする場所です。そのため、ふだんよりも自分の意思を伝えることが困難な状況が生じます。さらに、環境が変化したことでせん妄や認知症の進行がみられたり、家族関係の希薄な方や身寄りのない方が増加していることで、本人の望む生き方を聞きだすのが難しくなっている現状があります。
また、治療の甲斐なく、病院で人生の最終段階を迎えることになった方の医療やケアを考えるときに、どこまでの治療を望むのか、どんなケアをしてほしいのか、どこで最期を迎えたいのか、本人の希望を叶えてさしあげたいと思っても、本人が「こうしてほしい」と意思決定できる能力が残されている方はとても少なく、代理意思決定者となり得る家族もいない場合は、さらに支援が困難になります。

入院という、本人との関わりが数日間しかないような状況下で、本人の意思を尊重した意思決定を支援することは難しく、その結果、本人の望みがわからないまま、医療的な判断で治療やケアが行われていることがあるのも現実です。このような現実があるなかで、医療・ケアスタッフも「本人の望む生き方」をどのように支えることができるのか、悩みながら日々ケアを行っているのです。

 

ACPの考え方

「最期まで自分らしく生きること」を支えるためには、本人の意思決定能力が低下したときに、本人の意思を尊重した「意思決定支援」をすることが必要です。そのためには、意思決定能力が低下する前に、その時に備えて事前に話し合い、信頼できる人に伝えておくことが必要になります。なぜこのような取り組みが必要なのでしょうか。

本連載の第4回でも紹介した、「ACP」について厚生労働省から国民向けに啓発しているリーフレットの中の一文に、『命の危険が迫った状態になると、約70%の方が、医療やケアなどについて自分で決めたり、望みを人に伝えることが困難になると言われています。』という記述があります。
つまり、命に関わる大きな病気やケガをしてしまい、どのような医療やケアをするべきか判断しなければならないときに、約70%の方が「こんな治療を受けたい」「こんなケアをしてほしい」「このような治療は受けたくない」などの希望を、自分自身で決めて伝えることができない状態になっているのです。

そして、このように命に関わる大きな病気やケガで意思決定ができなくなってしまう状況は、いつ起こるかわかりません。
いろいろなケースが考えられますが、例えば、

・脳出血で意識がなく、延命処置を受けるかどうかの選択をしなければならないとき
・食事がとれなくなって、点滴や胃ろう造設などの医療行為について考えるとき
・人生の最終段階を迎えたとき などです。

このような状況で、意思決定が困難になってしまったときに、元気だったころの本人ならどのような医療やケアを望むのか、本人の意思や希望を推定し、そこに医療的判断や家族の意向を合わせて、本人にとっての最善のケアは何かを考えていくことが必要になります。

どのような状況にあっても、「最期まで自分らしく生きる」という希望を叶えるためには、あらかじめ信頼できる人、医療・ケアチームと、「自分の大切にしていること」「希望する医療やケア」について話し合い、大切な人たちに伝えておくことが必要です。そして気持ちに変化があったときは、何度でも繰り返し話し合い、伝えておくことで意思決定能力がなくなったときも、「本人の望む暮らし」が推定できるように、意思を大切なひと、医療・ケアチームと共有しておく。そうすることで意思決定を支援することができる。これが「ACP」の基本的な考え方です。

 

 

 

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