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第16回 社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」開催される(7月25日)

第16回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」(主催:地方から考える「社会保障フォーラム」事務局)が7月25日と26日の両日に開催され、全国から約70名の地方議員が参加した。初日の講義の概要について紹介する。

第16回地方から考える「社会保障フォーラム」プログラム
7月25日(水)
講義1 地域包括ケアシステムと住宅対策
講師:武井佐代里氏(厚生労働省 老健局高齢者支援課長)
講義2 地域包括ケアシステムと民間事業者の役割
講師:佐藤優治氏(一般社団法人「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会理事長)
講義3 持続可能な介護保険制度に向けて
講師:濵谷浩樹氏(厚生労働省 老健局長)
7月26日(木)
講義1 障害保健福祉施策の動向
講師:三好圭氏(厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 障害福祉課障害児・発達障害者支援室長 地域生活支援推進室長)
講義2 健康寿命の延伸へ向けた厚生労働省の取組みと自治体の役割
講師:間隆一郎氏(厚生労働省 健康局総務課長)

地域に信頼される高齢者の住まいの重要性を強調──武井高齢者支援課長

厚労省高齢者支援課の武井佐代里課長は、「地域包括ケアシステムと住宅対策」をテーマに講演した。武井課長はまず、今後の高齢化などの状況を説明。▽75歳以上人口は都市部では急速に増加し、もともと高齢者人口の多い地方でも緩やかに増加する▽各地域の高齢化の状況は異なるため、各地域の特性に応じた対応が必要──であることを示した。

その上で、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるように、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制の「地域包括ケアシステム」の構築について紹介し、「ベースになる住まいについて考えることが必要」と述べた。

武井課長は、地域包括ケアにおける住まいの在り方について、本人の選択により、①出来る限り自宅で暮らし続ける場合と、②地域の高齢者向け住まい・施設への転居──に分けて解説した。

このうち①出来る限り自宅で暮らし続けるために、住宅改修によるバリアフリー化や在宅サービスに配慮した住宅のプランニングなどを示した。②地域の高齢者向け住まい・施設への転居に関連して、サービス付き高齢者向け住宅や運営情報公表システムなどを紹介。さらにサ高住や有料老人ホームなどの高齢者向けの住まいに定期巡回・随時対応サービスや診療所などを組み合わせた仕組みを普及していくことも示した。

さらに住み替え支援や低所得高齢者等に対する住まい・生活支援に関するモデル事業の取り組み、新たな住宅セーフティネット制度なども紹介。

最後に「事業者の方々に伝えている」こととして、これからの高齢者の住まいの方向性について、①自立支援・重度化防止に資する取り組みの促進②看取りの推進③地域に愛され、終の棲家として選ばれる存在へ──など大きく3点を示した。

3点目に関連し、「地域に信頼されることがひいては選ばれる住宅になっていくことで、非常に大事なこと」と指摘。地域に開かれたホームとなるために、共有スペースで「子ども食堂」を開くことや地域の交流スペースとして開放することを提案しており、有料老人ホームでもそうした取り組みが少しずつ広がっていることも紹介した。

地域づくりも担う、民間介護事業者の活用を要請──佐藤民介協理事長

「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会(民介協)の佐藤優治理事長は、「地域包括ケアシステムと民間事業者の役割」をテーマに講演した。
佐藤理事長は、介護事業者の役割として「高齢者の自立支援と重度化予防が課題」と強調。「空白の初期」を解消することを提案した。

「空白の初期」とは、「これまでの生活を継続していくことを難しくするような変化やリスクが生じる時期」で、たとえば、外出の機会が減ったり、心身のちょっとした変化が出たりするなど、将来の介護状態を予見させる時期のことをいう。この時期における、家族以外の地域の仲間や専門事業者などの役割も重要であることを示した。

地域包括ケアシステムの中での介護サービスについて、人の生活の継続を支えるためのものであり、初期からターミナル段階まで、状態変化に合わせた最適な支援サービスが変化に適応していくことが必要とした。

さらに地域包括ケアシステムの実現に向けて、介護事業者が要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるインフラストラクチャーとして大きな役割を担っていることを提示。要介護者のニーズに寄り添い、安心・安全な生活をおくるために必要な、質の高い、かつ多様な支援を継続的に提供することが求められているとした。

加えて民間介護事業者の役割として、①介護イノベーションの創出②ビジネスの視点を持った持続可能な保険外サービスへの取り組み③地域づくり・まちづくりへの参画──の3点をあげた。その上で、地域における民間事業者の活用を要請し、「民間事業者も必ず役に立てる」と強調した。

持続可能な介護保険制度に向けて不断の見直しを──濵谷老健局長

厚労省の濵谷浩樹老健局長は、「持続可能な介護保険制度に向けて」をテーマに講演した。大きく、①介護保険制度の現状②持続可能性確保のため改革③地域包括ケアシステムの構築④2040年に向けた社会保障改革──の4つに分けて解説した。

まず①介護保険制度の現状の中で、介護保険料の全国平均の伸び率に触れ、第4期計画期間(2009~2011年度)を除くと、各計画期間でこれまで10%以上の伸びを示してきたが、第6期(2015~2017年度)から第7期(2018~2020年度)の伸びは「6%に止まった」ことを紹介した。

その要因について第6期では、サービス拡大とともに高めの保険料を設定していたが、実績値では計画値ほどサービスが伸びなかったことから、保険料を積み立てた準備基金が残り、それを取り崩すことで第7期は保険料の伸びを抑制できたことを説明した。

さらに、市町村で介護予防などに取り組む高齢者の「通いの場」の設置などに第6期でかなりしっかり取り組んだことと、個人の健康への意識の高まりから、「『元気な高齢者が増えているのではないか』とかなりの市町村の方から聞いた」と述べた。

また②持続可能性確保のための改革については、社会保障給付費について経済、財政と調和のとれたものとすることについて、以前より、議論が行われてきたことを解説。
その上で、昨今の介護保険の給付と負担の見直しについて触れ、たとえば昨年の制度改正により、この8月から現役世代並みの所得のある高齢者に3割負担を導入することなどを紹介した。

③地域包括ケアシステムの構築では、一般介護予防事業による「通いの場」が増加している状況を紹介した。平成28年度では1741市町村のうち1385市町村で、約7万6千カ所となっており、高齢者人口の4.2%が参加。先行する岡山県総社市では高齢者人口のおおむね1割が参加しており、それを参考に取り組みを進めていることを示した。

また今年度から、第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画が同時にスタートしたことに言及。地域医療構想の病床転換により、2025年時点で約30万人分が介護施設や在宅医療等に転換することになっており、計画にも見込まれているが、病床転換が明確なのは「数%しかない」と指摘。実際に介護サービス等により支えてくるのがわかってくるのは、2021年度からの第8期以降になると説明。「第8期以降、医療介護連携での計画は見直しが必須になる」とした。

在宅における医療の必要な中重度者が増加することが見込まれ、市町村では、在宅医療・介護連携推進事業に取り組んでいるが、地域医師会とのパイプがないことや、実際のノウハウに乏しいなどの課題があがっており、都道府県による支援が必要であることも訴えた。

④2040年に向けた社会保障改革では、2025年以降、現役世代の人口が急減する一方、医療・福祉の就業者数の必要見込み量が増加することからその対応が必要であることをあげ、対策として2点示した。

1点目としては、「健康寿命の延伸」。「要介護状態の期間を短くすることにより、医療・介護ニーズ減らす。元気な方には支えてに回っていただく」と述べた。2点目としては、テクノロジーの活用等により医療・介護サービスの生産性の向上を目指すことをあげた。

最後に濵谷老健局長は、今後の方向性として、あらためて①地域包括ケアシステムの普及・深化②生産性向上と人材確保③介護保険制度の持続可能性の確保──を示した。

このうち③介護保険制度の持続可能性の確保では、「常に状況に合わせて国民の合意形成をはかりながら、ある程度の負担を皆で分かち合う見直しを常にしていかなければならない」と訴えた。

 

詳細は社会保険旬報2018年8月21日号と9月1日号に分けて掲載する予定です。

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