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第17回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」が開催される(11月14日)

地方議員を対象とした、第17回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」(主催:地方から考える「社会保障フォーラム」事務局)が11月14~15日に都内で開催された。約80名が参加した。初日の講義の概要について紹介する。
詳細は社会保険旬報2019年1月11日号と1月21日号に分けて掲載する予定だ。

第17回地方から考える「社会保障フォーラム」プログラム
11月14日(水)
講義1 子どもの貧困─現状と課題
講師:成松英範氏(厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長)
講義2 障害者も健常者も自立できる社会を目指して
講師:山口正行氏(厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室長)
講義3 先進事例と平均的自治体の比較から考える地域包括ケアの推進策
講師:山路憲夫氏(白梅学園大学「小平学・まちづくり研究所」所長)
11月15日(木)
講義1 2040年から考える社会保障
講師:伊原和人氏(厚生労働省大臣官房審議官〔総合政策(社会保障)担当〕)
講義2 地域共生社会を考える
講師:宮本太郎氏(中央大学法学部教授)

子どもの貧困対策に政府一丸として取り組むことを強調──成松課長

厚労省家庭福祉課の成松英範課長は、「子どもの貧困─現状と課題」と題して講演。「子どもの貧困は政府一丸として取り組んでいかなければならない」と強調し、子どもの貧困に関する現状と取り組みを紹介した。

まず子どもの貧困の現状については、相対的貧困率の年次推移で、子どもの貧困率が2015年で13.9%と2012年より2.4ポイント低下したことを提示。またひとり親家庭など、大人が一人の家庭の相対的貧困率は50.8%と半分以上だが、「トレンドをみればここ最近減少傾向にある」と指摘した。

また母子家庭・父子家庭などのひとり親家庭は推計で約140万世帯あることをあげ、「10人に1人はひとり親家庭のお子さんになると思う」と説明。このうち123.2万世帯が母子家庭だ。ひとり親になった理由としては離婚が8割程度と最も多いが、昨今は未婚のひとり親も増えており、「どのように施策を打っていくかが1つの論点」と紹介した。

就業状況は8割を超えているが、母子家庭の場合、正規職員の割合が4割程度に止まる。「正規になれない、正規として働けない状況がある」とした。平均年間収入は母子家庭で243万円と相対的に低い傾向にあることも示した(父子家庭では420万円)。

児童虐待や親が養育できなくて、施設で、あるいは里親に養育されている子どもが約4万5千人いるが、「18歳あるいは二十歳でポンと社会に出されてしまう」ような状況があり、「『貧困の連鎖』」が生じないようにしなければならない」と述べた。

進学についてみると、高校進学率は9割を超え、全世帯平均と遜色がないが、大学等進学率は全世帯が73%だが、ひとり親家庭は58.5%、生活保護世帯は35.3%、児童養護施設では27.1%に止まっていることを示した。裏返しの中卒後・高卒後の子どもの進学率は高い傾向にある。

次に政府の子どもの貧困対策について紹介。「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が平成25年に超党派で成立し、政府全体で施策が進められている。

目的では、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策を総合的に推進すること」とされている。
成松課長は、「理念を常に抑えていかなければならないと思っている。『子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう』というのがキーワード」と強調した。

さらに法律では「子どもの貧困対策に関する大綱」の策定、関係閣僚で構成する「子どもの貧困対策会議」の設置、都道府県の計画策定などが規定されていることを紹介した。

大綱では施策だけでなく、25の指標を見て改善していくことが盛り込まれている。当面の重点施策として、▽教育の支援▽保護者に対する就労支援▽生活の支援▽経済的支援─などが示されている。
このうち教育の支援では、昨年12月に閣議決定された経済政策パッケージで、幼児教育を全面的に無償化することや、低所得の人達の大学授業料の免除、通学費・教材費の支援などが盛り込まれたことも紹介した。

さらに成松課長は、ひとり親家庭に関する支援を中心に解説。自治体での相談窓口のワンストップ化と、総合的な支援の強化を進めていることや、日常生活支援や子どもの生活・学習支援などの事業、母子家庭等の就労支援、養育費等の支援、児童扶養手当などの各種事業・制度について紹介した。

障害児入所施設のあり方の見直しなどを指摘──山口室長

厚労省障害児・発達障害者支援室の山口正行室長は、「障害者も健常者も自立できる社会を目指して」と題して講演した。

山口室長は、障害福祉施策の経緯や障害者総合支援法の概要を示した後、最近の動きとして、▽障害者総合支援法の改正▽平成30年度障害福祉サービス等報酬改定▽障害福祉計画の見直し──を紹介。
さらに障害福祉施策の論点・課題として、①重度化・高齢化への対応②精神障害者の地域移行の促進③障害児入所施設のあり方の見直し④医療的ケア児への対応⑤質の向上(人材育成、質の評価、サービスガイドライン)⑥意思決定支援⑦発達障害の支援⑧児童福祉行政等との連携──を上げた。

山口室長は障害者総合支援法の基本理念を解説し、「障害のある方が、可能な限り身近で支援を受けられ、どこで誰と生活するか本人が選べるように支援していかなければならない」と強調した。

障害福祉サービス関係費は平成30年度予算で1.38兆円。ずっと伸びてきており、28年4月から29年4月までの伸び率は7.3%と高いことを示し、「特に障害児が伸びている」と述べた。平成18年度から10年間の総費用額の伸び率は233.3%と、医療の128.1%、介護の157.8%と比べて大きいことも示し、「伸びをどう管理していくかが一つの課題になっている」と指摘した。

制度を概観した後、最近の動きに触れ、障害者総合支援法改正と障害福祉計画の見直し、障害福祉サービス等報酬改定と合わせて、「30年度は大きな節目になっている」と強調した。

障害者総合支援法改正は今年度から全面施行され、障害者の望む地域生活の支援として、「自立生活援助」など地域で暮らす障害者のサービスが充実したことなどを紹介。また医療的ケア児など障害児支援のニーズの多様化にきめ細かな対応を行ったとした。
障害福祉サービス等報酬改定は、0.47%のプラス改定になり、▽障害者の重度化・高齢化を踏まえた、地域移行・地域生活の支援▽医療的ケア児への対応等▽精神障害者の地域移行の推進──などに対応したことを紹介した。

さらに今後の論点・課題で、障害児入所施設について「ほとんど光が当たっていないと思う」と指摘。平成26年に障害児支援の在り方に関する検討会の報告書で、障害児入所施設の機能について、▽発達支援▽自立支援▽社会的養護▽地域支援──の四つに整理されたが、「対応が進んでいない。障害児入所施設はこれから検討していきたい」と述べた。

地域包括ケアの推進で先進事例などを紹介──山路所長

白梅学園大学「小平学・まちづくり研究所」の山路憲夫所長は、「先進事例と平均的自治体の比較から考える地域包括ケアの推進策」について講演。

地域包括ケアの先進事例として千葉県柏市など7自治体を上げ、5自治体の取り組み概要を紹介する一方、自身が支援等で関わる東京都多摩地区の小平市・東村山市・小金井市・国立市の取り組み状況も紹介し、「平均的な自治体」の特徴と課題も示した。

山路所長は、柏市では、東大の協力の下、2010年から地域包括ケアシステムの構築が進められたことを紹介。当初動かなかった市医師会を動かし、在宅医療を推進した経緯などを紹介した。生きがい就労や、拠点型サービス付き高齢者向け住宅の整備なども進んだが、残された課題として生活支援サービスの整備を指摘した。また兵庫県豊岡市の看取りの取り組みや、東京都稲城市の介護支援ボランティア、在宅医療の充実に向けた栃木県の取り組みなども紹介した。

また多摩地区4市のうち国立市では、在宅医療に積極的な新田クリニックの存在もあり、在宅療養協議会と行政の両輪により進められているが、課題として市民の参画が不十分であることなどを紹介した。

こうした事例を踏まえ、地域包括ケアを進める上で大事なこととして、コーディネーター・キーマンの存在や地域の特性に応じた取り組みの創意工夫、首長によるリーダーシップ、住民の参画、在宅医療のさらなる推進、医療と介護の連携などを指摘した。

 

本フォーラムのレポートは社会保険旬報2019年1月11日号と1月21日号に分けて掲載する予定です。

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