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第19回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」が開催される(8月7日)

地方議員を対象とした、第19回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」(主催:地方から考える「社会保障フォーラム」事務局)が8月7日に都内で開催され、およそ100名が参加した。セミナーは8日にも続く。
初日の概要を紹介する。詳細は社会保険旬報にて掲載する予定だ。

第19回地方から考える「社会保障フォーラム」プログラム
8月7日(水)
講義1 少子高齢社会における訪問看護の役割─被災地の経験をまじえて
講師:菅原由美氏(全国訪問ボランティアナースの会キャンナス代表)
講義2 空き家対策─都市の事情、地方の事情─
講師:深井敦夫氏(国土交通省住宅局住宅総合整備課長)
講義3 ごちゃまぜで進める地域包括ケア・地域共生社会
講師:唐澤剛氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)
8月8日(木)
講義1 児童虐待─児童福祉法の改正で地方自治体がやるべきことは
講師:成松英範氏(厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長)
講義2 認知症施策の総合的推進について
講師:岡野智晃氏(厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室長)

災害時のボランティアナースの活動を紹介──菅原氏

全国訪問ボランティアナースの会「キャンナス」の菅原由美代表は、「少子高齢社会における訪問看護の役割─被災地の経験をまじえて」と題して講演。平時と災害時の活動を紹介するとともに、今後を展望した。

名称のキャンナス(Cannus)とは、「デキル(Can)ことをデキル範囲で行うナース(Nurse)」という意味。地域に根ざした活動をモットーに、本人・家族が満足できる手厚い介護・看護の実現を目指している。理念として、自身の介護・看護体験を踏まえ、ターミナルケア・潜在ナースの掘り起こし・レスパイトケアの3つ掲げている。現在、キャンナスは全国に127ヵ所が活動している。

各地のキャンナスはそれぞれ独自に取り組みを展開。平時では、医療の必要な人の移送・外出支援や宅老所の運営、ミニデイサロンの実施、子ども食堂の開設、障害の有無等に関係なく旅行を楽しめるユニバーサルツーリズムなどに取り組んでいることを示した。

他方、キャンナスは、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨災害などで被災地を支援した。

東日本大震災の支援は、気仙沼などで直後から長期に渡り継続。直後の支援では、たとえばトイレの汚れが酷く、掃除を徹底するなど衛生環境を改善し、喜ばれたエピソードを披露。衛生環境改善の重要性を強調した。また熊本地震では男性被災者の支援の一つとしてバーも開設した。

菅原氏は、訪問看護の1人開業を認めるように規制緩和を働きかけ、東日本大震災の折に特例として認められた経緯を紹介。さらに「身近にいる、かかりつけナースが大切!」として地域に根ざしたナースが1人でも開業し、制度外の取り組みも行い、まちのコンビニのような存在として活動していくことを展望した。

空き家対策で福祉との連携や福祉施設等での活用を紹介──深井課長

国土交通省住宅局住宅総合整備課の深井敦夫課長は、「空き家対策─都市の事情、地方の事情─」をテーマに講演した。空き家の現状とその対策を説明するとともに、高齢者や障害者、低所得者などへの新たな住宅セーフティネット制度による取り組みを紹介した。

まず空き家は1998年の576万戸から2018年には846万戸と20年で1.5倍と増加しており、このうち賃貸用又は売却用等を除いた「その他の住宅」が347万戸を占め、うち一戸建て(木造)が239万戸と最も多いことを示した。

「空き家」は、倒壊の恐れがあるものから使用できるものまで多様であるとともに、課題としては防災性や防犯上の問題など様々であることを指摘。そのうえで、国交省では、議員立法による「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、市町村が行う空き家対策への補助などの支援を進めていることを説明した。

自治体の取り組みとして、福岡県太宰府市では、高齢者やその家族と接点が深いケアマネジャーや民生委員といった福祉関係者、自治会等の意向を把握。連携して空き家対策に取り組んでいることなどを紹介した。

また、新たな住宅セーフティネット制度による取り組みとして、熊本市社会福祉協議会が居住支援法人として住宅確保要配慮者支援事業を実施していることを紹介。独居高齢者等を対象に、賃貸住宅契約時に求められる保証を熊本市社協が行い、入居時から退去時までの包括的かつ継続的な支援を行っていることを説明した。

「空き家を福祉施設等に活用している事例が全国でも増えている」と指摘。たとえば、高知県梼原町では町内の空き家を町が借り上げ、生活困窮者に対して住宅として貸し出していることや、石川県輪島市で社会福祉法人が市街地に点在する空き家を取得・改修し、交流施設や福祉施設として運営していることをあげた。

地域共生社会づくりであらゆる人を「ごちゃまぜ」にすることを訴える──唐澤教授

唐澤剛・慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特任教授(前・内閣官房まち・ひと・しごと創生本部地方創生統括官)は、「ごちゃまぜで進める地域包括ケア・地域共生社会」をテーマに講演した。

地域包括ケアの構築に向けては、「医療介護連携」と「生活支援とまちづくり」に分けて考えることを提案。
医療介護連携とは「地域における総合的なチーム医療介護」であり、これができれば利用者は安心してサービスが利用でき、医療難民・介護難民にならないことを指摘した。

医療介護連携が進まない理由としては、①急性期医療と回復期以降のスタッフ、医療と介護の両サイドの相互理解が進まない②チームのメンバーは別々の組織、団体の職員―の2点をあげ、「医療介護連携には顔の見える関係は必須。顔の見える関係ができれば医療介護連携はできたも同然」と述べた。

地域共生社会づくりについては、認知症の人も、障害のある人もない人も、高齢者も子供も若者も、あらゆる人たちを「ごちゃまぜ」にすることが重要であることを指摘。その上で、「自然に楽しく、その力を引き出し、元気と活力のある地域、あらゆる人に開かれた地域をつくっていく。開放されたごちゃまぜにより、私たちは新しい協力者に出会うことができる。その協力者との相互作用によって、化学反応が生まれ、新しい価値と新しい社会を創造する」と述べた。

 

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