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介護職員等特定処遇改善加算の配分ルールの柔軟化を提案(11月9日)

社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は9日、令和3年度介護報酬改定に向け、横断的事項である、⑴介護人材の確保・介護現場の革新、⑵感染症や災害への対応力強化、⑶制度の安定性・持続可能性の確保について議論を深めた。

⑴介護人材の確保・介護現場の革新について厚労省は、昨年10月に導入された介護職員等特定処遇改善加算の配分ルールをより柔軟にする見直しを提案した。分科会では賛否両論が出た。

⑵感染症や災害への対応力強化について、感染症や災害が発生した場合の業務継続計画(BCP)の策定を介護サービス事業者の運営基準に位置付けることを提案。概ね賛同が得られたが、複数の委員が計画策定にあたっての支援を要請した。

⑶制度の安定性・持続可能性の確保では、11月2日に開かれた財務省の財政制度等審議会財政制度分科会での検討状況を報告し、議論を求めた。

見守りセンサー等を活用した場合の夜勤職員配置の軽減を示す

介護人材の確保・介護現場の革新について厚労省は、11項目の論点を示した。介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止(論点②)や、介護職員等特定処遇改善加算の配分ルールの柔軟化(論点④)、見守りセンサー等を活用した場合の夜勤職員配置の軽減(論点⑦)などを提案した。

■介護人材の確保・介護現場の革新

論点①人員配置基準における両立支援への配慮

介護現場で、仕事と育児や介護との両立を進め、離職防止(定着促進)を図る観点から、次の取り扱いを提案した。

▽「常勤換算方法」の計算にあたり、育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合、現行では勤務が必要な32時間を下回る場合でも常勤換算での計算上も1と扱うことを可能とする。

▽「常勤」の計算にあたり、育児の短時間勤務制度に加え、介護の短時間勤務制度等を利用した場合に、30時間以上の勤務で常勤として扱うことを可能とする。

▽「常勤」での配置が、人員基準や報酬告示で求められる職種において、配置されている者が、産前産後休業や育児・介護休業等を利用した場合、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算で確保することを可能とする。

この場合において、常勤職員の割合を要件としているサービス提供体制強化加算Ⅱ等については、育児休業等を取得した職員がいる場合、当該職員についても、常勤職員の割合に含めることを可能とする。

複数の委員が賛意を示した。

論点②介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴ

介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴについて廃止することを提案した。上位区分の算定が進んでいることを踏まえた対応。一定の経過措置期間を設けるとしており、1年間とする方向だ。

厚労省は、介護職員処遇改善加算取得支援事業の取り組みによる成果を示した。また6月時点で加算Ⅳを算定しているのは0・2%(321事業所)、加算Ⅴの算定は0・3%(449事業所)であることを説明した。

複数の委員が賛意を示した。

連合の伊藤彰久委員は、加算Ⅳ・Ⅴの事業所が加算Ⅲ以上の取得ができない実態を把握したうえで、取得支援事業の強化を要請した。

論点③職場環境等要件

職場環境等要件に基づく取り組みについて、より実効性を確保する観点から、過去に行った取り組みではなく、当該年度における取り組みの実施を求めることを提案した。

職場環境等要件に定める取り組みについて、次のような点がより促進されるように見直すことを提案した。

▽職員の採用や定着支援に向けた取り組み

▽職員のキャリアアップに資する取り組み

▽両立支援に関する課題や腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取り組み

▽生産性向上につながる取り組み

▽仕事へのやりがいの醸成や、職場のコミュニケーションの円滑等による勤務継続を可能とする取り組み

厚労省は見直した場合、令和3年度から適用する方針だ。

複数の委員が賛意を示した。健保連の河本滋史委員は、職場環境等要件について、算定上満たすべき取り組みの数を増やすことの検討を改めて提案した。

論点④介護職員等特定処遇改善加算

昨年10月に導入した「介護職員等特定処遇改善加算」について各事業所でのより柔軟な配分を可能とする見直しを提案した。

具体的に、平均の賃金改善額が、①「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の2倍以上とすること、②「その他の職種」は「その他介護職員」の2分の1を上回らないこととする配分ルールを見直す。

経験・技能ある介護職員は、その他の介護職員の「2倍以上とすること」から「より高くすること」とする。その他の職種は、その他の介護職員の「2分の1を上回らないこと」から「より低くすること」とすることを示した。

同加算の算定率は徐々に増加しているが、令和2年6月分で65・5%に止まっている。

厚労省の提案には、賛否両論が出た。

全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は、「実施に向けて推進してほしい」と述べた。

一方、日本医師会の江澤和彦委員は、取得している事業所で配分を決めて支給が進んでいる現状を踏まえ、「事業者で今回の配分ルールを次年度に変えることは抵抗感が強いと予測される」と指摘し、慎重な対応を求めた。

論点⑤サービス提供体制強化加算

サービス提供体制強化加算について、介護福祉士割合の上昇や介護職員の勤続年数が伸びていることから、財政中立を念頭に、より介護福祉士割合が高い事業所や職員の勤続年数が長い事業所を高く評価する見直しを提案した。

さらに施設サービス・入所系サービスでは、サービスの質の向上につながる取り組みを実施していることを算定の要件とすることも示した。

この「サービスの質の向上につながる取り組み」としては具体的に▽ICTやロボットの活用▽介護助手等の元気高齢者の活躍▽CHASE等への参加▽多床室でのポータブルトイレの不使用─をあげた。

また訪問入浴介護や夜間対応型訪問介護において、他のサービスと同様、勤続年数の要件を新たに設けることを提案した。

他方、加算の要件をできるだけ簡素なものとするため、算定率の高い介護職員処遇改善加算で求められる項目と同趣旨の要件(研修実施・会議開催・健康診断)について廃止することも提案した。

複数の委員が賛意を示した。

日本看護協会の岡島さおり委員は、「財政中立」で行われることについて、小規模事業所や開設間もない事業所にとって不利にならないようする配慮を求めた。

全国老施協の小泉委員は、施設でのポータブルトイレの不使用をサービス提供体制強化加算の算定要件に取り入れることを批判。「基本的に反対」と述べた。他方、訪問入浴に勤続年数の要件を新設することには賛意を示した。

また慶応大学大学院教授の堀田總子委員は、当面の見直しとしては容認したが、「ストラクチャーに視点を置いた評価は、アウトカム、サービスの質を評価する具体的な指標ができるまでの当面の措置に位置付けられている。アウトカム評価が進んだら見直す必要がある」と述べた。

論点⑥ハラスメント対策

各介護サービス事業所で適切な就業環境維持(ハラスメント対策)を求めることを運営基準等で規定することを提案した。

複数の委員が賛意を示した。

全国老施協の小泉委員は、利用者・家族からのハラスメント対応が課題であることを強調し、「利用者・事業者双方で納得できる一定の程度の基準・方針を示してほしい」と求めた。

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