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令和3年度介護報酬改定のポイント[1]科学的介護の取り組みの推進-LIFEに関する加算と指定基準等の見直し

令和3年4月から介護報酬が改定されました。今回の改定は、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図るものです。 ここでは、主に6月末に当社(社会保険研究所)より発行した、『介護報酬の解釈[1]単位数表編』『介護報酬の解釈[2]指定基準編)』『介護報酬の解釈[3]QA・法令編』等の書籍から、テーマに沿った改定の概要をみていきます。

今回の改定において主な事項として掲げられた、「自立支援・重度化防止の取組の推進」では、介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みを推進し、介護サービスの質の向上を図る観点からの見直しが行われました。

科学的介護・LIFEとは

従来、医療分野においては、「根拠(エビデンス)に基づく医療」(Evidence Based Medicine:EBM)が実施されており、介護分野においても、介護関連データベースによる情報の収集・分析、現場へのフィードバックを通じて、科学的裏付けに基づく介護の普及・実践をはかる取り組みが進められてきました。

こうした流れをくみ、介護分野においても、VISIT(通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業)や、CHASE(高齢者の状態・ケアの内容等のデータを補完的に収集するシステム)といったデータベースの構築など、科学的介護の推進が図られてきました。

令和3年度から、これらのデータベースは一体的に運用されるようになり、より科学的介護の理解と浸透を図る観点から、名称も『科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence;LIFE(ライフ))』へと改称されました。

LIFEの活用が要件となる加算が設立

今回の改定では、このLIFEの活用等が要件となる加算が新設されました。

対象は、施設サービス等((地域密着型)介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院)、通所系サービス((地域密着型/認知症対応型)通所介護)、居住系サービス((地域密着型)特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護・(看護)小規模多機能型居宅介護)、リハビリテーション(訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)と多岐にわたり、具体的には以下の加算が対象となります。

LIFEの活用等が要件として含まれる加算一覧:「科学的介護情報システム(LIFE)」の活用等について(令和3年2月19日厚生労働省老健局老人保健課事務連絡)より

算定要件は加算によってさまざまですが、主に留意事項通知において記載されている、共通する要件は以下のとおりです。

・各加算に応じたLIFEへの情報提出
・PDCAサイクルによるサービスの質の向上

なお、LIFEへの情報提供を行うためには、LIFEのホームページからの利用申請が必要となっています。

(LIFEホームページはこちら

提出情報や提出頻度等については事務処理手順の通知に規定

では、加算の算定に必要となる情報の内容は、どういったものなのか。

こうした内容についてLIFEに関連する加算では、留意事項通知とは別に通知されています。

「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和3年3月16日老老発0316第4号)

この通知ではLIFEへの提出情報や提出頻度等について等が規定されており、たとえば科学的介護推進体制加算では、おおよそ以下のように示されています。

提出情報 同通知において示された様式「科学的介護推進に関する評価」に関する情報(評価日、日常生活自立度、ADL、口腔・栄養、認知症など)
提出頻度 ①既利用者については算定を開始しようとする月、②新規利用者についてはサービス利用を開始した月、③このほか少なくとも6月ごと、④サービスの利用を終了する月の、翌月10日までに提出

他の加算についても同様に、提出情報・提出頻度が定められています。

LIFEへの提出情報(対応する様式):「科学的介護情報システム(LIFE)」の活用等について(令和3年2月19日厚生労働省老健局老人保健課事務連絡)より

こうした情報を提出することで、利用者等単位または事業所・施設単位で解析された結果のフィードバックを受けることができ、このフィードバック情報を活用し、サービスの質の一層の向上につなげます。

なお、この通知では、科学的介護推進体制加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、栄養マネジメント強化加算においては猶予期間が設定されています。

LIFEに対応した介護記録システム等を導入するために時間を要する等の事情がある事業所・施設については、以下の期日までに提出することを可能としています。

科学的介護推進体制加算 ・令和3年4月から9月末日までに算定を開始する場合は、算定を開始使用とする月の6月後の月の10日

・令和3年10月から令和4年2月末日までに算定を開始する場合は、令和4年4月10日

褥瘡マネジメント加算
排せつ支援加算
栄養マネジメント強化加算
令和4年4月10日

運営基準の見直しによるLIFEを活用したPDCAサイクル推奨

介護報酬における加算の算定だけでなく、指定基準における運営基準においても、LIFEが関連する見直しが実施されています。

具体的には、サービスの提供等にあたっては、介護保険法に規定する「介護保険等関連情報」その他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行うよう努めなければならないと、すべてのサービスにおいて規定されました。

これは、基準省令の見直しとしてサービスごとの一般原則や基本方針に反映されており、PDCAサイクルの推進について努力義務が示されたものです。

さらに、こうした基準省令に対応する解釈通知の見直しにより、LIFEに情報を提供し、フィードバック情報を活用することが望まし旨が示されました。

この解釈通知の見直しは、居宅介護支援・介護予防支援を除くすべてのサービスにおいて、反映されています。

介護保険等関連情報に関する介護保険法施行規則の改正

従来、市町村等から国へ提出される、介護給付費や要介護認定等に関する情報を、介護保険等関連情報と呼んでいました(令和2年10月の介護保険法改正により、名称が規定されました)。

令和3年4月の介護保険法改正では、サービスを利用する要介護者等の心身の状況やサービス内容等が、この介護保険等関連情報に加わりました。

国が情報の提供を求めることのできる範囲も、介護サービス事業者や総合事業を行う者へも拡大しており、今回の見直しはこうした改正の上に実施されたものとなっています。

総合事業においてもLIFEに関する見直しを反映

地域支援事業における介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)では、旧介護予防訪問介護・通所介護に相当する訪問型サービス・通所型サービスについて、その単位数表・基準に係る告示が示されるなどの見直しが図られています(単位数表については、介護予防支援に相当する介護予防ケアマネジメントも含む)。

・[単位数表告示]介護保険法施行規則第140条の63の2第1項第一号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年3月15日厚生労働省告示第72号)
・[基準告示]介護保険法施行規則第140条の63の6第一号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年3月15日厚生労働省告示第71号)

この告示においても、ここまで見てきたようなLIFEの活用が要件となる加算・LIFEを活用したPDCAサイクルの推進等について、示されています。

おわりに

今回は、令和3年度介護報酬改定のポイントを、科学的介護情報システム(LIFE)の側面からみていきました。

単位数表・指定基準を横断する科学的介護の視点に係る見直しを踏まえ、より適切なサービスの提供、そして介護報酬の算定・請求への一助となれば幸いです。

なお、本記事は一部の表を除き、以下の書籍を元に作成しています。

特に、『介護報酬の解釈』については、事業所・施設の経営基盤を支える基本的な書籍として、ぜひご活用ください。

介護報酬の解釈[1]単位数表編(令和3年4月版) 介護報酬の解釈[2]指定基準編(令和3年4月版) 介護報酬の解釈[3]QA・法令編(令和3年4月版) 介護報酬改正点の解説(令和3年4月版) 介護保険制度改正点の解説(令和3年4月版)
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