年金時代

第29回 東京都社会保険労務士会

子どもたちを含め年金制度の周知や正しい理解に努める

会とセンターの連携を密にしサービスの向上を図る

東京都内には、大森・国分寺・新宿・立川・町田の5ヵ所に「街角の年金相談センター」が、足立・江戸川・江東・練馬・八王子・武蔵野の6ヵ所に「オフィス」が設置されている。11ヵ所は全国で最も多い。
「年2回、会の運営部とセンター長・オフィス長との意見交換会を実施するほか、8名の副会長が日常的に担当地域のセンターに出向き、連絡を取り合っています。たとえ小さな問題でもお互い顔を合わせて話すことで、迅速な対応が可能になります。運営部とセンターとのコミュニケーションを密にすることが、ひいては相談にいらっしゃる方々へのサービス向上につながると考えています」
東京都社会保険労務士会の前田昭博会長は、センターの運営方針をこう説明する。
現在、センターでの社労士相談員は60名。基本的に年金マスター研修の修了者だ。社労士が座る窓口は1センター当たり1〜2ブースであり、毎日20名ほどが相談に応じていることになる。都内28ヵ所の年金事務所でも、217名の社労士が業務委託契約をしている。センターとの兼任は半数となっている。
「対象人数が多く、事務局ですべてオペレーションすることは無理であり、相談員の確保やローテーションは、年金事務所も含め各支部にご苦労いただいております」(大江堅悟常務理事)
センターや年金事務所以外でも、会として毎週金曜と第2・第4土曜に「年金相談センター」を開設。予約制による面談を行っている。また、毎週月曜・水曜には「社労士110番」と銘打った無料電話相談で年金相談に応じている。
また、21年前からは、社労士会をはじめ弁護士会、司法書士会など開業10士業が協力し、10月末の土曜に新宿駅西口広場で「東京の10士業 暮らしと事業のよろず相談会」を実施。社労士会は社会保険や労働関係の相談を担当している。

独自の「研修大綱」を策定し3段階での研修を実施

センターやオフィスでは毎月、内部研修を実施している。
「年金事務所の相談員に対するスキルアップ研修については、できるだけ多くのメニューから希望するテーマが受けられるよう、東京ならではの工夫として年8回行っています。そのうち最低4回は受講義務を課し、それ以上は何回でも出席できるしくみにしています」(大江常務理事)
加えて、前田会長は、
「やはり全体的に相談員の数が足りません。人材の養成と確保は常に課題です」
と話す。
今年度から試験的に開始したのが、武蔵野オフィスを使ってのOJT研修だ。全国社会保険労務士会連合会のカリキュラムに沿って行い、3名の修了者が誕生した。今後も拡大していきたいという。
会ではもともと人事労務・年金などの専門分野別研修等を軸とする大綱を構築するなどして、年金にも強い社労士の育成に取り組んでいる。初級・中級・上級の3段階があり、初級は12時間、中級は30時間、上級は22時間の研修を行う。1回の講義は2時間程度で、センターやオフィスに行っている相談員に限らず、参加は自由だ。

小学生を対象に出前授業や「夏休み年金教室」を開催

会として力を入れているのは社会貢献事業だ。学校での労働や社会保障の出前授業は、平成20年から実施。大きな特徴は中学・高校・大学だけでなく、小学校高学年を対象にした授業も行っている点だ。平成27年度は小学校29校、中学校26校、高校・専門学校・大学37校で実施した。会として社会貢献委員会学校教育部会が担当している。
講師は登録制で、2年ごとに更新し、途中で研修も行う。教え方に関する研修も年1回実施する。高校生向けには会独自でテキストを作成し、平成28年11月に改訂した。小学・中学用のテキストは、講師が独自に作成するケースが多い。「こういった内容がいい」など、学校の先生からのアドバイスもあるという。
「高校・大学は働くことを含めての授業ですが、小学・中学は年金が中心です。特に小学生には、『おじいちゃん、おばあちゃんからもらうお小遣いの一部は、年金なんだよ』というようにわかりやすい教え方を工夫しています」(前田会長)
また、2年前からは小学生の親子を対象にした「夏休みこども年金教室」を主催している。ワークショップ形式で、年金制度の基本的なしくみや世代間扶養の考え方を寸劇なども取り入れて説明。子どもたちに夏休みの自由研究のテーマにしてもらうこともねらいの1つだ。
「現在は千代田年金事務所の協力を得て1ヵ所での開催ですが、いずれは各年金事務所単位で実施できればと考えています」(前田会長)
さらに、28年8月からはがん患者就労支援部会を立ち上げ、社会貢献活動の柱にしようと取り組んでいる最中だ。
「勤務等部会の会員社労士には、地域型年金委員の委嘱もお願いしています。社労士は年金や労働に関する唯一の国家資格者です。社労士の使命は、最終的には国民が国の制度を活用してしっかり生活していくことをサポートすることです。退職後の生活設計の中心が年金ですから、制度の周知や正しい理解に取り組んでいきたいと思います」
前田会長はこう締めくくった。

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