年金時代

平成26年財政検証結果の見方などについて解説【2014年8月号「解説」掲載】

平成26年財政検証結果が公表されたことを受け、一般社団法人年金綜合研究所主催のシンポジウムにおける当時厚労省年金局長だった香取照幸氏のコメントから制度の課題や改正の方向性を解説した記事。平成26年の財政検証によって年金制度の持続可能性や一定の給付水準を確保するためには、一定の経済成長とそれを支える労働力が必要であることを伝えている。

平成26年財政検証結果の見方

諸前提による財政検証結果を政策や生活設計の判断材料に

今年は年金制度にとって節目となる財政検証の年だ。6月3日に厚生労働省は平成26年財政検証結果を公表した。制度改正に向けた本格的な議論が始まった。こうしたなか、7月2日には一般社団法人年金綜合研究所が26年財政検証をテーマに、厚労省の香取照幸年金局長を招き、シンポジウムを開催。そこから見えてきた26年財政検証結果の見方、そして制度の課題と改正の方向性を考えてみたい。

検証結果は諸前提の変化から年金制度の姿を示したもの

平成16年改正により、年金制度には財政の長期的な持続可能性を確保するしくみが導入された。①平成29年度以降の保険料水準の固定②基礎年金国庫負担の2分の1への引き上げ③積立金の活用④財源の範囲内で給付水準を自動調整するマクロ経済スライドの導入――による年金財政フレームだ。これにより、調達される保険料、国庫負担、積立金の財源の範囲内で賄うことができるように、マクロ経済スライドで自動的に給付水準を調整して、年金財政の長期的な均衡を図っていく。

16年改正前は、人口、雇用・就業状況、賃金・物価・金利などの年金制度を取り巻く社会経済情勢の変化を踏まえ、将来の年金制度の加入者数・受給者数、年金給付費の推計を行う。それに基づき給付と負担が均衡するよう将来の保険料引き上げ計画を策定する。これが財政再計算と言われた作業だ。

しかし、16年改正後は、決まった負担(財源)の範囲内で給付は自動的に調整される。年金制度に影響を与える社会経済情勢の変動に対して、年金制度の財政の健全性を定期的にチェックすることで、制度の持続可能性を担保していく。これを財政検証と言う。

だから、26年財政検証結果について、「年金制度は人口や労働力、経済成長など諸前提がどう変わるかで給付水準も変わる。そこで、どういった前提をおくと、年金の給付水準がどうなるかを示した」と言う香取局長の説明に尽きるわけだ。

財政再計算は、年金財政に影響を与える諸前提のこれまでの変化、そして今後の予想も踏まえ、給付と負担を均衡させる制度改正を行っていくための将来見通しだった。だから、いくつかの見通しが示されるなか、主要の見通しに基づき、制度改正案が練られていった。

今回の財政検証結果では労働市場への参加が進む5ケース(ケースA~E)と参加が進まない3ケース(ケースF~H)の8ケースが示された。

また、今回は、社会保障・税一体改革により、基礎年金国庫負担割合2分の1への引き上げに必要な財源手当てがなされ、年金の特例水準の解消が図られマクロ経済スライドが発動されるなど、16年改正の財政フレームがフル稼働できることを前提に、初めて行った財政検証だ。年金制度の将来の確定された姿に基づき、諸前提の変化により所得代替率がどう変わるかが確認できる財政検証なのだ。

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