年金時代

年金部会が公的年金の課題を議論・前編【2014年12月号「特集」掲載】

平成26年財政検証結果を受けた年金部会が年金制度の課題を整理したことを取り上げた記事。適用拡大や第1号被保険者の産休期間、年金額の改定などについて検討を進めた。年金部会に示された論点と議論から、年金制度がめざす姿を探る内容となっている。

適用拡大の前進に向けた対応策や
年金額の改定ルールを検討

社会保障審議会年金部会(部会長=神野直彦・東京大学名誉教授)は8月20日、平成26年財政検証結果を受けて、年金制度の課題を「年金制度を支える経済社会の発展」、「持続可能性とセーフティネット機能の強化」の観点から整理。9月18日より、適用拡大を手始めに課題ごとの検討を精力的に進め、11月4日までにひととおりの議論を終えた。年金部会に示された論点と議論から、これからの年金制度がめざす姿を探ってみる。

被用者保険の適用拡大

施行3年後を見据え対応策の議論を開始

平成28年10月に短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大が実施されるが、その後の適用拡大の進め方が論点だ。年金機能強化法では31年9月までに検討し、必要な措置を講じると明記されている。現時点で適用拡大をさらに進めるための方策も論点となっている。厚労省は、28年10月実施の適用拡大の要件の考え方などを説明した。

①週所定労働時間20時間以上

この要件は労働者の被用者性を見るもので、雇用保険法の適用除外規定が参考になっている。30時間未満で働く国民年金の第1号、3号被保険者のうち労働時間が週20時間以上の人は半数を超えるが、これは非正規労働者も雇用保険に加入する要件の一つ。厚労省は、「他の要件がなければ、かなり広い範囲をカバーできる」と見込む。

②賃金月額8.8万円以上(年収106万円以上)

短時間労働者の収入は年収90万~100万円が多く、106万円以上とする要件ではこうした人をカバーできない。年収を要件内におさえる就業調整の実態も指摘されるが、適用となれば事業主にも負担が生じる。この点について厚労省は、「就業調整は事業主と労働者双方に保険料の回避行動が作用してできているとの理解が必要ではないか。この問題を解決しようとすれば被用者保険の適用の基準を下げ、どのような働き方でも同じ負担となるような処理が必要」とした(図表1参照)。たとえば、26年度の地域別最低賃金の最低額は677円で、その場合の賃金月額は約5.8万円*1となる。最低賃金で働く人も社会保険に適用するには、要件をこのラインまで下げる必要がある。

賃金月額8.8万円の場合、労使合わせた厚生年金保険料は国民年金保険料に相当する1.5万円となる。当初の案は月額7.8万円だったが、自公民の3党協議で修正された。その背景には、「国年保険料より低い負担で基礎年金と厚生年金が受けられるのは不公平」との指摘があった。

基礎年金には各制度が保険料財源から被保険者数に応じて負担する「基礎年金拠出金」が充てられる。国民年金保険料は定額だが厚生年金保険料は報酬に応じて負担する。このため厚生年金保険の被保険者間では再分配機能が働くしくみとなっている。厚労省は、「こうした構造の下では、国民年金との逆転があっても不思議ではないという考え方も成り立つのではないか」と説明している。

*1 最低額677円×20時間(週)×52週÷12月=月額5万8,673円
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