年金時代

年金制度改革の方向性【2016年1月号「新春特集Ⅰ」掲載】

年金額改定のあり方

調整率の未反映分を次年度以降に繰り越しへ

年金額の改定で、賃金や物価の伸びが小さくマクロ経済スライドの調整率を反映する前年度の年金額(名目年金額)を下回る場合は、名目年金額が維持される。賃金や物価の伸びがマイナスの場合は、その分は反映されるものの調整率は反映されない。「名目下限措置」と呼ばれ、今後の経済情勢によって調整率が十分に反映されなければ、調整期間の長期化につながる要因となる。このため議論の整理では、「マクロ経済スライドによる調整が極力先送りされないよう工夫することが重要」と指摘していた。

厚労省は、名目下限措置を維持しつつ、反映されなかった調整率を翌年度以降に繰り越し、賃金や物価が十分に上昇したときに、その年度の調整率に加えて反映する案を示した(図表4参照)。その年度の調整率に繰り越された分すべてを加えると名目下限を下回る場合は、下回る分を翌年度以降に繰り越すことを検討している。

マクロ経済スライドによる給付水準調整は、最終的な負担の範囲内で財政が安定する見通しが立つまで行われる。調整期間が長期化すれば将来の所得代替率が大きく低下する。厚労省もこうした対応策について「将来世代の給付水準の確保のために行いたい」と理解を求めている。

議論では、こうしたしくみに賛同する意見が多く出た。また、調整率の未反映分を繰り越す措置について原佳奈子委員(株式会社TIMコンサルティング取締役)は、「現在の受給者への影響を配慮しながら将来世代への影響も極力先送りしないというしくみだ。現実的な一歩として評価できる」と述べた。

なお、厚労省は名目下限を下回ってでも毎年度、調整率をすべて反映する措置(フル発動)も検討したという。だが、「現在の受給世代とのバランスも大事。先送りを極力回避することを前提に、下げるときは名目下限を守ってはどうか」との指摘を受け、前述の案を検討していることを明らかにした。

年金時代