年金時代

香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使

第64回 世界の民主主義は後退しているのか⑶【最終回】

本稿は外務省とも在アゼルバイジャン日本国大使館とも一切関係がありません。全て筆者個人の意見を筆者個人の責任で書いているものです。内容についてのご意見・照会等は全て編集部経由で筆者個人にお寄せ下さい。どうぞよろしくお願いします。

みなさんこんにちは。
今回は「民主主義インデックス」の3回目。最終回です。

日本の民主主義はどう評価されているか

さて。前回の連載で、日本の民主主義は「欠陥のある民主主義」に分類されている、というお話をしました。
日本のスコアがどうなっているのか、どのスコアが低いことが全体の評価に影響しているのか、細かく見てみたいと思います。

まず、主要欧米諸国(アメリカを除きすべて「完全な民主主義」です)と日本のスコアを、個別カテゴリーごとに比較してみましょう。

Overall Score Electoral process and pluralism Functioning of government Political participation Political culture Civil liberties
Norway 9.87 10.00 9.64 10.00 10.00 9.71
Iceland 9.58 10.00 9.29 8.89 10.00 9.71
Sweden 9.39 9.58 9.64 8.33 10.00 9.41
New Zealand 9.26 10.00 9.29 8.89 8.13 10.00
Finland 9.25 10.00 8.93 8.89 8.75 9.71
Ireland 9.24 10.00 7.86 8.33 10.00 10.00
Denmark 9.22 10.00 9.29 8.33 9.38 9.12
Canada 9.22 9.58 9.64 7.78 9.38 9.71
Australia 9.09 10.00 8.93 7.78 8.75 10.00
Switzerland 9.03 9.58 9.29 7.78 9.38 9.12
Netherlands 9.01 9.58 9.29 8.33 8.75 9.12
Germany 8.68 9.58 8.57 8.33 7.50 9.41
United Kingdom 8.52 9.58 7.50 8.89 7.50 9.12
Austria 8.29 9.58 7.86 8.33 6.88 8.82
Spain 8.29 9.58 7.14 7.78 8.13 8.82
France 8.12 9.58 7.86 7.78 6.88 8.53
Portugal 8.03 9.58 7.86 6.11 7.50 9.12
South Korea 8.00 9.17 7.86 7.22 7.50 8.24
Japan 7.99 8.75 8.21 6.67 7.50 8.82
United States of America 7.96 9.17 7.14 7.78 7.50 8.24

一見して明らかなように、日本は「政治参加」「政治文化」のスコアが低く、特に「政治参加」は6点台と極めて低くて(このスコアが6点台なのは欧米諸国ではポルトガルだけです)、このスコアが全体の足を引っ張っていることが分かります。

「政治参加」の指標は、前々回ご紹介したとおり、以下の9項目です。
27.国政選挙への有権者の参加の程度(2000年以降の議会選挙の平均投票率が70%以上であれば1.0)
28.民族的、宗教的その他のマイノリティの政治参加は保障されているか
29.国会における女性議員の割合(20%を超える場合1.0)
30.政党および政治的非政府組織への市民の参加(人口の7%を超える場合1.0。ただし「参加の強制」がある場合は0.0)
31.市民の政治への関与・関心の度合(政治に「非常に」または「ある程度」興味がある人の割合が60%を超える場合は1.0)
32.合法的なデモへの市民の参加(合法的なデモに参加した、または参加を検討する人の割合が40%を超える場合1.0)
33.成人のリテラシー(90%を超える場合は1.0)
34.政治ニュースに関心を示し、政治情報をフォローする程度(毎日ニュースメディア(印刷物、テレビ、ラジオ等)で政治をフォローする人口の割合が50%を超える場合に1.0)
35.当局による政治参加促進のための努力の程度(参加が強制される場合は0.0)。

「政治参加」に関する日本のスコアの低さを、項目ごとに考えてみましょう。

まず投票率。日本のみならず、国政選挙の投票率は世界的に低下傾向にあるのは事実で、OECD諸国平均で1990年代の75.3%から2010年代の67.5%へと8%近く低下しています。しかしながらその中でも日本の投票率(56%)の低さは際立っています。

マイノリティの政治参加は保障されていますが、日本の国会議員に占める女性議員比率はわずか11%です。
政党活動等に参加している市民は極めて少数、デモに参加したことのある市民も(最近は労働組合もほとんどデモをしませんし)おそらく極めて少数。
世論調査等を見ても、政治に関する関心も決して高いとは言えません。

「市民的自由」や「選挙プロセス」のスコアが8点台後半であることを考え合わせると、日本の民主主義の抱える課題が、一つが「女性の政治参加」、もう一つが人々の政治に対する行動・意識にあることが窺えます。

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香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使
東京都出身。1980年東京大学法学部卒業後、厚生省入省。在フランスOECD事務局研究員、年金局年金課年金制度調整専門官、埼玉県生活福祉部老人福祉課長、厚生省大臣官房政策課企画官(高齢者介護対策本部事務局次長)、厚生労働省政策統括官(社会保障担当)・内閣官房内閣審議官(社会保障・税一体改革担当)併任、年金局長、雇用均等・児童家庭局長などを経て2016年6月辞職。2017年3月より現職。著書に『教養としての社会保障』(東洋経済新報社)
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