年金時代

坂野 祐輔(ばんの ゆうすけ)/特定社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

第3回 社労士の役割①~法令遵守の観点から~

これより5回の予定で、健康経営を進めるうえでの社労士の役割についてご紹介します。初回は、特定社会保険労務士で、健康経営エキスパートアドバイザーでもある坂野祐輔さんに「法令遵守の観点から」をテーマにご解説いただきます。

また今回より、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、健康経営の観点から実践できる取り組みについて、産業医の今井鉄平さんに情報発信をしていただくことになりました。文末に掲載しましたコラムをご活用ください。

*「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

健康経営と社会保険労務士

①労働法令や労務管理の見地からの取り組み

社会保険労務士は、労働法令及び社会保険法令の知識や顧問先企業等の労務管理における助言・指導の経験から、労働者を雇用する多くの企業から必要とされる存在となっています。特に最近では、「働き方改革」への対応で苦慮する企業に対し、業種、職種やその企業の様々な背景、同業他社の動向、従業員の気持ちなどあらゆる側面から、その企業にとって実現可能でベターな施策の提案を行い、大変喜ばれているという話を耳にします。こういった対応は、社労士法第1条に規定された「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的」とする社労士だからこそ、できるものであると思います。

そして、今、企業における新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う労務管理への対応で、社労士の活動がさらに注目されています。感染症予防対策は、健康経営における施策の一つであり、医学的知識が必要なことはもちろんですが、単に、一般の人々が日常生活において感染症の予防を図ることとは大きく異なり、多くの従業員が働く現場における対応や、事業の継続といった、特殊な事情のもとで対策を講じなければならず、そこには、やはり、労働法令や労務管理の見地が必要となります。

②社労士は専門家同士をまとめるハブ

これは、感染症予防対策におけることだけではありません。

健康経営優良法人の認定基準にもある「ワークライフバランスの推進」、「病気の治療と仕事の両立支援」、「メンタルヘルス対策」といった健康経営の施策にも、労働法令や労務管理の見地が必要となってきます。そうなると、健康経営における各施策については、それぞれ、産業医や保健師等の産業保健スタッフ、管理栄養士や健康運動指導士、中小企業診断士といった各分野のスペシャリストが関わるとともに、そのベースとして社労士が関与していかなければ、誤った施策となりかねません。

このような観点でいうと、社労士は、健康経営にとって必要不可欠な存在であり、かつ、社労士がすべての専門家のハブとなり、その全体を取りまとめるトータルプロデューサー的な役割となることが求められているのではないかと思います(図表1参照)。社労士業界における新たな職域として期待される健康経営。果たして、社労士が健康経営に関わることは、偶然なのでしょうか?

次ページ:健康経営と法令遵守について

ここから先はログインしてご覧ください。

坂野 祐輔(ばんの ゆうすけ)/特定社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
ばんの事務所代表。法科大学院で身につけた法律全般の知識を活かし、わかりやすい説明と、理論と実務のバランスを図ったアドバイスを心がけ、労働法令に関する相談対応や就業規則の作成・変更を得意とする。行政関連団体や商工団体を中心に年間多数のセミナー講師を務める。健康経営においては、多数の企業に対し支援を行い、健康経営優良法人や健康優良企業の認定実績を増やしている。東京都社会保険労務士会:働き方改革・健康経営特別委員会健康経営推進部会委員。
年金時代