年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所

第2回 あえて問う「企業年金って何?」ーその2

~実施主体でみる公的年金・企業年金・個人年金~

企業年金とその他の年金制度の違いとは、一体何でしょうか? 今回は「実施主体」、すなわち「だれが制度を運営しているか」という視点から論じます。

国家・政府が実施するから公的年金……のはず!?

「公的年金はどこが運営しているのでしょうか?」──と聞かれたら、さすがに専門家でなくても、「そんなの国に決まっているじゃないか!」とだれしも答えると思います。全国民が加入する国民年金(基礎年金)およびサラリーマン等が加入する厚生年金保険は、厚生労働省が法令を所管しており、実際の運営等は日本年金機構などに委託されています。

一方、私的年金(企業年金・個人年金)は、広義には「公的年金以外の年金」と定義されることから、実施主体は国家・政府以外の企業・団体というイメージがあります。しかし、わが国における最初の個人年金である郵便年金は、旧逓信省(後に郵政省に改組)による国営事業として営まれてきました。現在でも、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)は、制度上は私的年金に位置付けられているものの、法令上は国民年金基金あるいは国民年金基金連合会という準公的な団体が運営主体となっています。このように、実施主体が国(公的機関含む)だからといって、それが必ずしも公的年金であるとは限りません。

さらに、個人年金保険の大半が、相互会社形態の生命保険会社や協同組合(JA・全労済など)などの非営利法人により提供されていることを考慮すると、実施主体が公的機関か民間団体か、あるいは営利目的か非営利目的かは、公的年金と私的年金を区別する上ではどうやらあまり重要な要素ではないようです。

では、企業年金はだれが実施しているの?

企業年金は、その名が示す通り「企業」、それも民間企業が実施するのが一般的とされています。しかし、民間企業でない団体(例:非営利団体、私立大学等)が実施する場合もありますし、厚生年金基金や企業年金基金のように「基金」という別法人を設立して実施する場合もあります。一方で、保険会社が取り扱う団体年金保険の一種に「拠出型企業年金保険」というものがありますが、これは実質的には個人年金保険を職域で加入募集するものであり、企業年金には分類されません。

このことから、企業年金を「実施する」とは、実施主体が企業か否かという形式面ではなく、企業が従業員のために掛金を拠出しているか、あるいは制度運営に関与しているかといった実質面がむしろ重要です。

今回のまとめ

企業年金では、企業(制度運営者)と従業員(加入者・受給者)との関係性が重要であるがゆえに、「労使合意」が制度の根幹を成す。
谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
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