年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所

第3回 あえて問う「企業年金って何?」ーその3

~企業年金は強制加入? それとも任意加入?~

企業年金とその他の年金制度の違いとは、一体何でしょうか? 今回は、年金制度への加入が「強制」か「任意」かという視点で論じます。

公的年金だから強制加入? 強制加入だから公的年金?

「20歳(はたち)になったら国民年金」というキャッチフレーズに代表されるとおり、わが国では、原則として20歳以上の国民は公的年金(国民年金・厚生年金保険)への加入が義務づけられています。国民年金に加入すると保険料の支払いを求められますが、低収入や失業等により保険料納付が経済的に困難な場合は、保険料の免除や納付猶予を受けることができます。保険料の免除・納付猶予が制度上認められているのは、まさに国民年金が「強制加入」であるがゆえの措置だと言えます。一方、厚生年金保険では、企業(法人または常用雇用者数5名以上の個人事業所)は強制適用となるほか、当該企業に常時勤務する従業員も被保険者となるなど、労使双方が強制加入の対象となっています。

なお、公的年金では、強制加入の対象者が制度に加入しないことは認められませんが、逆に、強制加入の対象ではない者が申請により「任意加入」することは広く門戸を開けています。

企業年金の場合……企業は任意だけど従業員は強制?

一方、私的年金(企業年金・個人年金)は、海外を見渡しても「任意加入」であることが一般的です。なかには、オーストラリアのように国が企業に対し企業年金の支給を義務づけている国や、オランダのように労使合意で企業年金への加入を義務づけている国もありますが、あくまで少数派です。

わが国でも、企業が企業年金を実施するかどうかは、あくまで企業の任意です。ただし、確定給付企業年金や確定拠出年金のように税制優遇を伴う法定上の企業年金制度を実施するためには、厚生年金保険の適用事業所である必要があります。つまり、公的年金に加入せずに企業年金だけ実施することは不可能だということです。

一方、企業年金を実施している企業に勤めている従業員は、原則として当該企業年金制度の加入者になります。ただし、加入要件は年金規約等で定めることが可能であり、たとえば、一定の職種の者のみを加入対象(または対象外)とする取り扱いも認められています。制度によっては、加入の可否を従業員が選択できる企業もあるようです。企業年金の場合、全ての従業員を加入対象とする場合であっても、強制加入というよりはむしろ「全員加入制」と称するほうが適切です。

 

今回のまとめ

企業年金では「制度を実施するか」「どの従業員を加入対象とするか」は、企業の裁量に委ねられている。企業が制度を導入しないことには、従業員は企業年金の加入者にはなれないというわけだ。
谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
年金時代