年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員

第4回 あえて問う「企業年金って何?」─その4

~「財源」にみる公的年金・企業年金・個人年金~

企業年金とその他の年金制度の違いとは、一体何でしょうか? 今回は「財源」、すなわち年金の給付原資である掛金・保険料の性質に着目して論じます。

税金(国庫負担)は公的年金だけの特権?

年金制度では、将来の年金給付のための財源は、「掛金」あるいは「保険料」でまかなうのが主体となります。厳密には、積立方式の制度では、積み立てた資産から生じる「運用収益」も年金給付の財源としますが、ともあれ、掛金・保険料が主たる財源であることには変わりはありません。

しかし、公的年金の場合は、保険料だけでなく税金(国庫負担)も財源として投入されることが一般的です。わが国でも、全国民に共通する基礎年金には、給付費の1/2相当分(2009年度以降)の国庫負担が投入されていますし、公的年金の給付や保険料徴収など制度運営に係る事務費も、基本的には税金でまかなわれています。

一方、私的年金(企業年金・個人年金)に税金が直接投入されることは、極めて稀です。ドイツでは、適格要件を満たした個人年金商品に対して政府が補助金を助成する「リースター年金」が近年注目を集めていますが、注目されているということはそれだけ珍しいからでもあります。じつはわが国の厚生年金基金でも、免除保険料率以上の代行給付に対しては「政府負担金」という名の国庫負担が行われています。

税制優遇は形を変えた「補助金」

しかし、私的年金は、表向きこそ税金が直接には投入されていないものの、「掛金の所得控除」や「運用益の非課税措置」など、さまざまな税制優遇措置が講じられているのが一般的です。税制上優遇されるということは、本来負担すべき税金がそのぶん軽減されることを意味します。これは、納税者の立場からすればうれしい話ですが、国家財政の立場からみるとそのぶん税収が減少することとなるため、補助金の支出も税制優遇も財政上の効果はどちらも大差ありません。このように、税制優遇措置による「隠れた補助金」のことを、財政学の世界では「租税支出」(tax expenditures)と呼んでいます。

わが国の企業年金は、さまざまな税制優遇措置が講じられている一方で、制度設計や財政運営のための規制も設けられています。これは、政府が企業年金に対し「老後の所得保障」という政策の実現を課しているからであり、税制優遇を受けるということは、それだけ大きな責務を負うということの裏返しでもあります。

今回のまとめ

企業年金とはいえ、税制上の優遇措置を受けるからには、一定の公的規制に服さざるをえない。税制優遇と規制はいわばトレードオフの関係にある。
谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
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