年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所

第5回 あえて問う「企業年金って何?」─その5

~「財政方式」にみる公的年金・企業年金・個人年金~

企業年金とその他の年金制度の違いとは、一体何でしょうか? 今回は「財政方式」、とりわけ賦課方式と積立方式の違いから論じます。

賦課方式は「世代間の助け合い」ってだれが言った!?

財政方式とは、教科書的に解説すると「年金制度から支払われる給付を賄うために必要な資金の調達方法(計画)」のことです。とりわけ、公的年金の政策議論では、「賦課方式」と「積立方式」の2つが対立的な概念としてよく取り上げられます。

賦課方式は、年金給付に必要な原資をその時々の現役世代が賄うという「世代間扶養」の考え方とともに説明されることが多いですが、この説明は一面的な見方にすぎません。年金数理における賦課方式とは、給付が発生する都度、当該給付を掛金のみで賄うしくみのことを言います。掛金のみで給付を賄う、すなわち「積立金を保有せず、運用収益を一切当てにしない」というのが賦課方式の本質であり、そのため、掛金水準はあらゆる財政方式のなかで最も高くなります。

一方、積立方式とは、掛金と運用収益の双方(元利合計)で給付原資を賄うしくみです。一口に積立方式と言っても、積み立てるタイミング(加入時か、加入中か、退職時か、etc.)によってさまざまな種類が存在しますが、わが国の確定給付企業年金および厚生年金基金では、平準的な掛金を定期的に拠出する「平準積立方式」を用いることとされています。

賦課方式と積立方式の違いを数式で表すと、以下の通りとなります。つまり、給付設計が同一ならば、どの財政方式を選ぼうとも総コスト(掛金+運用収益)は変わらないことを意味します。

・賦課方式: 給付=掛金

・積立方式: 給付=掛金+運用収益

「公的年金=賦課方式」「私的年金=積立方式」とは限らない!?

よく「賦課方式を採用できるのは、保険料を強制徴収できる公的年金だけ」「よって私的年金(企業年金・個人年金)では積立方式しか採用できない」と言われますが、じつは見方としては一面的です。

そもそも企業年金は、従業員に対する「後払い賃金」という性質を有しています。黎明期の企業年金では、退職者への年金の支払いは、従業員への賃金・賞与の支払いと同じく、企業の日々の資金繰りのなかから「あるとき払い」(pay-as-you-go)あるいは「当座支出」(current disbursement)で賄われていました。これはまさに賦課方式そのものであり、わが国でも、税制優遇のない自社年金(非適格年金)において導入事例があります。

現代の企業年金では、費用負担の平準化や、企業の事業資金との分別管理を図る観点から、(事前)積立方式が広く採用されていますが、年金給付のための資金的裏付け(賦課方式なら掛金徴収能力、積立方式なら年金資産)さえ確かならば、どの財政方式を選ぼうとも財政運営上は特段問題ありません。

今回のまとめ

サラリーマンの賃金・賞与は、日々の売上や資金繰りのなかから賄われるという点において、じつは賦課方式(当座支出・あるとき払い)の最たるものである!?
谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
年金時代