年金時代

香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使

第10回(番外編)社会保障・税一体改革 財政と社会保障―消費税の使途と社会保障財源

みなさんこんにちは。9月も後半にさしかかり、ここアゼルバイジャンもようやく暑い夏が過ぎて朝晩は大分涼しくなってきました。この原稿が出る頃はきっとずいぶん秋らしくなっていることと思います。さて。先日厚生労働省の後輩から、「みんなで『教養としての社会保障』の読会をしているんですが、社会保障・税一体改革のことがあまり詳しく書いてありません。大事な話だと思うのですが、当時の経緯とか消費税と社会保障財政の関係とか、詳しく教えて下さい。」というメールが来ました。実は同じようなことを何人かの知人から指摘されていたので、ちょうどいい機会なので、今回は連載の順番を入れ替えて、先に「財政と社会保障―消費税の使途と社会保障財源」のお話をしようと思います。なので、本稿は外務省ともアゼルバイジャン大使館とも一切関係がありません。言うまでもないと思いますが(笑)。

社会保障・税一体改革は与野党3党の超党派で実現

まず、総論のお話から。

拙著の中でも書きましたが、財政健全化と経済成長、そして社会保障の機能強化は三位一体で考えることが必要です。別々に考えることはできませんし、どれを欠いても持続可能な日本社会を構築することは困難です。

社会保障・税一体改革は、政権交代前の旧自公政権(福田政権・麻生政権)時代に着手されました。

2008年にとりまとめられた「社会保障国民会議報告」・「中期プログラム(「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム」)」で示された大きな道筋を民主党政権が引き継ぎ、野田政権の下で具体案が検討され、消費税法改正法案、子ども子育て新制度関連3法案、年金改革法案など関連8法案からなる「社会保障・税一体改革関連法案」が国会に提出されました。

一体改革関連法案は、衆議院129時間、参議院86時間、計210時間超という、新日米安保条約審議に次ぐ戦後2番目の長さとなる膨大な審議時間をかけ、最後に当時の与野党(民主・自民・公明)3党の超党派合意によって成立し、実行された改革です。

「社会保障の機能強化を通じた安心と成長の同時実現」と「そのための使途を明示した財源確保方策=税制改革」こそが日本復活の第一歩、というのが、最終的に合意に至った当時の与野党超党派の共通認識でした。

消費税率引き上げという国民に負担を求める改革です。通常であれば野党は反対しますし、歴史をひもといてみても増税を正面から掲げて総選挙を勝ち抜いた政権はまずありません。誰が政権を担当してもやらなければならない課題、政争の具にしてはいけない課題だ、という共通理解ができたからこその与野党合意だったと思います。

麻生政権の下で財務・金融・経済財政担当の三大臣を併任され、一体改革の基本的枠組みを構築された与謝野馨先生が、三顧の礼で民主党政権に乞われ、社会保障・税一体改革担当大臣を引き受けられて、文字通り命をかけて自ら先頭に立って改革を実現されたことを、今も忘れることができません。

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香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使
東京都出身。1980年東京大学法学部卒業後、厚生省入省。年金局年金課課長補佐、埼玉県生活福祉部老人福祉課長、厚生省大臣官房政策課企画官(高齢者介護対策本部事務局次長)、厚生労働省政策統括官(社会保障担当)・内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)併任、年金局長、雇用均等・児童家庭局長などを経て2016年6月辞職。2017年3月より現職。
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