年金時代

香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使

第11回 どっちが先進国? アゼルバイジャンのIT事情【中編】「電子政府」

電子政府の中核を担うASANセンター

この国には、「ASANセンター」というワンストップ行政サービスセンターがあります。

ASANとはAzerbaijani Service and Assignment Networkの略ですが、同時にアゼルバイジャン語で「簡単な-easy」という意味でもあります。

ASANセンターは、2012年7月の大統領令によって設立された機関で、大統領府直属の行政機関です。現在全国に11か所、バクー市内には5か所設置され、近々あと4か所の地方都市に設置されることになっています。

このセンターでは、出生・死亡、婚姻・離婚、養子縁組、氏名変更、IDカード発行、パスポート発行、運転免許証発行・更新、居住登録、外国人登録、就学、就園、各種福祉サービス、年金受給手続、法人登録、不動産登記、各種許認可・届出手続、そして個人・法人の納税、交通反則金納付などなど、個人・法人が行うおよそ一切の行政関係手続(全部で240以上あるそうです)が、全てワンストップで(本当にワンストップで)行うことができます。

まさにアゼルバイジャンの「電子政府」の中核を担っている機関です。

同時に、ASANセンターでは、公的な手続だけでなく、民間のサービス、例えば銀行預金や振込、鉄道や航空券の予約など、およそ個人情報が必要となる様々なサービスも同じように利用することができます。

実はこのASANセンター、性格が素直でない(?)私はかなり疑っていました。

「大統領の強力なリーダーシップで設立した行政ワンストップセンターです」

「国連の公共サービス賞も受賞した、アゼルバイジャンが誇る最先端のIT行政機関です」

そういう話を聞けば聞くほど、発展途上国によくある政府の「飾り窓」で、実はそんなに機能していないんじゃないか、申し訳ないけどアゼルバイジャンでそんなことできないだろう、と半信半疑でした。

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香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使
東京都出身。1980年東京大学法学部卒業後、厚生省入省。在フランスOECD事務局研究員、年金局年金課年金制度調整専門官、埼玉県生活福祉部老人福祉課長、厚生省大臣官房政策課企画官(高齢者介護対策本部事務局次長)、厚生労働省政策統括官(社会保障担当)・内閣官房内閣審議官(社会保障・税一体改革担当)併任、年金局長、雇用均等・児童家庭局長などを経て2016年6月辞職。2017年3月より現職。著書に『教養としての社会保障』(東洋経済新報社)
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