年金時代

香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使

第11回 どっちが先進国? アゼルバイジャンのIT事情【中編】「電子政府」

日本の電子政府はまだ道半ば

翻って日本の現状はどうでしょう。

マイナンバー関連法の公布は2015年。本格的に運用が開始されたのは去年(2016年)の1月。取り組みはまだ始まったばかりです。

一生懸命頑張ってる総務省や内閣府の後輩諸兄には申し訳ないですけど、アゼルバイジャンと比べると、日本の電子政府:e-governmentは、特に「対国民サービス」という意味では残念ながらまだまだ、道は遠いって感じがします。

マイナンバー制度は導入されましたが、現状では何か手続するたびに、必要書類に加えて「マイナンバーカードのコピーの添付」を要求されてむしろ面倒くさくなっただけ、と感じている国民のほうが多いように思います(私もこの国への赴任に際して住民票や税金、運転免許証、医療保険、年金、共済組合関係、不動産関係の手続、金融機関関係の手続などいろいろな手続をしましたが、何かやるたびに「マイナンバーカードのコピーを添付してください」と言われました。で、添付して何かいいことがあったかというと、今のところまだ何もないように思います)。

多分、まだマイナンバーに紐付けられた各種情報を行政機関相互で連携する仕組みが出来上がっていないので具体的な利便が生じてこない、なので国民の側の理解・リテラシーも進まない、現状はそんな感じじゃないかと思います。

それでも、「マイポータル」の運用が今年の夏から始まったそうですし、今年の10月から市町村で子育て関係の電子申請ができる(役所に行かなくてもオンラインで申請手続ができる)ようになったそうです。

とはいえ、旅券更新など他の行政手続や料金支払いなどのサービスへの拡大はこれからの取り組みということですから、「カード一枚で全ての手続が簡単にできるようになります」という制度導入時の触れ込みが現実のものになるまでにはまだ時間がかかりそうです。

霞が関や地方自治体の後輩諸兄の一層の頑張りに期待します。

他方、この国では、「IT化で行政サービスが一気に効率化される」という姿をまさに目の前で見ることができ、かつ市民がそれを実感しているのを肌で感じることができます。

さて。それはさておき。

ASANセンターのすごいところはこれだけではありません。まだまだあります。

この続きは次回(後編)でお話しします。 乞うご期待。

香取 照幸(かとり てるゆき)/駐アゼルバイジャン日本国特命全権大使
東京都出身。1980年東京大学法学部卒業後、厚生省入省。在フランスOECD事務局研究員、年金局年金課年金制度調整専門官、埼玉県生活福祉部老人福祉課長、厚生省大臣官房政策課企画官(高齢者介護対策本部事務局次長)、厚生労働省政策統括官(社会保障担当)・内閣官房内閣審議官(社会保障・税一体改革担当)併任、年金局長、雇用均等・児童家庭局長などを経て2016年6月辞職。2017年3月より現職。著書に『教養としての社会保障』(東洋経済新報社)
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