年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員

第8回 鵜呑みは禁物!「グローバル年金ランキング」のカラクリ①

某外資系コンサル会社が毎年発表する「グローバル年金指数ランキング」ですが、ともすると順位だけが取り沙汰されて「日本の年金制度は問題だらけ」といった悲観論だけが独り歩きしています。今回は、グローバル年金指数ランキングのしくみと、その問題点について解説します。

日本の年金制度は世界的に見劣りしている!?

2017年10月23日、外資系コンサルティング会社のマーサーとオーストラリア金融研究センター(ACFS)は、「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数」の2017年ランキングを発表しました。ランキング首位はデンマークで、2012年より6年連続で首位を堅持しています。一方、日本はというと、総合指数は昨年より若干上昇したものの、ランキングでは30ヵ国中29位にとどまっています。このランキングでは、日本は毎年最下位に近い順位で低迷しているため、結果が公表されるたびに「日本の年金制度は欠陥だらけ」「中国やメキシコよりも下位だなんて……」といった論調が幅を利かせているのが現状です。

〔参考リンク〕

●マーサー「グローバル年金指数ランキング」(2017年度)を発表 日本の年金制度は30ヵ国中29位 https://www.mercer.co.jp/newsroom/2017-global-pension-index.html

グローバル年金指数ランキングにおける日本の評価

しかし、ランキング結果だけに捉われていては、事の本質は見えてきません。そもそもこのランキングがどのように算出されているのか、まずはルールを確認してみましょう(詳細レポートは上記のリンク先から入手可能です)。このランキングでは、対象国の年金制度を、十分性(Adequacy)40%、持続性(Sustainability)35%、健全性(Integrity)25%の3つの指標の加重平均で評価しています。日本の2017年の総合指数は43.5でしたが、内訳を見ると、十分性が48.0、持続性が26.0、健全性が60.7となっています。

(1)十分性(Adequacy)

十分性とは、年金給付をはじめとした老後所得の手厚さを示す指標で、給付水準(所得代替率)のほか、家計貯蓄率、私的年金(企業年金・個人年金)への税制優遇措置、持ち家率などが評価されます。

日本は、「私的年金への税制優遇措置」などの項目で高評価を得ているものの、「所得代替率の低さ」「家計貯蓄率の低さ」そして「私的年金の給付が一時金主体であること」が評価を落とす要因となっています。

(2)持続性(Sustainability)

持続性とは、年金給付が継続的にもらえるかどうかを示す指標で、私的年金のカバレッジ(適用対象範囲)、年金資産の対GDP比率、支給開始年齢と平均余命との差、労働力人口比率、政府債務比率、経済成長率などが評価されます。

日本は、「高齢者の労働参加」については高評価を得ているものの、「私的年金のカバレッジの低さ」「支給開始年齢と平均余命との差」「政府債務の対GDP比率の高さ」などが仇となり、3つの指標の中では最も低い評価となっています。

(3)健全性(Integrity)

健全性とは、民間の私的年金が健全に運営されるための規制、ガバナンス、情報開示等について評価する項目であり、じつは公的年金は対象とされていません。

日本は、健全性の評価は60.7と3つの指標の中では最も高い評価を得ているものの、「資産運用に係る各種方針の整備状況」や「加入者への情報開示」についての評価は、他国と比べると芳しくありません。

調査項目やデータは妥当か

このランキングのレポートは上記のリンクから参照できますが、多種多様な項目をできるだけ網羅しようとする製作者の意欲はうかがえます。しかし、各国の社会・経済情勢や制度成立までの歴史的経緯を無視して各国の年金制度を横並びで比較することは非常に難しく、このランキングでも比較項目としては疑問符が付く項目が少なくありません。たとえるなら、プロ野球チームの実力を、チーム打率や防御率ではなく「選手の平均年齢」や「親会社の資金力」で測るようなチグハグさが散見されます。 (次回に続く)

 

【今回のまとめ】

数字は嘘をつかないが、嘘をつく者は数字を上手く利用する。結果(順位)に一喜一憂するのではなく、過程や背景を冷静に見据えることが重要だ。

 

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
年金時代