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年金時代編集部

第4回 どうすれば遺産分割をスムーズに進められるの?

「相続」はライフステージラストのライフプラン。このシリーズでは相続について、これだけは知っておきたい基本事項をお伝えしていきます。

相続を進めるにあたっては、相続人どうしが争うようなことがないようにしたいものです。相続を円満に進めるために、知っておきたいポイントを事例をもとに見ていきましょう。

争続の種になりがちな、自宅(実家)の相続や介護の寄与分

相続で争い(争続)が起こりがちな事例としてよくあげられるものに、次の2つがあります。

  1. 自宅(実家)の不動産が遺産の大半を占めているケース
  2. 相続人のうち誰かが亡くなった人の介護をになっていたケース

今回は、この2つのケースで争続を避ける手立てについて見ていきましょう。

1件の自宅(実家)不動産をどう分割する?

両親がともに亡くなり、自宅のほかにこれといった財産がないようなケースでは、子どもどうしの財産分けが難しい場合があります。特に子どもがいずれも実家から遠く離れて住んでいたり、地価が下がる傾向にある地域に実家がある場合などは、相続が負担になり、固定資産税や維持費のかかる不動産より現金で受け取りたいと、争いのもとになる心配があります。

両親がともに亡くなっている場合、法定相続人は子どもとなり、子どもが複数いる場合は子ども全員に均等に配分されます。ただし、法定相続分での分割はあくまでめやすですから、実際には相続人どうしの話し合いにより、分配割合を決めることになります。

このようなケースでは、専門家の多くは、実家の土地や建物を複数の子どもで共有することをすすめません。将来、その物件を売買したり、貸したりすることが必要になっても、誰かの反対により実現できない可能性があるからです。

対策としては、売却を前提にするのであれば、資金力のある相続人がほかの相続人に「代償金」を支払って実家をいったん取得する方法があります。その場合、相続の結果負担することになる売却時までの固定資産税や売却手数料などを考慮し、その分を取得者の取り分に上乗せします。

あるいは、相続人のうち、誰かが実家を取得して住み続ける場合は、相続税法上、一定の要件のもと実家の土地の評価額を8割減らせる「小規模住宅地等の特例」(居住用宅地面積の上限330㎡)の適用を受けられ、その恩恵は相続人全員の税負担を軽減することができます。その場合も、実家を取得する相続人が他の相続人に「代償金」を支払うことでバランスをとるとよいでしょう。

介護による寄与分は算定が難しい

相続人のうち誰かが被相続人の介護をになっていた場合、介護をしていた人は「自分の生活を犠牲にして世話をした」と思うかもしれません。一方、それ以外の相続人は、「同居していたのだから、経済的な援助を受けていた面があっただろう」と思うかもしれません。

民法では、親の財産の形成や維持に生前特別に貢献した人は寄与分を加算したものを相続できるとされていますが、介護による貢献はどのように評価するか算定が難しく、その苦労のほどが理解されなかったり、家庭裁判所に寄与分を求める申し立てをしても、期待するほどの効果を得られないことが多いことを知っておきましょう。

円滑な相続のために遺言書の作成を

介護に関する寄与分についての考え方などは、話題にしにくいものですが、それだけにあらかじめ被相続人の考え方を示し、相続人らもそれを理解し、納得が得られる関係を作っておくことがトラブルを避けるためには欠かせません。

遺言書がない場合は、相続人どうしの話し合いのみで財産の分け方を決めなくてはなりません。

相続が実際に起こると、様々な思惑がぶつかり合って相続人どうしが譲らず、遺産分割協議を終えるまでに何年もかかってしまうことがあります。しかし、相続をする側がきちんとした準備をしておけばこうした争いを避けることも可能です。円滑な相続のために最も基本的で重要なもの、それが「遺言書」の作成です。

ただし、遺言は、民法に定められた方式にしたがわなければ無効となってしまうので注意が必要です。遺言書の種類で一般的なものとしては、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

(1)自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言する人が遺言の全文と日付、氏名を自分で手書きし、これに押印することによって成立する遺言です。作成にあたって証人や立会人は不要で最も簡単な方式ですが、偽造・紛失等のリスクがあり、自筆証書遺言の効力を争う裁判も多いので注意が必要です。また、遺言者の死後、家庭裁判所に申し立て、相続人らの立ち会いのもと内容を確認する「検認」の手続きが必要です。

(2)公正証書遺言

公正証書遺言は、証人2人以上の立ち会いのもと、遺言者が口頭で述べた趣旨を公証人が文書にして作成・保管します。遺産額に応じた手数料がかかりますが、最も安全・確実な方法です。

相続人が、あらかじめ財産の内容や、どの財産を誰に引き継いでもらいたいか、その理由などについて、遺言書で意思を明確にしておくことによって、争続が起こるリスクを小さくすることができるでしょう。そして、できれば相続について日ごろから被相続人、相続人の間でよく話し合い、そのうえで費用はかかっても遺言書を作り、できれば「公正証書遺言」としておくことが好ましいでしょう。

次回のテーマは「どうすれば遺産分割をスムーズに進められるの?」です。

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「争続」を避ける相続プラン組み立てのポイントとは? →『事例でわかる相続Q&A』事例①争続の回避 で解説しています 

 

規格:B5・88頁
発行:平成29年6月発刊
ISBN:ISBN978-4-7894-4880-2 C2032 1000E
商品No:48800
定価:本体1,000円+税
著者もしくは編者:中川聖明 社会保険労務士
浅岡純朗 社会保険労務士
浅岡輝彦 弁護士 著

 

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