年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員

第12回 「DBは年功的」「DCは成果主義的」って、誰が言った!?

企業年金の世界では、「給付建て(Defined Benefit:DB)は年功的な設計しかできない」「掛金建て(Defined Contribution:DC)は成果主義的な設計にならざるを得ない」とよく語られます。しかし、本当にそうなのでしょうか?

DBは給付設計のバリエーションが多彩

確定給付企業年金や厚生年金基金などの給付建て(DB)年金制度における給付設計は、「加入者期間またはその加入者期間における給与の額その他これに類するものに照らし適正かつ合理的」であることが求められており、具体的には、「給与比例方式」「定額方式」「ポイント制」あるいはその組み合わせにより算定するものとされています。

確定給付企業年金では、加入期間が長くなるに連れて給付額が増加(または頭打ち)する設計が基本原則であり、この範囲内であれば、従業員が若齢のうちは給付額を控えめにしつつ中堅以降に給付額を急増させるという年功序列的な給付設計が可能です。

また、ポイント制は、「職能ポイント」「評価ポイント」等のポイントを付与することで、DB制度でも業績連動的な給付設計が可能なことから、業績連動的な制度の代表格だと見られがちです。しかし、一口にポイントと言っても「勤続ポイント」「年齢ポイント」等のウエイトを高めると、年功的な給付設計となります。ポイント制=成果主義的では必ずしもない点に留意が必要です。

DCでも「掛金設定」は年功的にできる

一方、確定拠出年金に代表される掛金建て(DC)年金制度は、資産運用の結果が給付額にダイレクトに反映されるという特徴から、旧来型の年功序列的な制度とは対極に位置づけられるのが一般的です。しかし、企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金設定のルールは「定額」「給与比例」およびその組み合わせが原則とされており、また給与比例では「給与規程等で定めた給与」「標準報酬月額」「ポイント制」などを給与に用いることとされています。これはまさに確定給付企業年金の給付設計とほぼ同じ取り扱いであり、DC制度でも年功的な「掛金設定」が可能であることを意味します。

もっとも、DC制度の場合、最終的な給付額はそれまで積み立ててきた掛金と運用収益の「元利合計」で決まります。DB制度では人事考課的な要素(給与額・評価etc)が給付額を直接左右しますが、DC制度では人事考課的な要素(掛金)だけでなく資産運用の成果(運用収益)も給付額を決定する要素となります。DC=成果主義的という偏ったイメージが世に広まっているのは、資産運用の「成果」と人事考課・業績の「成果」が混同されているからではないかと、個人的には考えます。

【今回のまとめ】

企業年金制度が年功的であるか成果主義的であるかどうかは、制度(DB・DC)ではなく給付設計(定額・給与比例・ポイント制etc…)で決まる!

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
年金時代