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年金時代編集部

第6回 相続対策としての生前贈与とは?(最終回)

贈与税の税率は相続税に比べると高くなっていますが、基礎控除等を考慮して計画的に生前贈与を行うことにより相続財産を減らし、相続税の負担額を減少させることができます。生前贈与の基本事項について見ていきましょう。

もらう人1人当たり年間110万円までは贈与税はかからない

贈与税は贈与を受けた人が申告をして支払わなければなりません。ただし、1人当たり年間110万円の基礎控除枠内であれば、贈与税はかからず、申告も必要ありません。将来発生しそうな相続税を軽減したい場合は、生前贈与によってあらかじめ相続財産を減らしておくというのも相続対策のひとつの方法です。

もらう人1人当たり年間110万円の基礎控除があるため、もらう人が増えると控除額の合計も増えることになります。ただし、相続開始(死亡)前3年以内の贈与は相続財産に合算されるルールがあるため、高齢になってからの贈与は、計画的に行う必要があります。なお、もらう人が孫の場合はこのルールの適用外となり、死亡前3年以内の贈与でも相続財産に合算されません。

贈与税のかかる財産、かからない財産

110万円の基礎控除を超える贈与を受けた場合は申告が必要です。贈与税は、その年の1月1日から12月31日の間に贈与により取得したすべての財産にかかります。対象財産には、現金、預貯金、有価証券、土地、家屋など金銭に見積もることができる、経済的価値があるすべてのものが含まれます。

また、本来の贈与でなくても、結果として贈与と同じ経済的利益を得た場合は、それも贈与財産とみなされます。これを「みなし贈与」といい、他人が保険料を支払っていた生命保険金や評価額を大幅に下回る金額で財産を譲り受けた際の差額などがこれにあたります。

贈与税のかからない非課税財産としては、法人から贈与された財産や扶養義務のある人から受けた生活費や教育費などがあります。

20歳以上の子、孫への贈与税は優遇されている

贈与税の計算式は、次のとおりです。

贈与税の計算は、上記の計算式に「贈与税の税額速算表」の税率・控除額をあてはめて行います。速算表には下表のとおり一般贈与財産用(一般税率)と特例贈与財産用(特例税率)の2種類があり、直系尊属(祖父母や父母等)から、20歳以上の子・孫等への贈与については特定贈与財産用の特例税率が用いられ、税制上優遇されています。

結婚20年以上の夫婦の特例制度

婚姻期間が20年以上である夫婦間で、マイホームやマイホームを買うための資金の贈与を受けたときは、基礎控除(110万円)とは別枠で、2,000万円まで贈与税はかかりません。この「配偶者控除」は、一生に一度だけ受けられるものです。

この特例の適用を受けるためには、贈与財産が2,110万円以下で控除枠内であり、贈与税が0となる場合でも、申告が必要です。

相続税・贈与税を一体化して支払う相続時精算課税制度

生前贈与には大きく分けて2つの種類があり、これまで説明してきた「一般贈与」と呼ばれるもののほかに、「相続時精算課税制度」を利用した贈与があります。これは、相続の際に相続財産とそれまで生前贈与を受けた財産とを合計して相続税を計算し、すでに支払った贈与税分を差し引いて納めるというものです。

この方式では、贈与税は、贈与財産が合計で2,500万円までなら非課税、それを超える部分については20%の税率で仮に納税し、相続時にあらためて相続税を計算して精算します。

ただし、留意事項があり、相続時精算課税制度を選択する場合は、税務署へ届出が必要であり、一度選択すると一般贈与には戻れません。また、贈る人は60歳以上の祖父母または父母、もらう人は20歳以上の子または孫に限定されています。

生前贈与の控除枠や特例を活用し、計画的に相続を進めるためには、相続財産の額やどの程度の財産があったら相続税がかかるのかなどを把握しておくことが必要です。そのうえで相続についての方針を決め、自分の相続についての情報や考え方を関係者と共有しておくことが、スムーズな相続のために何より大切といえるでしょう。

 

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規格:B5・88頁
発行:平成29年6月発刊
ISBN:ISBN978-4-7894-4880-2 C2032 1000E
商品No:48800
定価:本体1,000円+税
著者もしくは編者:中川聖明 社会保険労務士
浅岡純朗 社会保険労務士
浅岡輝彦 弁護士 著

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