年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員

第14回 存在感を増しつつある「総合型DB基金」ーその2

今回は、前回に引き続き、総合型DB基金(総合型確定給付企業年金基金)について解説します。昨今、確定給付企業年金のガバナンス強化と称した数々の規制強化が行われていますが、果たして……

DB全体の加入者増に大きく寄与している総合型DB基金

確定給付企業年金(DB)は、適格退職年金からの移行措置が終了した2012年以降、制度数・加入者数とも減少傾向にありました。しかし、昨今の総合型DB基金の設立増を受けて、DBの加入者数は3年連続で増加しており、今年(2018年)3月末時点には900万人の大台に到達しました。

制度数をみると、規約型は引き続き減少傾向にある一方、基金型(企業年金基金)はここ3年で147件も増加していることから、総合型DB基金がDB全体の加入者増を牽引している様子がうかがえます。

■確定給付企業年金の加入者数・制度数の推移

年月 加入者数(万人) 制度数(件)
基 金 型 規 約 型
2014年3月末 788(▲8) 602(▲5) 13,694(▲391)
2015年3月末 782(▲6) 601(▲1) 13,282(▲412)
2016年3月末 795(13) 619(18) 13,042(▲240)
2017年3月末 826(31) 705(86) 12,873(▲169)
2018年3月末 901(75)  748(43)※2  12,553(▲320)※2

※1( )内は、対前年比の増減数。
※2 2018年4月1日現在の数値。
(出所)企業年金連合会ホームページ等を基に筆者作成。

「ガバナンス強化」の妥当性・有効性には疑問も

その一方で、総合型DB基金に対しては、①基金の名称に関する審査基準の設置②代議員の選任基準・定数の見直し③会計監査に代わる「合意された手続業務(AUP:Agreed upon procedures)」の導入など、制度運営に関する規制は強化される方向にあります。これを行政サイドでは「ガバナンスの強化」と称していますが、残念ながら、規制ありきの画一的・表層的なものとなっている感は否めません。例えば、代議員の定数やAUPの実施にあたっては一定規模以上の基金に対し規制を課していますが、過去の不祥事件を振り返ると、むしろ事務局の人員が手薄な基金で発生している傾向があり、その妥当性・有効性には個人的に疑問符をつけざるを得ません。

いずれにせよ、総合型DB基金が中堅・中小企業における退職給付制度の選択肢として一定の支持を得ていることは、前述の基金数・加入者数の増加が如実に示しています。せっかくのガバナンス強化が「労多く実り少なし」「角を矯めて牛を殺す」「総合型DB基金いじめ」「会計士業界への追い銭」などと揶揄されないよう、実効性のある施策の展開が期待されます。

【今回のまとめ】

中堅・中小企業の従業員の老後所得保障の観点からは、総合型DB基金の果たすべき役割はなお大きい。ガバナンス強化という名の逆風に臆することなく、どんどん存在感を発揮して欲しい。

谷内 陽一(たにうち よういち)/りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会などを経て、2010年りそな銀行入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA®)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
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