年金時代

三宅 明彦(みやけ あきひこ)/社会保険労務士

次期年金改正~今後の年金制度を考える

今年は5年に一度の財政検証が行われていて、夏頃には結果が発表されます。また、政府では、2040年に向けた社会保障のあり方等の検討がなされていて、「人生100年型年金制度」の検討も行われています。

そこで、今回は「今後の年金制度はどう変わるのか」について、主だった内容について考えてみたいと思います。

1. 被用者保険の適用拡大について

被用者保険のさらなる適用拡大については、平成28年10月からの短時間労働者の適用拡大の際に、平成31年9月末までに再検討することになっていましたので、現在、厚生労働省が検討している考え方に即して見ていきます。

[厚生労働省の考え方]

(1) 低所得・低年金者の年金額の引上げにつながる。基礎年金水準確保にプラスの効果が得られる。

(2) 平成31年9月末までに検討する。

<平成28年10月から>

・501人以上の企業

・週の労働時間が20時間以上

・月額賃金が8.8万円以上

・勤務期間が1年以上の見込み

・学生は除外

*平成30年4月現在の特定適用事業所数は3万231事業所、短時間被保険者は38万6,039人。

<平成29年4月から>

・500人以下で労使合意を得た企業、国及び地方公共団体は規模を問わない

・他の条件は上記に同じ

*30年4月現在の任意特定適用事業所数は3,078事業所、短時間被保険者は4,240人。

(3)適用要件の考え方

①週の労働時間が20時間以上

被用者としての実態を備えているかの基準として、一定の労働時間を基準とし、雇用保険の適用基準も参考にしながら設定。

②月額賃金が8.8万円(年収106万円)以上

正社員とのバランス、1号被保険者の負担や給付水準とのバランスを図る観点から、一定以上の賃金を得ていることが基準。

③勤務期間が1年以上の見込み

フルタイム労働者に比べ得喪が頻繁なため、事業主の事務負担が荷重にならないようにする観点から設定。

④学生は除外

短期間で資格変更が生じ手続きが煩雑になるために除外。

⑤501人以上の企業

中小事業所への負担を考慮し、段階的な拡大を進めていくために設定。

(4)適用拡大の視点

①被用者にふさわしい保障の実現

被用者でありながら国民年金加入となっている者に、被用者による支え合いのしくみである厚生年金による保障を提供する。

②働き方や雇用の選択を歪めない制度の構築

労働者の働き方や企業による雇い方の選択において、社会保険の取扱いによって選択を歪められたり、不公平を生じたりすることがないよう、働きたい人の能力発揮の機会や企業運営に必要な労働力が確保されやすいようにする。

③社会保障の機能強化(再分配機能の維持)

マクロスライドにより給付水準の調整が進んでいく中、適用拡大は保障を厚くすることになる。加えて、基礎年金の水準確保及び再分配機能の維持につながる。

④人生100年時代・一億総活躍社会・働き方改革への対応

生産年齢人口の減少、人生の長期化、高齢期の健康や体力の向上により、これまで労働参加率が高くなかった子育て期や中高齡層の女性、高齢期の男性の労働参加が進み、家計及び経済全体において、その比重と役割を増していくと見込まれる。

主たる家計維持者のフルタイム就労だけでなく、時間等の制約のために短時間就労となる働き方を保障の体系に組み込み、長期化する人生に対応した年金権の構築と安心の確保を可能とする。

⑤強制適用外となる事業所の取扱い・雇用類似の働き方・兼業や副業・医療保険者や企業への影響等の配慮。

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三宅 明彦(みやけ あきひこ)/社会保険労務士
東京都社会保険労務士会所属。 金融機関等での豊富な年金相談経験をもつ。多数の年金セミナー・年金研修等の講師を務める。現在、東京都社会保険労務士会の年金講座講師。著書多数。『年金マニュアルシート』(社会保険研究所)は約50万部の大ヒット。マニュアルシート・シリーズの最新版『10年短縮年金マニュアルシート』も好評。
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