年金時代

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長

第20回 私的年金の制度改正のポイント~改正法案の公表により新たに判明した事項を中心に~

2020年3月3日、確定拠出年金(以下「DC」)の加入可能要件の見直し等を柱とした「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」)が閣議決定され、第201回通常国会に提出されました。今回は、私的年金(企業年金・個人年金)に関する改正事項について、改正法案の公表により新たに判明した事項を中心に解説いたします。

改正法案の公表で明らかになった事項とは!?

今般の年金制度改正法案は、社会経済構造の変化に対応し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金(DC)の加入可能要件の見直し等の措置を講ずるものです。私的年金に関する改正事項は、2019年12月25日付で公表された「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」において「概ね方向性が一致した」と整理された事項が中心ですが、なかには、今般公表された改正法案の規定によって新たに判明した事項があります。

iDeCoの加入者区分が4種類に…「第4号加入者」の新設

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入要件が見直され、第1号加入者(自営業者等)および第3号加入者(専業主婦(夫)等)については、国民年金に任意加入することで65歳未満までiDeCoに加入可能となるとされていました。

しかし、法律案を参照すると、従来のiDeCoの加入区分(第1・2・3号)に加えて第4号加入者が新設されることが判明しました。第4号加入者は、国民年金の任意加入被保険者のうち、①60歳以上65歳未満の国内居住者、②20歳以上65歳未満の海外居住者、の2種類とされており、第1・3号加入者だけでなく海外居住者も新たにiDeCoの加入対象になることが明確になりました。

加入可能年齢の引上げに伴う受給開始時期の取り扱い

DCの受給開始時期の選択範囲が、「60歳から70歳の間」から「60歳から75歳の間」に拡大することは既報の通りですが、加えて、60歳以上75歳未満の者は、老齢給付金を受給開始するための通算加入者等期間の要件(下記参照)を満たしていなくても、加入日から5年を経過したら受給開始可能となることが判明しました。これにより、①60歳以降からでもDCに新規加入できること、②60歳以降に新規加入しても老齢給付金の受給開始が5年以上延ばされることは無いことが明確になりました。

〈通算加入者等期間および受給開始可能時期〉

DCの脱退一時金の改正は2段階で実施

DCの脱退一時金について、通算拠出期間の上限年数の引上げ(3年→5年)と、外国籍人材が帰国する際の脱退一時金の支給が再開されることは既報の通りですが、このうち前者は、国民年金の脱退一時金の支給上限年数引上げと平仄を合わせて改正されるため、2021年4月施行となります。一方、外国籍人材が帰国する際の脱退一時金の支給再開は、2022年5月施行となります。

施行期日は6段階

改正法案の施行期日は、①2022年4月1日とされています。ただし、私的年金に関する改正事項については、上記のほか、②公布日、③公布日から6月を超えない範囲で政令で定める日、④2021年4月1日、⑤2022年5月1日および⑥2022年10月1日と、施行期日は6段階に分かれています。

〈改正法案の施行期日(私的年金に関する事項)〉

<参考リンク>
・私的年金の制度改正について(第一生命・年金通信)
・年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案(厚生労働省Webサイト)
・社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理(厚生労働省Webサイト)

 

今回のまとめ

「改正概要」だけでは窺い知れない事項が法律案の条文中に潜んでいる。多少面倒でも、原典に当たるのは重要である!!

谷内 陽一(たにうち よういち)/第一生命保険株式会社 団体年金事業部 課長
厚生年金基金連合会(現:企業年金連合会)で約10年にわたり記録管理・数理・資産運用等の業務に従事。全労済協会、りそな銀行などを経て、2019年第一生命入社。社会保険労務士、証券アナリスト(CMA)、1級DCプランナー、DCアドバイザー。2015年より日本年金学会幹事。
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